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彼女と不仲になったなら  作者: 吉木那央
第二章 小野田光の場合
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07 デート?いえ、調査ですよ

 土曜日。俺たちは駅前の大型ショッピングモールに来ていた。

 先日『みんなで』出かける相談をした結果、一番人が集まるということで今日になった。といっても参加者は、俺、彩、依頼者である小野田(おのだ)君の三人だ。先輩は家の都合で、どうしても来られないらしい。というか、先輩が来ていたとしたら、あの探偵コスチュームで来ていたのだろうか。


「で、まずどこから回るんだ?」

「それはもちろん、ひーくんの服選びからでしょ」

「なんで俺の服選びなんだよ」

「だって、その服中学生の頃も着ていなかった?」

「うっ」

 図星である。というか、小野田君もいるのに、そのことを話さなくてもいいだろう。


「というわけで、ひーくんの服を選びに行きたいんだけど、それでいいかな?」

「もちろんいいよ。それにそのついでに自分の服も選べるし」

 彩と小野田君の間で合意が生まれたので、俺はそれに従うしかない。


 服屋へ移動するや否や、彩は次々と服を持ってきた。チェックのポロシャツや、花柄のワイシャツ、アロハシャツなんてものまで着せようとしてくる。


「ひーくんにはこっちも似合いそうだし、いやでもあんまり派手すぎると目立っちゃうし……」


 小野田君も、自分の服を選んだり、彩にアドバイスをしたりしていた。今のところ、彼女を見たということもないし、楽しそうにしているように見える。

「ひーくん、今度はこのシャツと、このズボンと、このジャケットと……」

「おい、一回でどれだけ着せるつもりなんだよ」

「こういったコーデが最近は流行りなの。それにきっとこれはとても似合うから」

 そうまで言われると、着てみるしかない。小野田君も妙に頷いているし。

「わかったよ……」


 俺は彩から、おしゃれ服セットを受け取って試着室に入った。シャツにズボン、ジャケットと、どれも俺のサイズにぴったりだった。いくら長年一緒にいるとはいっても、ここまでサイズをぴたりと当てられるものなのか。


「彩、着たぞ」

 そろそろとカーテンを開けた。彩がすぐ近くにいることに期待したが、そんなことはなかった。店の服を着て歩き回るのはとても恥ずかしいが仕方ない。

「彩、どこだ?」

 さっき彩から服を渡された辺りまで来ると、彩と小野田君がいた。しかしどうやら様子がおかしい。


「ひーくん!」


「どうしたんだ?」

「それが……」


(あかり)がいたんだ……」


 そう呟いた小野田君の顔は真っ青だった。

「どっちの方角だ?」

 俺が聞くと、小野田君はさっきまで俺がいた更衣室とは、反対の方向を指さした。そちらの方向には、エスカレータがあり、だいぶ人が集中していたので、ぱっと見て下松さんの姿を確認することはできなかった。

「仕方ない、彩ゴー!」

「人を犬みたいに言うな!でもわかった!」

 彩はそう言うと、急いで探しに行った。俺も続いていきたかったが、この服では店から出ることはできない。

「とりあえず俺は服を着替えてくるよ」

「お、おう……」


 意気消沈している小野田君を置いて、俺は急いで更衣室へと向かった。


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