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Yell.04 -逃げなければ命はない-

 カチッとクリスタルを奥までスライドさせた。

 青白い光に包まれて一瞬でクリスタルライザーに変身した僕は、僕を一刀両断しようと振りかざされるブーメランを左手で受け止めた。


 力を込めた右足で腹部を蹴り飛ばすと、右手にガラスセイバーを出現させた。心強い後輩が見てるからか、今日は最初から刀身がフルサイズだ。


『今日はすごいやる気だね~。今ならエコーにも勝てるんじゃない?』


 やめろやめろ、たとえそうだとしてももうあいつとは戦いたくない。そんなことより今は目の前の敵に集中だ。

 サンゴーラルはわずかに仰け反りながらもすぐに体勢を整えて再びブーメランを構えた。


「なるほど、お前が噂のクリスタルライザーか。なら、遠慮はいらないな」


 サンゴーラルは首をコキコキ鳴らした後、ブーメランをもう一つ手に持って両方をクルクルと回転させた。

 どうやら相手も本気で来るようだ。それなら、僕ももっと本気で行かせてもらう。


 サンゴーラルが動き出す前に背後に回った僕は背中を思い切りセイバーで斬りつけた。正面から突っ込んだら回転ブーメランで攻撃を弾かれてしまう可能性があったからだ。

 この不意打ち気味の攻撃にはさすがに体勢を崩してしまい、ブーメランの回転も止まった。


「よし、今がチャンスだ!」


 再び正面に回った僕は胸部に何回もセイバーを叩き込んだ。サンゴーラルは僕の猛攻に全く手出しができない状態だ。最後の一発を叩き込むと、サンゴーラルはたまらず何歩も後退した。


「効いてるっスよ、先輩!」


 そうみたいだな。最初の威勢はどこかへ行ったようだ。少し早いけどケリをつけるか。僕はセイバーに力を込めて刀身を青く光らせた後、勢いよく突進した。必殺技だ!!


 しかし急接近した瞬間、サンゴーラルは即座に戦闘態勢に戻った。さっきまで効いていたのが嘘のように。


「まだまだ甘いな。俺はこんなものでは倒れはしない」


 サンゴーラルは二つのブーメランを正面でクロスさせると、「出ろ」と小さく呟いた。衝撃波か何かだろうか。

 セイバーに最大限の力を流入させて刀身に青い炎を走らせ、ブーメランごと叩き割るつもりで突っ込んだ。その時だ。


 ガキンという鋭利な音。

 何かが僕の背中に直撃した。

 あまりの衝撃に僕は立ち止まってしまった。セイバーからも力が抜け刀身はフルサイズから一つ短くなった。

 今、どうやって攻撃を……。サンゴーラルはブーメランを二つとも手に持っていたはずだ。


「ブーメランは二つだけだと、誰か言ったか?」


 戸惑っている僕にそう問いかけた彼は手持ちのブーメランで僕を連続で攻撃した。ガラ空きの状態で食らってしまった僕は装甲を大きく削られ思わず後ろに下がってしまう。

 一発がかなり重い、連続でもらってしまったら危なそうだ。


 サンゴーラルは手を休めることなくブーメランを振るってくる。もはやブーメラン型の大剣だが、ブーメランに変わりはないので距離をとっても飛んでくるのが厄介だ。


 けど、基本的に大振りなので気をつけていれば避けやすい。問題はさっき飛んできた謎の『三つ目のブーメラン』だ。

 僕は振りかざされるブーメランを避けながら少しずつ距離をとっていった。ルタ、何かわからないか?


『背後からの攻撃でも普通は感知できるんだけどさっきの攻撃は全くわからなかった。空気が突然攻撃してくる感じ』


 確かに、ルタは背後からの攻撃を何度か感知してくれたことがあった。しかし、今回はルタでも感知できなかった。

 一体どうやって避ければいいんだ……。


 ある程度距離をとりマグナムで遠距離から攻撃するが、巨大なブーメランで全て防がれてしまう。

 いずれあいつはブーメランをこちらに飛ばしてくるはずだ。その瞬間に懐に潜り込めれば勝機はあるかもしれない。その時に備えて静かにセイバーを光らせていた。


 予想通り、痺れを切らしたサンゴーラルはブーメランを僕に向けて放り投げた。ほぼ同時に地面を蹴って最高速度で走り出し、ブーメランを正面から叩き切って真っ二つにした。


 よし、このまま押し切る!!


