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1-14 作戦会議

 街に戻った一行はレストランでランチをとりながら話し合っていた。

 テーブルの真ん中に小ぶりなサンドウィッチがたくさんあって、それぞれ頼んだ料理と共にパクついていた。

「まさか四桁がいるとは」

「カレンもあのレベルを見て逃げ出したというわけね」

 以前に出くわした、魔王だと思ってたけど魔王じゃないモンスターとは魔獣イル・グリジオのことだったらしい。魔王アメリアよりもレベルが高いのだからどっちでもいい話ではあるが。


「どうしたものですかね。魔王城にはレベル四桁の化け物がいましたって報告ぐらいで、兄上は許してくれるでしょうか?」

 マデリンもウーンと唸る。

「父上が助けてくれるといいけど、ジェイコブ兄上がねぇ」

「そんなの手柄にはならないだろうね。あんたら王国人にレベルキャップ付けて制限してるのは誰だと思ってんの? 国王や兄さんはもう知ってるはずだよ」

 勝手にサンドウィッチをパクつきながら会話に参加してきたのは魔王アメリアだった。

「おまえ、どっからわいてきた!」

 陽平が怒鳴るとアメリアはのどつまりして、陽平のグラスの水を飲んだ。

「でかい声出すなよおっさん。あーびっくりした」

 ロッテが険しい表情で問う。

「驚いたのはこちらです、魔王アメリア。私達を殺しにきたのですか?」


「あ、ちがう、これこれ」

 アメリアがヒラヒラさせて見せたのは請求書だった。

「カレンのお遣いできたんだ。どっかの馬鹿共が人んちの堀は埋めるわ窓は全部割るわの大暴れしたもんで、うちのメイド長がメチャメチャご立腹なのさ。これ、きっちり弁償してね」

 ジュリアンの前に請求書が投げ出された。

「いま、カレンと言いましたか? まさか……」

 アメリアはハッと思い出して言う。

「そっか、あんたらカレンが生きてるの知らなかったんだっけ」


 カレンがイル・グリジオのレベルに絶望して身を投げたあと、ジュリアンたちはなんとか逃げのびていた。そのあとの出来事についてである。

「あたしきれい好きだからさ、庭に串刺しの死体とか置いてかれるとキモイし非常に大迷惑なわけ。しょうがないから片付けにいったらまだ息があってさ、よく見たらあの子あたしと同じ魔人じゃん。それで面白いなと思って助けて、そのままうちで仕えることになったってわけだ」

「魔人っていうのがなんなのかよく分からんのだが」

 アメリアは誇らしげに答える。

「魔人は魔法と魔物の祖にしてこの世界で最も優れた種族のことさ。見た目は人間と大して変わらないけど、背中に翼があって空を飛べるんだ」

 アメリアは背中の翼を出したり引っ込めたりして見せた。

「まあこれ、肉体の一部じゃなくてマナでできてるんだけどね」

 服を着たまま出し入れできる便利な代物のようだ。


 ジュリアンは身を乗り出す。

「カレンに会わせてもらえますか?」

「それはかまわないけど、なんか来たよ。あたしはちょっとお化粧パタパタしてくるわっ!」

 知らんぷりを決めこんでトイレに行ってしまうアメリア。少し間があってフォルステール王国の憲兵四人が店に入ってきた。

「ジュリアン殿下ならびにマデリン殿下、お二人に『お呼び出し』がかかっております」

 ジュリアンは、うむと肯いた。

「召喚状なら読みました。近いうちに城に戻ろうと思っていたところです」


 憲兵はコホンと咳払いして言い直す。

「近いうちではなく、これからお城へご同行願います。言うなればこれは……」

 小声で「逮捕ということになります」と続けた。

 ロッテが立ち上がり、憲兵に食って掛かる。

「そんなのおかしいですよ! 多少、使命の遂行が遅かったかもしれませんが、何の罪状でそこまでのことをされるんですか!」

 ジュリアンはロッテを後ろから抱きしめ、愛おしそうに頬ずりした。

「ロッテ、ありがとう。いつでも私の味方でいてくれて。本当にありがとう」


 マデリンは陽平に耳打ちする。

「陽平、勝手なことを言ってすみませんが、ロッテを頼みます。私達に付きっきりだったから、他に友もいない子です」

 二人にとってはメイドというより妹のような存在なのだろう。

「分かった。ロッテは預かっておくから、なんとかして絶対戻ってこい。俺達もできる限りのことはする」

 ジュリアンとマデリンはしっかり肯くと気丈に顔を上げ、まるで憲兵たちを従えるように連行されていった。

 一人残った憲兵が陽平とロッテに言う。

「あんたたちは仲間を募って魔王討伐の任務を続けるか、任務失敗の届けを出してもらう。いずれにしろ、三日以内にギルドに顔を出すように」

 ウィンドウが開いて通知が流れる。

「ジュリアン様がパーティーを抜けました。マデリン様がパーティーを抜けました。陽平様がリーダーになりました」

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