2-4 ギルドへ
陽平とロッテは帰国し、ギルドに来ていた。アメリアの手を借りてジュリアン達を救い出そうにも、状況が分からなかった。いざ何かしようと思ったときに陽平達までお尋ね者になっていては動きづらいので、任務を更新しておく必要があったのだ。
今回ははじめから応接室に通され、ギルドマスターと話すことになった。
「あの放蕩王子の面倒を見てくれてありがとうな。あいつの母親は元々は俺とパーティーを組んでた冒険者だったんだ。ミアと言ってな。優しくて、可愛くて、ユーモアのセンスが独特で、あまり飯を食わない娘だったな」
遠い目をするマスター。
「マスターはミア様のことがお好きだったんですね」
ロッテが言うとマスターはギクリと固まった。
「ま、まあな。惚れた女だったからこそ、幸せになってほしいと思って王様に紹介してやったんだ。それなのにさっさと死んじまいやがって……」
ロッテは突如、マスターの手を握って大人びた表情を浮かべる。
「――ありがとう、マスター。私、幸せだったわ」
一瞬、別の人格が乗り移ったようになって、マスターはハッと息を呑んだ。
「おまえさん、ミアに似てきたな。自らの短命を悟ってジュリアン坊に残していった忘れ形見か。本当によく似ている」
思い出話も一段落して、マスターが切り出した。
「さて、任務の件だったな。特に希望が無ければこれをやったらどうだ?」
任務の詳細が書かれた依頼書のようなものを差し出す。
「レサジア国探査任務か。ふむふむ……」
レサジア国はべつにアメリアのものというわけではなく、探検して開拓なり開墾なりした人がその場所の権利を得るそうだ。それにしてもこの任務は……、
「ええ!? 探査任務なのに探検で得たものを国に納めなくてもいいのか? 丸儲け?」
「バカもん、声がでかい」
マスターは声を抑えて言う。
「探査任務というのは表向きだ。とあるお方の計らいでレベルキャップも無しだから999を超えてレベルアップもできるだろう」
「おっさん、知ってたのか!」
「だてにギルドマスターをやっとらんわ」
とあるお方とか言っても、マスターが国王の友であることはもはや明白なのだが……。
「まあ、そういうことだから、レサジアで腕を磨くなり、誰ぞを味方につけるなりして力をつけてこい。おまえたちの前に立ちはだかるであろう偉い人は、とっくにおまえさんのレベルを超えているようだぞ」
マスターはさっさと手続き書類に記入してスタンプを押した。
「ところで、ジュリアンとマデリンについて何か情報ないか?」
「あの二人なら田舎で謹慎させられとるが、今のところは大丈夫だろう。しかし、おまえたちの前に立ちはだかるであろう偉い人の手の内にいることは確かだ。それに、王妃様を人質に取られているという情報もある。とにかく力をつけてきてくれ」
一仕事終えてパイプをくゆらせるマスターに礼を言うと、二人はギルドをあとにした。