「頑張れ、先輩!!」


 大の応援が耳に届き、僕の心は言いようのない高揚感に包まれた。これが……ヒーローか!!

 あっという間に距離を詰めた僕は過去最高のクリスタルエナジーを全身にたぎらせていた。行くぞおおおおおおおおおおお!!!!


「バーニングガラスラッシュ!」


 剣先が届く位置まで来た時、サンゴーラルはバックステップをとって後方へ下がった。

 ちょっと下がったくらい、なんてことはない。そのまま押し切ろうとした時、僕はわずかに空気の振動を感じた。


 なんだこの感じ、まさか……。僕の予想は的中どころかそれを上回ってしまった。


「俺のブーメランは避けることなどできない」


 ブーメランを胸の前に構えたサンゴーラルのその声とともに、手持ちの半分ほどのサイズのブーメランが四方八方に大量に出現し一斉に僕を削っていく。

 くそっ……もう少しだったのに!


 大量のブーメランが僕を攻撃しつくして消滅した後、装甲が荒削りされてボロボロの僕に向かって巨大なブーメランが飛んでくる。

 ダメだ、クリスタルエナジーを使い過ぎてもう避ける体力がない……!


 棒立ちの僕の胸部にブーメランは直撃して、僕は大きく弾き飛ばされる。ドサッと地面にうつ伏せで倒れた後で装甲が崩れて変身が解除された。


「あの攻撃……一体どうなってるんだ……」


「俺は空気中にブーメランを隠している。貴様がどこにいようと避けることはできない」


 さっきの空気の振動はブーメランの出現の予兆ってわけか。どこからでも不意打ちができるなんて、僕に勝ち目はあるのか?


 エコーとはまた違う、戦略的な強さを持っているサンゴーラルはじりじりと僕のもとへ歩みを進めていく。

 早く逃げなきゃ、殺される。その思いとは裏腹に、体力を使い果たした僕は立ち上がることすら困難になっていた。


「正義、逃げるよ! 大ちゃんも!」


 人間態に戻ったルタは「よっこらせ」と僕を軽々と背負って猛スピードで走り始めた。並の男子より普通に足が速いルタに大は必死についてくる。

 いいところを見せようと思ったのに、情けない姿を晒してしまったな……。


「逃がしはしない。全員ここで死ね」


 サンゴーラルは敗走する僕たちにそう言い放つと、手持ちの巨大ブーメランを投げ飛ばしてきた。風を切りながらその距離をあっという間に縮めてくる。

 振り返った僕の眼前に今にもそれは迫ろうとしていた。


 もうダメだ……!!


「困るぜ、こんなつまらない死に方されたらよ」


 死を悟った瞬間、豪快な金属音とともにブーメランは粉々に砕け散る。

 聞き覚えのある声とともに僕の目の前に全身が深いエメラルドグリーンに包まれたバケモノが現れた。その背中はなぜか妙に頼もしい。


「エコー! お前、どうして……」


 ルタの背中からずり落ちた僕の問いに、エコーはわずかに顔をこちらに向けて「ふっ」と鼻で笑った。


「あまりにも無様で哀れだったからな。それに、俺はお前を殺すために生まれてきた男だ。お前が死んでいいのは俺との戦いで力尽きた時だけなんだよ」


 相変わらず滅茶苦茶な奴だ、思考がぶっ飛んでる。けど、結果的に助かったことには間違いない。


「貴様……カラットのくせに人間の肩を持つのか? 憎き人間どもに制裁を加えるのが我々の使命ではないのか?」


 サンゴーラルは部外者の登場に憤りながらエコーにカラットの使命を説いた。

 臨戦態勢のエコーは聞く耳を一切持たない。


「俺はもともとそんなのに興味はないんだよ。人間を襲うのはせいぜいこいつと戦うための手段だ。俺のこの楽しみを奪う奴は誰であろうと容赦はしねえ」


 お前、どんだけ僕に執着してるんだよ!

 こっちはもうあんたと戦うのこりごりなんですけど……。

 けど、正直言って本当に助かった。礼を言うような仲でもないし、とっととこの場から去ろう。


「エコー! ありがとー!!」


 僕の考えとは裏腹にルタは手を振りながら素直にエコーに感謝した。何やってんだ、早く逃げるぞ。

 笑顔のルタを制して、睨み合うエコーとサンゴーラルを尻目に急いで逃げて行った。


 ……全然いいところを見せられなかった。

 僕は初めて“戦闘”に負けた悔しさと恥ずかしさを噛み締めていた。

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