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6話 A.E.U.G.2

 公立こうりつ衛宇午エゥーゴ高校。

 数年前までは宗教色がやや強い学校だったが、現在では他に比べて偏差値がやや高いだけの普通高校。

 別に魔法使いが怪しい研究を行っているわけでもなく、生徒会長が世界征服をたくらんでいたわけでもない。どこにでもある普通の高校だった。

 校門前も植物など、しっかりと手入れが行われ、教師か誰かはわからないがいい仕事をしているところがうかがえる。

「よし、行こうか」

「はい」

「ちょっとォ、勝手に進入されると困りますよぉ?」

 どこから声がしているのか理解できなかったが、校門の近くの茂みから声がした。

「なんや用務員か。」

「用務員じゃいんだなァ」

「…なんでそこにおるねん?」

「個人の自由です」

「個人の自由なら、ここに入らせてもらうで」

「それだと困るんですよォ。ここに入るんなら何かしらのアポイントメントを取ってほしいんですよォ」

 用務員らしき男性は口調がおかしいくせに正論を言う。どうしようか考え込んでいるが約束の時間はだんだんと迫る。

 あきらめようかと思ったとき、どこからか声がかかる。

「あれ、ちょっと待ってください」

 また厄介事か…。もう厄介ごとは御免やと思い、逃げようとするが八坂は続かない。

 八坂はその声が高町探偵事務所に電話していた教師だと知り、話を始めていた。その教師も八坂のクラスメイトだったらしく、八坂の変貌っぷりにしばらく開いた口がふさがなかったのは言うまでもない。

「はじめまして、あなたがこの事件を調査している真崎さんですね? 話は八坂さんから聞きました」

「どうも。というかそこにいる人のせいで入れないんやけど」

「そこにいる人?」

 エイジは声がしていた茂みに向かって指を刺す。

「あぁ、用務員の北条さんですね」

「用務員じゃないんだけどなァ…」

「この方達は私が呼んだ者です。」

「そうでしたかぁ。それは失礼。」

「では、行きましょうか」

「お、おぅ」



 図書室。

 授業の時間なので生徒は見当たらず、今いるのはエイジ、八坂、そして

「改めてはじめまして、この衛宇午エゥーゴ高校で教師を務めております、鹿島カジマ理恵リエです。」

「前野署に勤務しとります、真崎エイジです」

「同じく、八坂美奈子です」

「…本当に八坂さんなの…?」

「…もういいです」

 気まずくなったか鹿島は軽く咳払い。

「と、とにかく。あの事件を調査しているとの事ですが」

「…俺らをこちらに呼び出した理由は?」

「こちらを」

 おもむろにCD−ROMらしきものを取り出す。

「これは?」

「現在被害にあっているクラスメイトの住所などをまとめた物です。」

「お、犯人の絞込みには使えるかも!」

 八坂は目を輝かせていたが鹿島は微笑をする。

 ただでは渡さないと思ったかエイジはどうしようかと考える。

「そういえば八坂さん、痩せてから恋人とかはいないのかしら?」

「え、い、いないけど…」

「へー、そんなに美しくなって男の1人や2人はいるかと思ったのに。それで…」

「あ、えっと、その…」

「おいおい鹿島さん、アンタ、聖職者やろ? そういう不当な発言はどうかと思うんやが…」

 そういうと鹿島は不敵な笑みを浮かべる。

 エイジはこういう女は苦手な上に、あまり敵には回したくないタイプなので何も言えなかった。

「あら、そうかしら? 女だったらそういう願望はないの? 八坂さん?」

「え、えっと、何の話、かな…」

「そうねぇ。好きな人にあんなことやこんなことをされたいとかそういうのはないのかしら?」

「えぇっ!? は、話の趣旨が…」

「こらこら、アンタはアダルトビデオの怪しい女教師か!」

「あらぁ、そういうのもいいわね。ねぇ、八坂さん?」

「あ、えっと、先輩…」

「もしかしてそっちがいいとか? 職場でこっそりと行う秘密の逢い引きとか…」

「アホか! えぇ加減にせぇへんと校長に訴えるで!」

「…ちょっとした冗談なのに」

「…実は本気とか?」

「多分」

「……」

 沈黙が流れる。エイジはこのまま悪乗りするようなら本気で校長に訴えようか考えてしまっていた。

「…鹿島さん、暁さんに関することはご存知ですか?」

「えぇ、さっきの電話で八坂さんから聞きましたよ。暁さん、結構性格がきつかったので異性からは嫌われ傾向にありました。」

「なるほど…。あ、せや、そちらの3年間の出来事をまとめた資料とかありますか? アルバムの写真だけじゃ犯人は特定できないので。」

「えぇ、少々お待ちを。」

 鹿島は図書室の片隅からファイルやらプリントやらをまとめて机に置く。それらの数は尋常ではなく、机を埋め尽くしてしまうほどであった。

「…こんなにある物なんか?」

「えぇ、3年分ですよ?」

 エイジは面倒くさそうな仕事になると思った。

「これで半分くらいかしら」

 そういうと鹿島はさらに資料を探しに資料室のほうに消える。

 訂正。エイジはかなり面倒くさそうな仕事になると思った。

「これ、持ち帰りでけへんか?」

「申し訳ありませんがそれは無理です」

 さらに訂正。エイジは無茶苦茶面倒くさそうな仕事になると思った。

「はぁ…、鹿島、見ていくか」

「はい」

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