02 いざ行かん『恋愛相談部』
放課後。俺はさっそく『恋愛相談部』の部室である、図書準備室へと向かった。
教室から出ようとしたとき、長府さんがため息をついていたが、まあ俺なんかがいきなり話しかけても、相談してくれないだろうと思い、そそくさと出てきた。
図書準備室の前にたどり着いたが、ノックをする勇気がわかない。部屋の中には何人ぐらいいるのか、どんな感じで迎えられるのか、相談にのってもらえるのか、そんな心配が出てきた。
「ここまで来たんだし、せっかくだから」
そう自分に言い聞かせて、ドアをノックした。中から「どうぞ」という声が聞こえ、ドアを開ける。
開けた瞬間、強い風が吹いて少しひるんでしまった。ゆっくりと顔をあげると、そこには広い教室と壁沿いに多く並べられた本棚、そして教室の中央に置かれた長机に座って本を読んでいる女子生徒がいた。
「ごめんなさい、換気のために窓を開けておいたんだけど、風が強かったね」
俺がひるんでいたせいか、女子生徒はそう言ってくれた。
「私は、二年の長門奏美。恋愛相談部の部長です。よろしく」
「あ、一年の美祢真弘です。よろしくお願いします」
「まあとりあえずそこの席に座って」
長門さんはそう言うと、本をしまって代わりに何かの紙とペンを取り出した。一方の俺は部屋全体を見渡しながら、長門さんの向かい側の席に座った。なんだか面接会場みたいだ。
席に座ると、俺は改めて長門さんを見た。第一印象はとても上品な感じがする。きれいな黒髪に加えて、俺が教室に入ってきてからずっと優しい笑みを浮かべている。
「何か私の顔についている?」
長門さんが首をかしげながら聞いてきた。そりゃあ、じっと見られればそうは答えたくなる。
「あ、いえ大丈夫です」
何が大丈夫なのかわからないが、とりあえず繕った。
何か話さなければ。
「えっと、ほかの部員の方は」
「私一人だけ」
「へ?」
思いもよらない回答が返ってきたので、変な声が出てしまった。
「何か問題でもある?」
「い、いや、恋愛相談部っていう名前から、もっと大勢で話し合いとかしてもらえるのかと思っていて・・・」
そういった瞬間、長門さんは「ふふっ」と笑って答えた。
「まあ昔は何人かいたんだけどね。部活内容が内容だけに、どんどん人が減っていったの」
で、現在長門さん一人という訳なのか。
「それでは、相談内容を聞きましょうか」
「あ、そうでした」
あやうくここに来た目的を忘れてしまうところだった。
「その顔は、ここに来た目的を忘れていた、って顔ね」
「う」
どうやら長門さんは、直感が鋭いらしい。
「まあ忘れるぐらいだから、そんなに大したことじゃないんだろうけど、ここに来たからには話してもらいましょうか」
「はい、お願いします」
そうして俺は長門さんに向かって相談を始めた。