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彼女と不仲になったなら  作者: 吉木那央
第一章 長府友奈の場合
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04 きっかけはほんの些細な気持ちで

 先輩の放った言葉の後、俺は固まり、長府さんはうつむいていた。


 トクヤマユウタ。まさか同姓同名のやつか?


 そんな希望は、資料写っている男子学生によって打ち消された。

 写真に写っているのは俺の親友の〝徳山勇太〟に間違いない。

 俺は意を決して聞いてみた。

「あの、この〝徳山勇太〟君って…」

「ええ、あなたと同じ一年生の徳山君。たしか一年三組だったかしら…」

 確定である。


 すると俺の頭の中には、いろいろな考えが巡った。

 え、あの勇太が長府さんの恋人?

 まだ一ヶ月もたっていないのに、勇太に恋人?

 そしてその勇太が浮気をしている?


 しばらくして今まで黙っていた長府さんが口を開いた。

「で、相手はどんな人なのでしょうか」

 ここでいう相手とは、もちろん浮気相手のことだろう。

「この人ね。なかなか正面からの姿が取れなかったのだけど、親しげに話していたしまず間違いないでしょうね」

 長門先輩が取り出した写真を見ると、大学生ぐらいの女性の後ろ姿が写っていた。

「と、年上…?」

 長府さんはひどく動揺していた。

 一方の俺は別の考え事に移っていた。


(あの勇太が浮気…?)


 まあ確かに、勇太は小中学時代よくモテていた。サッカー部に入っているということで、運動神経は抜群、学力も常にトップ10に入るレベル、その上容姿端麗と、非の打ち所がないとはまさに彼のことを言うのだろう。幼馴染でなければ、すべてが中途半端な俺は友人出なかったかもしれない。

 話が逸れたが、勇太はモテていたということもあって、彼女がいたことはあった。

しかし、彼女を非常に大事にするやつで、誕生日はもちろん記念日などもよくお祝いしていた(そしてそれをよく自慢されていた)。

 中学時代の彼女と別れた原因も、学校が違うところに行くことになってしまったからだと聞いていた。

 その勇太が浮気?

 しかもだいぶ年上の女性と?


 そんなはずはない。


「先輩、もう一度調べてみませんか?」

 その一言を発するまでに、時間はかからなかった。

「どういうこと?」

 俺の言葉に、先輩は当然の返しをした。

「ちょっと気になることがあって」

 幼馴染だから、浮気なんてするわけがない、とストレートに伝えたかったが、この状況でそれが通じるとは思わなかった。

 しかし先輩と俺は今日初めて会った仲。いきなりこう言われて、「はい、そうですか」と伝わるとも思わなかったが、


「なるほど、部員の意見も参考にしないとね」


 あっさり通じてしまった。

「という訳で、長府さん。私たちにもう少し時間をもらえない?」

「は、はい…」

 すっかり意気消沈している長府さんは、とても小さな声でつぶやいた。

「だ、大丈夫だよ。勇太はきっと浮気なんてしない。だって幼稚園時代からずっと一緒にいる、親友の俺が言うんだから!」

 何か励ます言葉はないか。彼女を助けることはできないか。そう考えて捻りだしたのは、ある意味俺にしか言えない言葉だった。

こんな憶測でしかない言葉でも、少し元気を出してもらえば。

 そう思いながら再度見た長府さんの目には、ほんの少しだけ光が戻っているように見えた。


「お願い、私たちを助けて…」


 かすかに聞こえた声を胸に、俺は再度、彼女()()を助けることを決めた。


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