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1-13 虫けら

「行きましょうか」

 ジュリアンが先頭になって隕石の橋を渡る。毒霧がまた充満し始めていたが、大した濃さではない。

「解錠!」

 陽平の魔法で城門のかんぬきが抜け、重い扉が開かれていく。

「罠を探知・広域」

 魔力が波紋のように広がり、罠のあるところを赤く光らせる。

 城門から城までは結構な距離があり、険しい岩山のてっぺんに城はあった。飛翔スキル持ちがいないから、らせん状の山道を登っていくしかないだろう。

「乗り物でもほしいところですね、めんどくさい」

 ジュリアンが文句を言っていると、一行の背筋に悪寒が走った。

「何かくる!」


 身構えるより早く、四人は氷像のように凍り付いてしまった。

 気付けば四人の前に少女が立っていた。長い茶髪のツインテールで、背中からコウモリのような翼が生えている。二十歳前後ぐらいの年齢に見える。

 少女はストレージから巨大なハエ叩きを出した。金属でできた重そうなハエ叩きを軽々と振り上げ、次々に振り下ろす。

 ジュリアン、マデリン、ロッテの氷像は粉々に砕け散ってしまった。

 少女は力を込めて陽平の氷像を何度も叩く。両手持ちに変えて、ムキになってぶっ叩く。金槌で釘を打っているように陽平の体は地面にめり込んでいった。

「しぶとい虫けらだなぁ、おまえは後回し」


 少女の手からハエ叩きが消え、立てた人差し指に魔力が集まる。

硬玉こうぎょく軟玉なんぎょく、翡翠の姉妹、はためき、逆巻さかまき、舞い踊れ。射殺いころし、切り裂き、吸い尽くせ。我が名は魔王アメリア・ヴォイドフォリアなり」

 少女は詠唱を完成させて目を見開いた。

「ヴァキュームゥウウウウウ・クリーナァアアアアー!」

 間一髪氷結を解いた陽平が少女の頬をぶん殴った。

 頭上から伸びていた漏斗雲ろうとぐもが霧散して、少女の魔法は中断された。

「ジュリアン・マデリン・シャーロッテの体を再構築して蘇生、全回復!」

 粉々になっていた3人が元通りに復元され、生き返った。

「吹き飛ばされてたら蘇生もできなかった。危なかったぜ」

 ジュリアンたちは呆けている。

「一体、何が起きたんです……?」


 ぶっ飛ばされて横座りになっている少女は叫んだ。

「痛いなぁー! 女の子の顔いきなり殴るか普通! 野蛮人かよ、おっさん!」

「おまえのほうこそ、いきなり人を粉々にして、バキュームクリーナーってなんだ、掃除機じゃねえか!」

「人んちの庭に勝手に入ってくる虫けらなんか凍らせてポイーッで十分じゃんか!」

 陽平は無言でステータス盗視する。

「おっさん、なんか目がヤラシーんだけど……あっ、なんか見てるでしょ!」

 少女はお返しとばかりに無詠唱でステータス透視してきた。ニヤニヤしながらウィンドウをもてあそぶ。

「あれ、おまえ詠唱は?」

「ああ、無くてもできるよ。唱えたほうがカッコいいけどね」


アメリア・ヴォイドフォリア♀ 19歳

レベル 500(呪いにより低下)

種族  魔人

ジョブ 魔王

職業  魔王城・城主

スキル 戦闘マスタリー・黒魔法マスタリー・呪術マスタリー・錬金術マスタリー・飛翔

特技  建築・造園・どこでも寝られる・お腹が強い


 しめた、こちらのほうが高レベルだと陽平がほくそ笑んだ瞬間、

「勝てると思った? 甘いよ」

 アメリアの両脇に白猫と黒猫が現れた。

 アメリアは背を向けてひらりひらりと手を振る。

「ビアンカ、ネロ、久しぶりのお肉だよ、しっかりお食べ」

 ビアンカとネロは合体し、みるみる巨大化して、双頭のライオンのような魔獣になった。雷鳴のような唸り声と醸し出す迫力だけでもちびってしまいそうなほどだ。

 陽平は即座にステータス透視をした。

「魔獣イル・グリジオ、レベル1200……無理だ、逃げよう!」

 城門からこちらは結界内らしく、転移が使えない。四人は脱兎のごとく逃げる。

「麻痺・強力!」

 魔獣はかまわず追いかけてくる。

「味方に俊足・敵に鈍足!」

 効果があったようで、魔獣の速度が鈍った。

「風の刃で足を集中攻撃!」

 陽平とマデリンが思いつく限りの魔法を繰り出して足止めを試み、命からがら城門を抜けた。

 魔獣は軽々と城門を飛び越えてきたが、一行は間一髪、転移で逃げ延びた。

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