はだかの勇者さま - 勇者パーティを追放された不遇職が魔王を倒すまで
勇者パーティの一員。そのはずだった。
僧侶と魔術師のレベルを最大まで上げた時、「NINJA」という見慣れぬ職になった。
転職神殿の神官も、今まで聞いたこともないという。
これが失敗だった。
素早くなり、手先は器用になった。しかし、今までの魔法が使えなくなった。
ただ、素早い動きで他のメンバーの邪魔にならぬように逃げることと、たまにある鍵のかかった部屋や、宝箱を開ける時に重宝されるだけだ。
「僧侶時代の君には、パーティの皆が危ないところを助けられた。」
「魔術師時代の君の魔法は、実に強力だった。」
「だが、今のNINJA? の君は、もう俺たちのレベルについてこれていない。自分でも気がついているだろう。」
「ああ。」
「残念だが、ここで別れよう。これ以上一緒にいては、君はいずれ死んでしまうだろう。」
「仕方ないな。わかっていた。あきらめきれなかっただけなんだ。」
それからは、一人で近場のダンジョンに潜り、日々の糧を稼いだ。
あるとき、酒場で二人の行商人に出会った。
なんとなしに、身の上を話していた。
「それはお困りでしょう。私どもがちょうど良いものを扱っています。」
二人の行商人は、大事そうに大きな箱をだし、ゆっくりと開けた。
「これは?」
「これは、古代魔法文明の遺跡から発見された、ばかには見えない最強の魔法鎧でございます。」
「そ、そうか。も、もちろん見えるぞ。」
「う、うむ。さすがだ。実に頑丈そうだ。」
「少し試させてもらっていいか?」
「ぜひ。どうぞ」
「うむ、体が軽い。今までの鈍重な鎧と違い、見違えるような動きができる。まるで何も着ていないのようだ。」
「いくらだ。」
「貴重なものですので、いささか高価でごさいますが。」
「わかった。」
全財産をはたいた。
それからもダンジョンに潜っていたが、それまで伸び悩んでいたのが嘘のように、次々と敵を倒すことができた。
さすが最強の魔法鎧。
そして次々とダンジョンを制覇していった。
いつの間にかSランクになっていた。
あるとき王城に呼ばれた。
堂々と、堂々とだ。かつては勇者パーティの一員としてきたこともあるのだ。
王は少し驚いた顔をした。以前会った時は、確か僧侶の恰好をしていたはずだ。そのためかもしれない。
「そ、その姿は?」
「今は『NINJA』という職をしております。 これは、ばかにはみえない最強の魔法鎧でごさいます。」
「そ、そうか。も、もちろん見えるぞ。さすがだ。」
「実は、魔王城にいった勇者パーティが全滅してしまった。そなたは、別れた後も一人で努力を続け、Sランクになったと聞いた。
二代目勇者になって、魔王を倒してくれぬか。」
魔王城。
「よくきた勇…」
素早く魔王の背後に回り、首を撥ね、一撃で魔王を倒した。
国は救われた。
国王は喜び、魔王城から戻った二代目勇者の凱旋パレードを行った。
もちろん、先頭は最強の魔法鎧を着た二代目勇者である。
「あっ、勇者さまがはだかだ」
「シッ、言っちゃいけません」
はだかの勇者さまは、誇らしげに凱旋パレードを続けた。
よし、童話にチャレンジだ。
『はだかの勇者さま』
とあるゲームで、NINJAは裸になると最強と言われている。
でもそこに至るまで、成長がとても遅い。パーティだとレベル差が開いてしまう。
一人の方が成長率がいいらしい。
これは追放されるしかない。
はだかNINJAの特徴は、相手の攻撃が当らない素早さ、バックアタックとクリティカルヒット。魔王も一撃だ。
騙されてはだかになったことで、その状態が最強なことに気づいた。はだかが最強なのではなく、ばかには見えない鎧が最強なのだと信じて。
忍者(Ninja)
戦士と同等の戦闘能力と、盗賊の罠解除技術を併せ持つ(#6以降は錬金術も修得する)上級職。ただし、罠の解除技術は盗賊より劣る。
能力値による条件が厳しいので、初期段階ではこの職業を選択できない(シナリオ・機種によって例外あり)。
戦士とほぼ同じ装備ができるため、戦闘能力や耐久力は高いが、HPは低い。
非常に特殊な職業で、攻撃時に敵を一撃で倒すクリティカルヒットが発動することがあり、何も装備していない時にAC(※)がレベルの上昇に応じて低くなる。一方、たとえリング1個でも装備するとそういった恩恵は一切受けられない。
FC版などの比較的古い版においては何も装備していないほうが強かったため、何も装備しない状態(全裸)にするプレイヤーも多く、フリークの間で「全裸の忍者」は定番のネタとされていた。
※アーマークラス(AC)
防御力。値が小さいほど相手の攻撃成功率が下がる。
出典:Wikipedia