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Sacrifice.07 -信頼する仲間-

「知らねえぞ……いつの間にそんなに強くなったんだよ、お前は」


 のっそりと起き上がったエコーは苦しそうに腹部を押さえながらそう言った。

 しっかり手応えはあったし、実際にかなりダメージを受けているようだ。


 正直、僕の方もダメージは深刻だ。外傷はそれほど大きくないが、体力がほとんど残っていない。それこそ暴走でもしてくれない限り、自分の力で身体を動かすのは限界に近かった。


「信じられる仲間が見つかったんだ。それだけでこんなにも強くなれるなんて、自分でも驚いてる」


 就寝前に思い出して全身がむず痒くなるような台詞を堂々と僕は言い放つ。

 だが、エコーは何かに思い切り唾を吐きかけるような笑い声を上げた。そして、前に倒れそうになりながらこちらに歩いてくる。


「信じる? 笑わせんなよ。信じて進んだ結果が間違いだったらどうするんだ? 信じた相手を恨むのか? そいつを信じた自分を憎むのか?」


 エコーは僕を強迫するように早口でまくし立てる。

 何だからしくないと感じながらも、それをまともに受け止めることはなかった。今ここに立っている僕はそんなことでは揺るがない。


「疑って後悔するより、信じて後悔した方がいい。だから僕はどんな未来も怖くない。後悔するより、後悔してしまうかもって思いながら生きてる方がよっぽど辛いから」


 僕は体力的な限界を隠しながらきっぱりとそう言い放った。

 結果が間違いだとかそんなこと考えられないくらい、僕は彼らを仲間として信じている。

 彼らと一緒に理想を追い求めていきたい。彼らと同じ景色を見ていたい。

 その気持ちが僕をどこまでも強くさせるんだ。この気持ちがあれば、お前にだって負けやしない。


「ああそうかよ。……なら、その胡散臭い考えと一緒にお前を叩き潰してやる。覚悟しろ!」


 エコーは双剣を取り出すと柄の部分同士を繋げて、正面で高速回転させた。

 その瞬間、緑のオーラを纏った強烈な向かい風が吹き始める。台風を余裕で超越する風速で吹きすさび、僕は立っているのがやっとだった。

 そして、回転する双剣の中心部から巨大な光球が出現し、エコーはそれを回し蹴りでこちらに飛ばしてきた。


「真・緑光弾!」


 空気が震えるほどの衝撃を放ちながら風に乗って光球は飛んでくる。

 さすがにもう正面から受け止めるような無茶はできない。サイドステップで距離をとるが、光球はさらに勢いを増してこちらへ向かってくる。


「逃げても無駄だ。そいつはこの風とともにどこまでもお前を追尾する。それに、ちょっとでも触れればたちまちドカンだぜ?」


 逃げ場はないということか。こちらが法則性のない無茶苦茶な動きで回避しても、正確に最短ルートを辿って追いかけてくる。

 一体どうすれば……そうだ。エコーは今いる場所からあまり動いていない。

 さっきのダメージが影響してあまり動けないということであれば……。


 僕はわずかに勝機を見出し、エコーの近くを高速で通り過ぎた。

 もちろん光球もすぐ後を追ってくる。今だ!!

 身体に相当な負担をかけて緊急停止し、光球が僕を追ってきた道筋とエコーの間のわずかな隙間を移動してエコーの正面に対峙した。

 光球はすぐにそれを認識して、ほとんど弧を描いていないカーブで戻って来るがもう遅い。やっぱり慣性には逆らえないみたいだ!


「まさか、お前……!」


 エコーはようやく身の危険を感じてそこから逃げようとするが、僕の右脚はもう彼の腹部に接触している。

 僕の前蹴りが直撃したエコーは後方に吹っ飛び、僕を追ってきていた光球と衝突した。

 次の瞬間、本当にドカンと大きな炎を上げて光球は爆発し、エコーは水切り石のようにバウンドして転がった。

 手を伸ばして苦しそうにもがくエコーから結晶が剥がれていき、ついに人間態に戻る。


 やった……エコーに勝ったぞ!

