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Yell.02 -隠さなければバレてしまう-

 僕たちは広大な公園の奥へ行き、ランニングコースの近くにあるベンチに座った。大はどこかウキウキしている。一体何なんだこいつ……。


「さて……どうして僕があいつらを倒したとわかった?」


 僕は最も気になる疑問点をぶつけた。

 変身やその解除の時、僕は細心の注意を払って身を隠しているつもりだ。それなのにどうしてバレたのだろう。


「俺、ヒーローが大好きで、よくネットで調べてるんスよ。そしたらこの前、バケモノと戦う謎のヒーローがいるって都市伝説を見つけて、それから気になって現場に行くようになったんです。兄貴にはそんなのいるわけないって言われるんスけどね」


 彼は純粋な瞳のまま話を続ける。


「現場には襲われる人とバケモノ、それからヒーローがいて目撃者はほとんどいない。けど、戦いの前と後、毎回現場付近にいる人が一人だけいるんスよ。それが正義先輩ってわけっス。確証はなかったんで、正直運任せだったんスけどね」


 はははと笑いながら楽しそうに大は教えてくれた。

 なんだ、僕に話しかけたのは勘だったのか。僕じゃないって突き通しておけばよかったかな。そして、おバカそうに見えて意外としっかり推理してた……。


「なるほど……。それで、お前の目的は?」


 ただ好きなだけなら僕に話しかけたりしないだろう。何か裏があるに違いない。

 すると大は突然僕の両手を掴んだ。な、なんですかいきなり……。


「俺も先輩と一緒に戦いたいんス! お願いします!! 協力してもいいスか!?」


 何かを欲しがる子どものように大はそう訴えた。

 うーん、それは僕の一存では決められないというか……。案の定、ルタは人間態になって飛び出してきた。


「うわぁ! だっ、誰スか!?」


 大は飛び跳ねて驚いた。当然の反応だけど、お前いちいち騒がしいな……。


「ダメだよ! 君、死にたいの?」


 ルタの言う通り、ただの黒カラットでも生身の人間なら手も足も出ない。生身でカラットに挑むのは死にに行くのと同じようなものだ。

 けど、ヒーローに憧れるあまり一緒に戦いたいと思う気持ちも理解できないわけじゃない。


「お願いします! 邪魔だけはしないんで! 俺も一緒に平和を守りたいんスよ!」


 脅しのような忠告にも屈することなく大は協力を懇願するが、ルタは依然難色を示している。二人とも意志は固いようだ。

 それでも、僕は大に何か近いものを感じてしまった。


「──わかった。ルタ、とりあえず様子を見てみようよ。ここまで言ってるんだからさ」


「えー!」と大声で異を唱えるルタだったが、大は「やったー!」と喜んでスキップし始めた。本当に子どもみたいだなお前ら……。

 子どもの喧嘩を見てるようで、僕は少し笑ってしまった。


「それじゃ先輩、明日からよろしくお願いします!」


 大は僕とルタに一礼すると嬉しそうに走り去っていった。なんか、わかりやすいようで一周回って不思議なやつだったな。

 それにしても、協力って言ったって具体的にどうするんだろうな。その辺ちゃんと考えてるんだろうか。


「正義! なんでOKしちゃったの!?」


 ルタは腕を組んで頬を膨らませながら僕を叱った。最近怒らせてばっかりだな、申し訳ない。僕は手を合わせて平謝りした。


「まあまあ、僕だって最初からまともに戦えたわけじゃないし。それに理解者が増えるのはいいことだろ?」


 敵を除くと、僕とルタの正体を知っているのは五十嵐さんだけだ。むやみに正体を明かすべきではないことは重々承知しているが、バレてしまったからにはこちらの理解者になってもらうのが最適だろう。


 何よりあの純粋な瞳を見て簡単にNOとは言えない。僕の言葉を聞いてルタも一応は納得してくれたようだ。怒ってもすぐに許してくれるのがルタの都合のい……うん、長所だ。


「ま、いっか。それより、さっきかなり強いカラットの気配がしたんだよね。もしかしたら私たちを付け狙ってるやつがいるのかも。ま、あくまで推測だから気にしなくていいよ」


 おいおいマジかよ。闇討ちなんてされたらシャレにならないぞ。ていうか、そんなこと言われたら気にしなくても気になるだろ!

