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1-10 今夜、大人になる!

 仲間に会わないようにというギャルの配慮で安宿の一室にしけこんだ二人。

 先にシャワーを済ませた陽平は固唾を飲んでギャルが出てくるのを待った。

「お待たせ」

 暗い部屋の中、ギャルが背後からベッドに入ってくる。

 裸の胸を背中に押し当てられ、後ろから抱きしめられると陽平の背筋を感動が走った。

「すげーやらかい、すべすべ……」

 ギャルは耳を舐めながら問う。

「覚悟はできた?」

 陽平はまた唾をゴクリと飲み込んだ。

「お、オッケー」

 思い切って正面に向き直り、生まれて初めてのキスをしてギャルの体をまさぐる。夢中でまさぐる。

 いよいよ下半身のほうへと手を伸ばしたとき、

「なんだこれ!?」

 布団の中の手探りでもわかる異質な手触り。ひんやり冷たくてヌメヌメとして鱗がある。

「人間じゃないけどちゃんと交尾はできるから、せいぜい楽しんでよ……御代はあんたの命ね、おじさん」


 すごい力で抱きしめられ、無理矢理交尾させられそうになる陽平だったが、初体験が蛇娘との異種姦なんて冗談じゃない。

「麻痺しろ!」

 得意の簡略化した魔法を使ったが、陽平の脚に蛇娘の下半身が巻き付いてくる。

「何それ? 魔法? 99でカンストの雑魚の王国民ごときがあたしにかなうと思ってんの?」

「ってことは、おまえ、ひょっとして……ステータス透視」


デルフィ・ヌ♀ 18歳

レベル 138

種族  ラミアプリンセス

職業  飲食店店員

スキル 黒魔法・絞め殺す・猛毒・麻痺毒・誘惑・擬態(人間)

特技  お菓子作り


「ちょっと、勝手に覗かないでよエッチ!」

 デルフィがかき消すと画面は無くなってしまった。

 亜人とはいえ、初めて三桁レベルに出会えたことに少し嬉しくなる陽平だった。


「ほら、あたしもめっちゃ交尾したいのは本当なんだから、気合い入れてヤろうよおじさん。あんたの子どもいっぱい産んでやるからさ~。早くしないと童貞のまま死んじゃうよ?」

 可愛い八重歯だと思っていたものが鋭い牙になり、シャーっと蛇らしい音を鳴らす。陽平の首に熟れた柿でも食べるようにかぶりつき、頸動脈から血液を吸い上げる。

「痛い痛い痛いっ……あれ? あんまり痛くない……なんか寒くなってきた……って、やばいヤツやばいヤツ!」


 デルフィの手が陽平の股間をまさぐる。

「あーあ、もう血が足りなくなっちゃった? 全然役に立たないじゃん。ヤれないならもう食べちゃうよ?」

 一層強く牙を食い込ませ、首の肉を食いちぎろうとしてくる。

「痛いって痛いって……さすがにもうダメだ、しょうがないな。……麻痺・強力!」

 デルフィは高圧電流でもくらったみたいにバイーンと真っ直ぐになった。掛け布団を跳ね飛ばして、裸の蛇娘が気をつけの姿勢をしている。

「上半身はいい女なんだよなぁ、もったいないなぁ」

 名残惜しく女体をまさぐる陽平。

「やだ、くすぐったい! おじさんやめて! 勘弁して!」

 足の痺れのようなものが全身に及んでいるらしく、デルフィは涙を流して悶えた。


 麻痺を解いて服を着た二人はベッドの上であぐらをかいている。デルフィもいまは人間の姿だ。

「さてと、おまえステータス透視できるか?」

「できるけどなにか?」

 生意気な態度にカチンとくる。

「麻痺・強力」

 バイーンと硬直したデルフィをコチョコチョすると、涙を流して謝った。


「で、おじさんを透視すればいいの?」

 デルフィは詠唱を始める。

「番人の天秤、猛禽の双眸そうぼう、合わせ鏡の十七しち枚目、映せうつつまことかおばせ。ピークステータス」

 魔法が発動してデルフィの手元にウィンドウが現れた。

「マジか……999ってあんた王国民じゃないの? 王子や姫と一緒だったからてっきり……っていうか、許してください、殺さないでください、なんでもしますからお願いします!」

 土下座して命乞いするデルフィ。

 陽平は嫌味ったらしく自分の首筋をヒールして見せた。

「そうだ! なんだったらこの擬態のままあったかい体で交尾しようよ! それなら立派に童貞卒業だ! それで許してくれるでしょ! ね! ね!」


 すがりついてくるデルフィを愉快に思っていると、部屋のドアが乱暴に叩かれた。

「お客さん! 食われてないかい! その娘、お尋ね者のラミアプリンセスだよ!」

 オロオロするデルフィ。

「ね、ねえ、ものすごーく強いおじさま、あたし逃げてもいいかな? お尋ね者の亜人なんて捕まったら裁判も無しで始末されちゃうよ」

 怯える男たちを容赦なく食ってきたくせに虫のいい話だが、可愛い女の子の頼みごとを断り切れないのが童貞のさがである。

「行け、人を食うのもほどほどにな。もう、かわいそうな童貞をだますなよ」

 転移魔法でデルフィが飛んだあと、窓ガラスに衝撃波の魔法を使ってぶち破った。

 ドアを開けると店主の男が自警団を三人伴って立っていた。

「……助かったよ。あんたの声を聞いて窓から出て行った」

 店主は下卑た笑みを浮かべて問う。

「それで、ヤったのかい? 蛇女とヤるのも案外気持ちいいって噂だが?」

 自警団の男たちもニタニタ笑って話を聞きたがるところを見れば、真面目に追いかけるつもりなどないのだろう。自分の持ち場で死人が出たら面倒だぐらいにしか思っていないのかもしれない。

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