 嬉しさのあまり思わずポーズを取ってしまったが、やはり相当身体に無理が生じていたらしい。

 自動的に変身が解除されると同時に全身の力がスッと抜けてしまい、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。

 満身創痍はお互い様か。それでもエコーの方がダメージは深刻で、立ち上がることすらままならない様子だった。


「くっ……これで1対1か……。絶対に……絶対に次は勝つ」


 エコーはそれだけ言い残して悔しさを滲ませながらどこかへ消えていった。それと同時に異空間も光の粒子となって消滅していき、僕は元の世界に戻ってきた。

 そこではちょうど、裕斗が最後の赤カラットに強烈な斬撃を食らわせて倒したところだった。


「どうやら追っ払えたようだな。こっちもだいたい片付いたぞ」


 僕に気づいた裕斗はそう言いながら腕を高く上げる。

 ん? 何のサインだ?


「パーンてやったって。あいつ、一仕事終わったらようやるねんな」


 訝しげにしている僕に甘莉さんは呆れ気味にそう言った。なるほど、ハイタッチか。

 しかし、それに気づかなかった僕か、まだヒューマイトがいるのにそうしている裕斗か。どちらに呆れたのかは気になるところである。

 僕は疲れを引きずりながら裕斗のもとまで歩み寄って互いの手のひらを交差させた。血生臭いこの夜に、確かにその音は響く。


「赤カラットが全滅とは……まさにバケモノの集まりだな。まあいい、この俺が全員殺してやる!」


 強がりか本気で言っているのかは知らないが、とにかくヒューマイトは二本の槍を取り出してこちらに突っ走ってきた。

 もうまともに戦える気力はほとんど残っていない。悪いけどここは皆に任せよう。

 そう思っていた時、心臓が大きくドクンと脈打ち、全身の血液がうねりを上げて活性化していくのを感じた。


 この感じ、まずい……!

 本能からそう感じ取った時には、僕の手はもうジュエライザーのクリスタルに触れていた。


「無理しなくていい。こいつは俺たちがやる」


 慎治さんの気遣い通りに僕もしたいのだが、身体が全く言うことを聞かない。僕は再度変身を遂げてしまう。

 さらに全身に棘などが加わって、あの時と同じ禍々しい異形の姿に変貌してしまい、そのまま僕は進撃してくるヒューマイトに向かっていった。もちろん僕の意思は関係ない。


「まさか、暴走か?」


 トパーズがそう発すると皆が瞬時に臨戦態勢に切り替わった。肌に伝わる闘争心から、彼らが本気で僕を止めようとしていることが感じられる。

 ん……待てよ。

 今回は前回と何かが違う。そうだ、ルタ、聞こえるか?


『聞こえてるよ! てか、正義の方こそ聞こえてるの!?』


 僕の方こそ……?

 そうか! 暴走してるけど僕の意識が残ってるんだ!

 喜んだのも束の間、僕は無理やり最大まで引き伸ばしたセイバーでヒューマイトの身体を斬りつけた。

 しかしその瞬間、慎治さんが「悪い」と予め僕に謝り銃撃を浴びせる。たまらず僕はヒューマイトから引き離された。


 その間、甘莉さんの攻撃で怯んだヒューマイトに、裕斗がパンチとキックの高速コンビネーションを炸裂させていた。

 やっぱり息ピッタリじゃないか、あの二人。


 体力消費もお構いなしの状態のため、僕は最大までチャージしたガラスマグナムを次々と連射していく。しかし光輝くオーラに包まれた黄金の剣を手にしたトパーズが、それを全て叩き切って消滅させる。

 セイバーをめちゃくちゃに振るうが剣先が掠ることもなく、一瞬の隙をついてトパーズは「ちょっと痛いぞ」と剣の柄で腹部を思いっ切り突いた。

 腹に鈍重な痛みを感じていると、無防備になった僕に慎治さんの一斉射撃が襲い掛かる。装甲はバリバリ削られていくが、ほとんど痛みはない。


「早めにケリをつけた方がいい。今から睡魔を極端に増強する弾を放つ。しばらくゆっくり眠っていてくれ」


 慎治さんの指先から10発の弾丸が超高速で飛んできて、見事に僕の身体に着弾する。

 その瞬間、何をどうしようと抗うことができないほど強烈な睡魔が僕を襲う。

 それでも必死にセイバーを振り回すが次第に身体がよろめいてきて立っていることすらままならなくなってきた。


 トパーズの「ご苦労さん」という声を聞き、甘莉さんと裕斗の同時攻撃でヒューマイトが倒れたのをしかと目に焼き付けた後、僕はその場に倒れて幸せという布団に包まれながら眠りについた。

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