03 あれれ、どうして君がここへ?
どのくらいの時間話しただろうか。
俺の性格のこと。今気になっている人がいること。
初めて話す人だけれど、気兼ねすることなく話すことができた。それもこの先輩の出す安心感なのだろうか。
「で、これからどうしたらいいのか、ということを相談するためにここに来ました」
「なるほど」
先輩は終始、相槌を入れながら聞いてくれた。
「まず私はあなたに話さないといけないことがあるわ」
「はい?」
俺は首を傾げた。
「この部活…、『恋愛相談部』はね、『恋人がいる人が相談する場所』なの」
「は…?」
どういうことだ。恋人がいる人が相談…?
「つまり俺は」
「ここで相談する条件を満たしていないってことね」
ええ…。
「じゃあ、なぜ俺の話をずっと聞いていたんですか?」
「だって、話を遮るタイミングがなかったから」
先輩は苦笑した。
たしかに終始、俺が話続けていたとはいえ、途中で止めてくれてもよかったのではと思う。
「というわけで、私からアドバイスできることはなにもないけれど、この後どうするのかしら」
「う…」
仕方ない帰るかと思って、立ち上がった瞬間、教室のドアが開いた。
「し、失礼します」
俺は今入ってきた人の姿を見て愕然とした。
そこにいたのは、なんと長府さんだった。
長府さんも俺に気付いたらしく、驚いた顔をしている。
「どうして美祢君がここに?」
「あ、えっと…」
さすがにあなたのことについて相談しに来ました、なんて言えない。
「その人はうちの部員ですよ」
俺があたふたしていると、長門さんがそう言った。
「そうなんだ!」
さらにあたふたする俺をよそに、長府さんは納得していた。
一方の俺は先輩に詰め寄る。
「先輩どういうつもりなんですか」
「まあせっかくこの遠い教室まで来てもらったのだし、この部活がどういったところなのかを知ってもらいたくてね。」
先輩の目はどこか寂しげだった。
よくわからないが、とりあえず部員ということになったので、俺は先輩の横に椅子をつけて座ることにした。
一息ついたところで頭の中を整理。
(あれ、長府さんがここに来たってことは…。)
そのことに気付いた時にはもう先輩は何か資料を取り出し、話し始めていた。
「これが、恋愛相談部の調査結果になります」
俺と長府さんは広げられた資料をのぞき込む。
そこには、一人の男子学生がアパートに入っていく様子を撮った写真が何枚かあった。
というか、この男子学生って…。
「あなたの恋人、徳山勇太さんは浮気をされています」