第1話 始まりの日
今日から、君に会う為ならどんな世界でも生きてやる、を投稿していきます東雲椛です!
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「ん~...」
凄く唐突だが、今俺はビーチに来て、バカンスを楽しんでいた。
俺こと、大河結斗は高校二年生である。
三年生になったら、大学受験が待っているのでその前の遊べる最後の夏休みに、せっかくなのでビーチに来たのだ、それも彼女と一緒に。
「うわー!奇麗だね!ゆいちゃん!」
隣にはパーカーのような真っ白いラッシュガードを羽織り、美しい銀髪が風に煽られている彼女、椿陽菜は海を見て笑っている。
正直に言おう、海なんかより絶対に陽菜の方が奇麗だと思う。
「ここでちゃん付けは止めてくれ」
「なんで?普段は許してくれるじゃん」
凄く不思議そうに平然とそう言われても困る。
周りにはほかの人がいるのだ、恥ずかしいに決まってる。
「にしても...ちょっとミスっちゃったなぁ~」
「何が?」
「こう、アニメとかみたいに二人っきりでビーチでじゃれあいたかったなぁ~って、だからあまり人気のないところにしておけばよかった...って絶賛後悔中」
ちなみに陽菜はアニメオタクである。
高校では隠して、運動部に所属しているが、普段は根っからのインドア、部屋の中はアニメの物ばかり、フィギアも凄い量で、部屋に俺を呼ぶと黄色いジャージ姿で、俺の膝の上に座りながら大型のテレビでよく鑑賞会をさせられる。
最初は俺もどうかと思ったが一緒に見ていくうちにいつの間にか俺もそっちが側だ。
今ではよく泊まり込みでアニメやゲームの攻略をしている。
まあ、今の出分かると思うが陽菜の家はお金持ちで、しかも俺が彼氏という事は既に親公認である。
その為いつでも泊っていいらしい、ただ最近陽菜の家に泊まるとお義母さんが「早く子供が見たいわぁ~」
なんていうので若干俺と陽菜が凍り付くことがしばしばだ。
話はそれたがまあ、二人で楽しむためにビーチに来たわけで.....さっきまで散々遊んでいた、ビーチバレーに参加したり、一緒に泳いだり、水鉄砲で撃ち合ったり、砂の城を作ったり。
正直それでもう俺は疲れてしまったので、パラソルの下に座っていた。
「じゃあ、ゆいちゃんは休んでて、私ひと泳ぎしてくるから」
「わかったよ」
笑顔で海に飛び込む陽菜を見送って俺はゴロンと寝転がって、瞼を閉じた。
「ゆ..ちゃ...」
耳に声が届く、どこか聞き覚えのある声に目が軽く開き。
「ゆいちゃん!」
その焦ったような言葉に結斗はすぐさま体を起こした。
起きた結斗の瞳に映ったのは少女を抱きかかえながら溺れている陽菜の姿で、すぐさま地面を蹴っていた。
「陽菜!」
結斗が海に飛び込むと、追いかけるように一人の男性が「くるみ!」と叫んで飛び込んだ。
陽菜が抱きかかえていた少女のお父さんだろうか?知らん。
ともかく結斗は必死に、文字通り必死に泳ぐ。
「ゆい...ちゃん...」
どうにか陽菜のもとまでたどり着くと少女を渡されて、陽菜は沈んでいく。
「陽菜!待ってろ直ぐに...」
手を伸ばしても既に手は陽菜には届かない、だからと言ってこの女の子を持っていては潜れない。
辺りを見渡して後ろから追いかけていた男の存在に気付き、すぐさま渡した。
「君、くるみをありがとう!」
「お礼の前に!助けを呼んできてください!」
「あ、ああ分かった!」
その返事を聞く前に結斗は水の中に潜っていった。
目が塩辛く沁みる、けどそれでも目いっぱいに目を見開き、陽菜の姿を確認する。
(いた!)
結構深くの方で下へ下へと落ちて行っている。
一度呼吸をしたかったがその間にも落ちて行っていることから、苦しくてもそのまま陽菜を追いかけた。
必死にもがく様に手を動かし、右手を伸ばす。
(届け!...届けぇ!!)
陽菜のか細い手にあと数センチで、指先が触れるというところで.....
(届い...た...?)
時が止まった。
(なんだ?...これ...)
耳にゴーンと鐘の音が響き、手が動かない目も動かない。
そして突如落ちていく陽菜の後ろに青光りする門のようなものが出現し、その門に向かって溺れそうな程の勢いの水流が発生。
陽菜だけをゆっくりと門が飲み込んでいく。
(陽菜!...くっそなんで動かないんだよ!!)
その門が何なのか全く理解はできなかった、理解する気もなかった。
ただ事実として、陽菜が危険だと本能が告げてきていた。
体を無理やり、筋肉がちぎれそうなほどに手を前に突き出す。
(動け!動けぇぇぇ!!)
固い意志のようだった水が突如、とぷんっと音を立て固まった水を手が貫通、陽菜の手をつかむことに成功する...と
(よっしゃ!...って!な!?)
扉が急速に吸い込みが早くなり、考える間もなく結斗ごと飲み込み、門は閉じてしまった。
後には何も残らない...
この時の俺は知る由もなかった、これが陽菜がずっとされてみたいと言っていた、願っていた異世界召喚だなんて...
これが結斗の絶望の扉が開いた瞬間だった。