8話 second case
「当時と容姿はだいぶ違うとはいえ、お前も襲われる可能性がある。お前を送って、帰ることにするわ。」
「あ、ありがとうございます。」
資料を机の上に整理して並べる。他にも刑事がいたので、2人は挨拶をした後、階段を下りていく。
あたりは真っ暗。警察署の周りにあるレストランなどもラストオーダーの時間か客の入りはない。人通りは疎らで街灯はあるが車は少ないために静かな雰囲気。近くの住宅街に人通りがあまりない。こんな場所で悲鳴を上げても誰も助けに来ない。
「……」
何者かにつけられている、そんな感覚がする。八坂は気づいていないが、エイジは周辺を注意深く見る。人影は感じないが視線を感じるのは確かで現にエイジがいなくなり、八坂一人になったら真っ先に襲われそうな感じもしてくる。八坂とともに帰って正解だったかとエイジは思った。
「あ、ここまでで結構です」
「…ほぅ」
その前には立派なマンションがあった。
エントランスは暗証番号を入力してあけるタイプのため、セキュリティは万全であった。
「こんだけガードが固けりゃ怪しい奴に入られる心配もなさそうやな」
「そうですね。」
「…俺かてこんなんよりものっそいボロアパートやのに…」
エイジは影でいじける。
「うぅ、まぁえぇか。安全なことにこした事はないしな。んじゃ、また明日も頼むで」
「はい。」
「んじゃ、俺はここらで失礼するわ」
「はい、おやすみなさい」
深夜1時半。
人通りのない商店街の路地裏に、2人の男が対峙していた。
「てめぇ、 誰に向かって口聞いてんだ? っなめんじゃねぇぞ!」
「ケケケ、あんたにだよ、中村隼人君?」
「て、てめぇ、何モンだ?」
「…記憶にないなら思い出さなくていいよ。どうせ…」
「どうせ… なんだ、はっきり言えボケぇ!」
「あんたはここで死ぬんだからさ」
「ざけんな! 死ぬのはてめぇだ! こいつで細切れにすんぞ!」
中村はポケットからナイフを取り出す。
もう一人の男は動じることはなく、中村に対して冷ややかな笑みさえ浮かべる。
「けっ、社会のゴミはすぐに道具に頼りやがるんだな。それにそんなちんけなナイフじゃ今時の中高生だって殺せやしねぇよ」
「あぁ? すかしてんじゃねぇぞボケぇ!」
「ケッ、切りかかろうが動きが見え見えなんだよ」
中村は男に対して切りかかるが男は動じることなく全てを避ける。
「バーカ」
一瞬見せた隙を突き、男はどこからともなく取り出したゼットソーで中村の腹を刺す。
中村はあふれ出て止まらない血の出る傷口を押さえながら呆然とする。
「う、く…」
倒れこむ中村に対し、男はさらに両手両足と喉元を刺す。
「喉を潰して助けを呼べないようにしといたよ。それに両手足の自由は利かない。苦しみながらゆっくり死なせてやるよ。」
「う、うぅ…」
「…本当ならお前が死ぬのは数日後だったが…。作戦は一刻を争うという名台詞もあるもんでな…。不遇だったな。」
中村は一言も喋らず動くことすら間々ならない状態だった。
「ハハハハハ…、アーッハッハッハッハ!」