 なんか怖くなってきたな……早く帰ろ。必要以上にびくびくしながら僕は足早に帰路についた。


 生まれて初めてできた後輩。嬉しいなあ、仲良くしていこう。





「へえ~、面白い子だね」


 翌日、ルタと五十嵐さんは教室移動の途中で昨日のことについて話していた。僕はその少し後ろをこそこそ歩きながら二人の会話を耳にしていた。


「うーん、私は心配だけどなあ。正直戦力にはなりそうにないし」


 正直に言い過ぎだお前は。

 ただ、未知数ではあるし気持ちは強くても生身の人間であることに変わりはない。具体的に何をするのか知らないけど、危険が及ぶようなら助ける必要もある。


「私にも何かできればいいんだけどね。お菓子作ることくらいしかできないからなあ」


 自嘲的に笑いながら五十嵐さんはそう呟いた。作る()()ならできてるとか決して言ってはいけない。

 それに、五十嵐さんがたとえ何もできなかったとしても、その人柄は不思議と周りを安心させてくれる。五十嵐さんは存在しているだけで皆の助けになっている仏のような存在なのだ。

 ……何を考えてるんだろう、僕。


「おはようございます、先輩!」


 そんなわけのわからないことを考えていた時、後方からやかましい挨拶が飛んできた。誰のことを言っているのかわからず皆がざわざわしている中、大は一目散に僕のもとへ駆けてきた。

 やめろやめろ、そんな大声出すと目立ってしょうがないだろ!


「移動教室スか? 荷物持ちますよ!」


 大は僕が持っていた筆記用具やノートをひょいと奪って丁重に扱いながら僕の隣を歩き始めた。

 ああ、皆僕のこと変な目で見てるよ……勘弁してくれ。


「どうやったら先輩の役に立てるか一晩中考えたんスよ。そこで、普段の生活から先輩を支えていこうと思ったんです。俺にできることがあったら何でも言ってくださいね、何でもやっちゃうんで!」


 少し声のボリュームを落として大はそう言った。その心意気自体は嬉しいんだけどなあ……。


「じゃあ言うぞ。まずいついかなる場所でも僕にデカい声で話しかけるな。そして、恥ずかしいから学校で僕に関わるな。というわけで、荷物を僕に返してとっとと自分の教室に帰れ」


「わかりました! じゃあまた放課後に!!」


 僕の忠告を聞いた後でそれを一切無視した返答をした大は足早に去っていった。うん、あいつはバカだ。

 周りの人たちは「あいつ誰?」とか「石海って後輩にああいうのいたんだな」とか口々に言い始めた。

 去年からの経験である程度想定はしてたけど、うるさい奴と絡むとろくなことがないな。


「あれが草鷹くんか~。素直でいい子だね」


 五十嵐さんは多少驚きながらもそう第一印象を述べた。ただのバカだと思うんですが……。


「大ちゃん、朝から元気だったねー。あ、正義、ちょっと」


 いつの間にかつけたニックネームで感想を述べた後、ちょいちょいと手招きした。

 なんだなんだ……? 僕はルタに近づいて耳をそばだてた。


「またカラットの気配がしてる。何があるかわからないから気を付けてね」


 耳元でルタはそう囁いた。僕はやっぱり狙われてるのか。

 エコーから一度聞いたけど、カラットはどうして人間を襲ってるんだろう。何か恨みでもあるんだろうか。それとも単に世界征服とかが目的なのかな。いずれわかる時が来ればいいな。


 ……いつまで僕は戦い続けるんだろう。

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