06 案件の謎を解くために
「状況を整理しましょう」
しばらくの沈黙の後、長門先輩がメモを見ながら話し始めた。
「小野田君の、彼女から受けているストーカー被害は二週間前の日曜日から受けていると」
「はい」
「だけど彼女にそのことを聞いても、知らないと言われると」
「そうです」
「でもそんなはずはないと思って、彼女の友達に聞いてみると、たしかにその時一緒にいたと言われると」
「そうなんです……」
単純に考えると、その友達がグルになって口裏を合わせているのだろう。
ただこればかりは今どう考えても確かめようがない。
「実際に調べてみるしかないな……」
部屋の中にいる三人が、一斉に俺の方を見てきて、ようやく自分の考えていることが言葉に出ていたことに気付いた。
「いや、えっと実際に調べてみるといっても……」
「それならみんなでお出かけするしかないね!」
俺の発言を遮って彩はそう言った。
「お出かけ?」
「だって買い物していたり、道を歩いていたりすると、下松さんが見ているのだから、その様子を確かめるには、みんなでお出かけするしかないんじゃない?」
たしかに。それなら手っ取り早く真相を確かめることができる。第三者の目から見れば、だれの発言が正しいのかが一目瞭然だろう。
「なら、彩が一緒に行ってくるのか?」
彩が男と一緒に買い物に行ったりすることには、少し心に引っかかるものがあるが、まあ仕方ないことだろう。それに相手は彼女持ちであるし、間違いは起こらないだろう。
と思っていたが。
「何言ってんの。みんなで、って言ったじゃん」
その言葉の意味を理解するのに、三秒もかかってしまった。