03 止まない雨はないけれど、今日はきっと止まない
次の日も雨だった。相変わらず俺のテンションは低い。
放課後、俺は部室である図書準備室へと向かっていた。
恋愛相談部の活動内容は、基本的には読書である。好きな本を持ち込み自由に読む。図書準備室ということもあり、隣の図書室から本は選びたい放題である。好きな時間まで読み、そして帰る。入ってまだ一週間だが、そんな日々を過ごしていた。
(まあそうそう浮気調査や、恋人たちの騒動なんて起こらないよな)
そんなことを思いながら部室へと近付いてきた時だった。
(あれ、今日は誰かいる?)
「どうしようかな……。いやでもせっかくここまで来たんだし……」
部屋の前でそう呟きながら、うろうろしていた正体は彩だった。
「彩、どうしたんだ」
「えぇっ、ひーくん⁉」
俺の存在に驚いた彩は、勢いよく後ろに飛び上がった。
「大丈夫か……?」
「なんでここにひーくんが?」
「だって、ここ俺の部室だし」
「ここって……、恋愛相談部だよ?」
「うん知ってる。だって俺の部活だし」
その瞬間、彩の口がぽかんと空いた。
「ひーくん、部活は入っていないって言ってなかったっけ?」
「先週入った」
彩は頭を抱えてうずくまった。なんだか今日は慌ただしいご様子だ。
「あぁ、どうしよう。っていうか、ひーくんいるのに話すなんて……」
「ん?というか……」
ぶつぶつ言っている彩をよそに、改めて俺は考え直してみた。
「ここに来るってことは、彼氏いたのか?」
「はぁっ⁉なんでそうなるの?」
勢いよく顔を上げられたので、俺は一瞬たじろいだ。
「いや、だって恋愛相談部って、『恋人がいる人が相談する場所』だし」
「っ⁉」
この様子だと、知らなかったようである。まあ俺も最初に勇太から聞いた時、まさか『恋人がいる人が相談する場所』なんて思わなかった。名前変えた方がいいのではないだろうか。
「で、どうするんだ」
「そ、そんなの分かっていて相談に来たんだしっ」
ふんっ、と鼻を鳴らしてから、彩は勢いよく立ち上がった。
「まあとりあえず、ようこそ恋愛相談部へ」
俺はゆっくりと部室の扉を開けて、中へと案内した。
結局彩は、何を相談するのだろう?