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彼女と不仲になったなら  作者: 吉木那央
第二章 小野田光の場合
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04 そして依頼は始まる

部室の中ではいつも通り、部長である長門奏(ながとかな)()先輩が、教室の中央にある長机に座って、読書をしていた。

「こんにちは先輩」

「こんにちは。後ろの人は依頼者?」

 読んでいた本を閉じて、俺たちの方を見た先輩は、すぐに彩の存在に気付いた。

「こ、こんにちは……」

「ま、とりあえず座って」

 

緊張しているのか、とてもしおらしい様子の彩は、長門先輩が座っている方とは反対側の椅子に座った。

俺は一応部員なので、長門先輩の横に座った。

「廊下の方から、話し声が聞こえてきたけど、美祢(みね)君の友達?」

「あ、はいそうです。俺と同じクラスの、柳井(やない)(あや)です」

 幼馴染ということは、とりあえず話さなくてもいいだろう。

「じゃあ時間ももったいないし、そろそろあなたの話を聞きましょうか」

「は、はいっ」

 もじもじし続けていた彩は、背筋を正して俺たちの方と向き合った。

 そういえばさっき、恋愛相談部のことについて何も知らなかった様子だけれど、結局何を話すんだろう。


「え、えっと……」

 相変わらずもじもじし続けている。

 仕方ない、助け舟を出してやるか。

「彩の相談内容は、恋人とのことか?」

「え、いや、それは違くて……」

「じゃあここに来た意味はないんじゃないか?」


「そ、それは……。そうっ、悩んでいる友達がいたので、その人の代わりに相談しに来たんです」


「なるほど……」

 先輩は深く相槌を打って答えた。どうやら興味津々なご様子である。

「それで、その友人の悩みとは?」

「えっと、その人は一年二組の、()()()(ひかる)君なんだけど、一週間ほど前から、彼女に追い掛け回されているみたいで」

「それはストーカー的な?」

「うーん、そこまで深刻なのかはわからないけれど、街中にいると遠くの方から、見られていたり、監視されていたりする感じらしいよ」

「そのあたりをちょっと詳しく知りたいな……」

 先輩はメモを取りながら聞いていたが、状況を整理するためかペンを額に当てて黙りこくってしまった。


「それなら、本人を連れてくるよ!」


 彩はそう言うと勢いよく立ち上がって、教室から飛び出していった。

 なんだか今日は本当に慌ただしいな、と思いつつ、俺は彩の背中を見送った。


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