1-4 わがまま王子ご一行
陽平が勇者達に追いつくと、勇者は振り返りもせずに聞こえよがしにため息をついた。
「はあああああああ……よりによっておっさんですか~。やる気の失せること」
金髪で少し長身、背筋がスッと伸びて上品な物腰。でも、性格悪そうな女ったらしというのが第一印象だった。名のありそうなかっこいい鎧一式、背中に盾を背負って腰には立派な片手剣を提げている。パーティー欄から見たステータスによれば
ジュリアン・ド・ラ・フォルスタン♂ 22歳
レベル 97
種族 人間
ジョブ 勇者
職業 フォルステール王国第三王子
スキル 近接戦闘・遠隔戦闘・黒魔法
特技 女の子と仲良くなる
と、あった。プライバシーに関わることなので公開非公開設定があるらしく、それ以上の情報は読み取れない。
「あなたが悪いことばっかりするからでしょ、自業自得よ」
そう言ってジュリアンを鼻で笑う女は、少しカールした金髪を肩ぐらいまで伸ばした美人で、胸の谷間が特盛のセクシー系である。
マデリン・フォン・ヴァーリ♀ 24歳
レベル 92
種族 人間
ジョブ アークウィザード
職業 フォルステール王国第一王女
スキル 黒魔法マスタリー
特技 破壊
ムチムチボインボインの体にビキニのようなミニマムな服を着けて大仰なマントを羽織ったエロエロ大魔導師。彼女もまた王家の人間だった。
「ぼっちゃまは盛んなお年頃ですから、仕方ありません」
擁護にまわったのは小柄な可愛い子ちゃんである。長い銀髪ポニーテールに大きなリボンのロリっ子は、ターコイズブルーのフレアワンピースにボレロを羽織ったお嬢ちゃんスタイルだ。
シャーロッテ・プーチ♀ 19歳
レベル 91
種族 人間
ジョブ レンジャー
職業 フォルスタン家メイド
スキル 近接戦闘・遠隔戦闘・パーティー防御
特技 家事全般
「あら、あなたレベルがカンストしてるのね。頼もしいじゃない」
マデリンが陽平のステータスを見てほめるとジュリアンは不機嫌そうな声を出す。
「私だってあと二つでカンストです。調子に乗らぬことですね、おっさん」
陽平はおや? と、思った。陽平のレベルはたしかにカンストなのだが……
三橋 陽平♂ 40歳
レベル 999
種族 人間
ジョブ 賢者
職業 冒険者
スキル 全魔法マスタリー
特技 瞑想するだけで幸福感に浸れる
陽平のステータス画面ではこのようになっている。だが、97レベルのジュリアンはあと二つで追いつくと言いたげだった。つまり、彼等には陽平が99レベルに見えているらしい。彼等のカンストは99止まりなのだろうか?
関わりやすい人々ではなさそうだが、王家の二人と仲良くしておけばこの異世界で暮らす上でメリットがあるかもしれない。陽平は少し下手に出てみることにした。
「カンストとか言っても冒険者に復帰したばかりで分からないことだらけなんで、お手柔らかに頼みます」
パーティーリーダーのジュリアンはろくに返事もせず、あの娘のヒールは甘くていい匂いがしたとか、おっさんのヒールは臭そうだとかブツブツ言っている。
「ところで、賢者というのは?」
シャーロッテが問うと、マデリンが答えた。
「アークウィザードもアークプリーストも含めてあらゆる魔法をマスターした最上級ジョブだとか聞いたことがあるわ。それに、なかなか渋くていい男じゃない」
マデリンが陽平の腕にからみつき、ふくよかな胸を押し当てて歩くとジュリアンは不服そうに言った。
「姉上、老け専というやつですか? 四十なんて高齢者が好みとは物好きですね」
高齢者などと言われてイラっとくる陽平だったが、一行は酒場に入っていった。肉料理の旨そうな匂いと陽気に飲んだくれる人々を見ると、気持ちがほぐれてくるようだ。
「今夜は陽平の歓迎会だから、払いはウチで持つわ。好きなだけ飲んでちょうだい」
王家のおごりなら遠慮はいらないだろう。酒盛りの開始である。