08 意外と答えは近くにある
「で、ほとんど成果は得られなかったと」
「はい……」
月曜日。俺は長門先輩に土曜日のことを報告していた。
結局あの日は、三回ほど小野田君が下松さんの姿を見たと言っていたが、本人の姿を確認することはできなかった。一回目は例の服屋、二回目は俺がトイレに行っているとき、三回目は彩に頼まれて、俺がコンビニで飲み物を買いに行っている時だった。一回目以外は、俺と彩の二人で、下松さんの姿を確認しに行ったが、いずれも姿が似ているだけの別人だった。
日曜日にも調査を行えれば、より分かったかもしれないが、小野田君がだいぶ憔悴しきていたのと、彩の予定が入っていたのでできなかった。
「たぶん、小野田君の見間違えということで、間違いはないと思うんですけどね」
「三回も違っていたなら、そうなんでしょうね」
「ただ小野田君の様子は異常だったんです」
「というと?」
「いずれの時も、何かにおびえているような様子だったんです」
彩いわく、突然表情がこわばり、彩から離れるような行動をとっていたらしい。
「何かしらの共通点があれば、分かりそうなんですけどね」
「あら、それならあるわよ」
「え?」
どういうことだ。俺が考える限り、場所も時間もバラバラだったはずだが。
「もう一度、小野田君が『見た』時を思い返してごらん」
「はあ」
先輩の助言通り、俺は土曜日のことをもう一度思い返してみる。
一回目は服屋で、俺が試着をしているとき。二回目は、俺がトイレに行っているとき。三回目は、俺がコンビニで飲み物を買いに行っているとき。
「あ」
「気付いた?」
場所や時間のことばかり気にしていて、簡単なことに気付いていなかった。
「お疲れ様です、ってひーくんどうしたの?」
立ち上がってはっとした表情をしている俺を見て、彩はそう言った。
「ちょっと図書室に行ってくる」
「え、なら私も行くよ」
彩は急いで荷物を机の上に置いた。彩がどうしてついてくるのかはわからなかったが、とりあえず俺たちは図書室へ向かうことにした。