表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/63

2-14 門番

 そこはレサジア国上空に浮かぶ島だった。外から見れば雲にしか見えないが、中からは下界を見渡せる絶景だ。高所が苦手なロッテもここまで高いとあまり怖くないという。ただし、島の縁には絶対近寄らなかった。

 眩しいぐらいの純白の門がある。門の前には魔獣イル・グリジオによく似たモンスターがいた。

「あれはイル・グリジオの兄弟なんだけど、レベル見てみ」

 双頭のライオンの巨獣でそっくりな兄弟だが、こちらは純白の毛をしている。陽平はステータス透視をかけた。


聖獣イル・カンドーレ♂

レベル 0

種族  聖獣


「なんだこれ、他は何も見えないぞ」

「もうちょっと近づくと……」

 聖獣が唸る。兄弟に負けず劣らずの雷鳴のような迫力だ。

「おーっす、カンドーレ! ママいるかい?」

 アメリアが声をかけると駆け寄ってきて、鼻を撫でられている。

 開きっぱなしになっていたステータスウィンドウに変化があった。

 レベル(500+582+897+1045)/4と出ている。相手パーティの平均値を自分のレベルにするらしい。

「756ですね」

「楓恋さん、計算はやっ」

「中学までそろばんをやっていたので」

 呑気な話をしている横でアメリアが自動小銃を構える。

「さて、ピンポン鳴らすよ。みんな武装して。ロッテちゃんは盾を展開して弓でお願い。あいつ滅多なことじゃ死なないから、魔法付与した矢でもなんでも使っていいからね」

 ロッテは言われた通りに盾を展開し、炎の矢をつがえた。楓恋はメンバーと盾に支援魔法をかけて増強し、陽平も杖を構える。


「カンドーレ、いっちょやるぞ!」

 応えるようにガオーと大迫力の咆哮を上げて飛び掛かってくる。

「重力、2倍、3倍、10倍!」

 聖獣にかかる重力がどんどん増加するが、それでも平気で動いている。

「これ以上やったら島にダメージないかな?」

「うーん、万が一穴開けて落っこちたらかわいそうだから、そんなもんでいいや。ジャンプを封じただけでも十分だ」

 ロッテは炎の矢をアローストームでジャンジャンまき散らし、炎の壁を作って足止めする。


 聖獣はしばしたじろいだが、水の魔法で滝を降らせて消してしまった。

「あいつ、魔法まで使えるのかよ」

「こっちが持ってる技をなんでも使ってくるよ。見せた技じゃなくて、持ってる技だから気を付けて」

 言ってるそばから聖獣は魔力を蓄えだした。

「やばいな、陽平の大魔法を真似されたらさすがにまずい。魔法を封じて。陽平のほうが格上だから効くと思う」

「よし、魔法を封じる!」

 聖獣の魔力が霧散して蓄えられなくなった。聖獣は魔法を諦めたかと思うと、双頭のそれぞれの口から銃弾を発生させ、マシンガンのように連射してきた。


 激しい弾幕で、盾から顔を出すこともできない。

 聖獣はさらに盾の防壁の中をめがけて手榴弾を放り込んでくる。

 楓恋がバリアを厚く張って手榴弾の侵入と爆発からメンバーを守っている。

「これじゃあ射撃もできないね。陽平、何かでかいのガツンとやっちゃって」

 陽平は魔法一覧から禁呪級を選んで唱えた。

「プロミネンスフレイム!」

 聖獣の周囲の地面が太陽のように眩しく光り、炎が無数の龍のように舞い踊る。

「うわー熱そう。これはさすがに効くでしょ」

 聖獣は猫パンチの手つきで炎の龍を退治しようとするが、熱くて手を引っ込め、シャーっと威嚇する。


「もういいか? 猫をイジメてるみたいでなんか……」

 遠慮する陽平だったが、突如メンバーの足下から聖獣が現れて吹っ飛ばされた。

「この単距離で転移を使ったのか。魔封じが切れてた」

 ロッテと楓恋が炎の中に投げ出されて悶絶している。

「水で消火! ロッテと楓恋を全回復!」

 陽平の背後ではアメリアが槍を出して戦っていた。

「いてっ! こんにゃろー!」

 猫パンチをもろに喰らったらしく、アメリアが吹っ飛ばされていく。


 翼を出したアメリアは空中で体制を立て直す。

「陽平、雷落として!」

 急降下しながら聖獣の背中に槍を突き立てた。

「落ちろ、稲妻!」

 陽平の雷魔法が槍に直撃し、聖獣は黒焦げになって気絶した。

「焼け死ぬのだけは絶対に嫌ですね、ひどい痛みでした」

 楓恋がタバコを吸いながら歩いてくる。

「ロッテ、槍を抜いてあげてちょうだい。今の我が君より腕力ありそうだから」

「了解です!」

 ロッテが駆けてきて聖獣の背中に乗り、槍を引っこ抜く。かなり深く刺さっていたが、傷口が焼けているせいか血は噴き出さなかった。

「さて、私も簡易詠唱をやってみますね。聖獣イル・カンドーレ、全回復!」

 薄いパステルピンクのオーラが聖獣を包み込み、みるみるうちに全回復した。爽やかな香水のような香りがして、見るからに気持ち良さそうな回復魔法だった。

「そういえばジュリアンが言ってたな。可愛い女の子の回復魔法は甘いとかなんとか」


 楓恋は旨そうにタバコを吸いながら言う。

「可愛い女の子って、私のことですか?」

 楓恋は陽平をからかうようにピンクの回復魔法をかける。

「ああ、気持ちいい……ほんとにいい匂いがする」

「男ってしょーもないなー」

 アメリアが笑っている横でロッテもウンウンと肯いていた。

「そういえば、さっきロッテと楓恋を全回復って叫んでましたね。やっと私も呼び捨てにしてもらえました」

「日本人同士だとちょっと照れくさくてね、あと、楓恋さんは『楓恋さん』っていう雰囲気なんだよな。それが似合うっていうか」

「おばさんくさいってことですか? タバコ吸うから? 私まだ二十五なんですよ~」


 いつの間にかアメリアとロッテは聖獣の背に乗って見下ろしていた。

「ほらー、ちちくりあってないで行くよ! 置いてくからね!」

 聖獣はさっさと走り出してしまって、取り残された二人。なんとなく楓恋のタバコが終わるのを待つことになった。

 楓恋は携帯灰皿にタバコを始末して、エプロンのポケットに戻す。

「我が君、とっても明るくなりました。陽平さん達が来てからよく笑うようになったし、城に来る侵入者にも手加減するようになりました。ありがとう、陽平さん」

 楓恋が陽平の手を両手で包み込んで礼を言うと、陽平の顔は目に見えるほど紅潮した。

「純情ですね、ひょっとして童貞さんですか?」

「え、いや……まあ、はい」

 楓恋には全く隠せる気がしなくて白状してしまう。

「ロッテと進展しないなら私がもらっちゃおうかな、カワイイおじさま」

 ウフフと色っぽく笑うと、陽平の手を恋人つなぎで握って飛び上がる楓恋だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