07 デート?いえ、調査ですよ
土曜日。俺たちは駅前の大型ショッピングモールに来ていた。
先日『みんなで』出かける相談をした結果、一番人が集まるということで今日になった。といっても参加者は、俺、彩、依頼者である小野田君の三人だ。先輩は家の都合で、どうしても来られないらしい。というか、先輩が来ていたとしたら、あの探偵コスチュームで来ていたのだろうか。
「で、まずどこから回るんだ?」
「それはもちろん、ひーくんの服選びからでしょ」
「なんで俺の服選びなんだよ」
「だって、その服中学生の頃も着ていなかった?」
「うっ」
図星である。というか、小野田君もいるのに、そのことを話さなくてもいいだろう。
「というわけで、ひーくんの服を選びに行きたいんだけど、それでいいかな?」
「もちろんいいよ。それにそのついでに自分の服も選べるし」
彩と小野田君の間で合意が生まれたので、俺はそれに従うしかない。
服屋へ移動するや否や、彩は次々と服を持ってきた。チェックのポロシャツや、花柄のワイシャツ、アロハシャツなんてものまで着せようとしてくる。
「ひーくんにはこっちも似合いそうだし、いやでもあんまり派手すぎると目立っちゃうし……」
小野田君も、自分の服を選んだり、彩にアドバイスをしたりしていた。今のところ、彼女を見たということもないし、楽しそうにしているように見える。
「ひーくん、今度はこのシャツと、このズボンと、このジャケットと……」
「おい、一回でどれだけ着せるつもりなんだよ」
「こういったコーデが最近は流行りなの。それにきっとこれはとても似合うから」
そうまで言われると、着てみるしかない。小野田君も妙に頷いているし。
「わかったよ……」
俺は彩から、おしゃれ服セットを受け取って試着室に入った。シャツにズボン、ジャケットと、どれも俺のサイズにぴったりだった。いくら長年一緒にいるとはいっても、ここまでサイズをぴたりと当てられるものなのか。
「彩、着たぞ」
そろそろとカーテンを開けた。彩がすぐ近くにいることに期待したが、そんなことはなかった。店の服を着て歩き回るのはとても恥ずかしいが仕方ない。
「彩、どこだ?」
さっき彩から服を渡された辺りまで来ると、彩と小野田君がいた。しかしどうやら様子がおかしい。
「ひーくん!」
「どうしたんだ?」
「それが……」
「明がいたんだ……」
そう呟いた小野田君の顔は真っ青だった。
「どっちの方角だ?」
俺が聞くと、小野田君はさっきまで俺がいた更衣室とは、反対の方向を指さした。そちらの方向には、エスカレータがあり、だいぶ人が集中していたので、ぱっと見て下松さんの姿を確認することはできなかった。
「仕方ない、彩ゴー!」
「人を犬みたいに言うな!でもわかった!」
彩はそう言うと、急いで探しに行った。俺も続いていきたかったが、この服では店から出ることはできない。
「とりあえず俺は服を着替えてくるよ」
「お、おう……」
意気消沈している小野田君を置いて、俺は急いで更衣室へと向かった。