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4話 hospital

 前原診療所。

 数分歩いたところにそれはあった。

 住宅街の一等地で時間帯のせいなのか人通りはなく、不気味な印象を受ける。

 それでも建物自体は小さくはなく、病院付属の薬局ぐらいの大きさはあった。

「ここか…」

「前原君、どんな感じになってるんだろう…」

「すみませーん」

 診療所の扉を開けるが人がいる気配はなく、受付にも看護士はいない。待合室らしき大広間にも人の姿の姿はなく、この日は開院しているのかと言う疑問すら浮かぶ。

 人を見かけないエイジはだんだんと不安な気持ちに陥ってくる。

「…開いてるのか? 今日…」

「さ、さぁ… 前原君、結構気まぐれな性格でしたので…」

 診察室らしき場所のドアを開ける。

 机の上にはレントゲン用のライト、カルテや聴診器などごく一般的な診療道具がおいてある。

 そのほかにも機械はあるがエイジには使い方がわからないものや、到底理解できないものばかり。特に歯医者でよく見かける治療道具と一体になっている椅子は診療所の看板には「歯科」と書かれている訳でもないのに、何のために使うのか理解できない。

 加えてカーテンの中にも何か隠していそうな雰囲気を秘め、さらに部屋の隅のベッドには組みかけの車の模型まで置いてあり、一体ここはどこなのだろうかと思わせられる。

「…ここ、診療所だよな…?」

「え、えぇ、そうですね…」

「…もう昼過ぎか。」

 時計を見るとすでに12時を過ぎ、午後の1時。

 日は一番高いところにあるが高いビルが多く、電気をつけないとやや薄暗い上にとにかく意味不明なここから早く出たいと思ったエイジは待合室に出てくる。

 その待合室には一人の中年の女性がいた。

「あの、前原先生は?」

「さ、さぁ、今ここにはいないようですが」

「そうですか…。失礼いたしました」

 女性は去っていってしまう。

 しばらく呆気に取られていると入り口からさらに白衣の男性が入ってくる。その男性も八坂とあまり年は変わらない。一瞬エイジを見て唖然としたがその後は営業スマイルで接する。

「あの、何か御用でしょうか?」

「…前原君?」

「はい、そうですが、どちら様で?」

「…高校のとき同じクラスだった八坂美奈子です。覚えてますでしょうか・・?」

「…あぁ、とにかく太かったのは覚えてますよ。…本当に八坂さんなんですか? ちょっと信じられませんね」

「うー…」

「…ちょっとえぇですか」

 八坂は頭を抱えてうずくまる中、エイジは前原に話を切り出す。

 前原は動じることはない。

「前野署勤務の真崎と申します。事件についてお話を伺いたいのですが」

「…婦女暴行殺人についてですか」

「えぇ。」

「…ちょうどお昼時です。今僕はとあるところから食材を取りに戻ってきたので行った先で話というのはどうでしょうか?」

「えぇ、構いません。…その前にひとついいですか?」

「なんでしょう」

「…この病院、経営成り立ってるんですか?」

 前原はフッと微笑む。

「禁則事項です」

「…さいですか…」

 落胆のため息を吐き、つくづく厄介な事件を引き受けることになったんだなぁと実感するエイジだった。




 診療所から歩いて数分。

 窓に「高町探偵事務所」の文字の見えるビルが前原の目的らしく、両手に大きな袋を携えてその場所を目指す。

「ここです」

「ほほぅ、こりゃまた立派な所やなぁ…」

「さまざまな事件を解決している凄腕の探偵なんですよ」

「眠りの類の称号は?」

「…八坂、お前常識で考えて麻酔は劇薬なんやぞ。あの眠りの探偵はリアルで考えたら死んでるで?」

「…そうなんですか?」

「お前、よく刑事になれたな…」

 事務所の扉を開ける。

 豪華そうなソファーと椅子。さらにパソコンやコピー機もある。本棚には調査用の資料、広辞苑や六法全書。さらには○○○な本…ではなく、所長の趣味であろう、ライトノベルが数多く並んでいた。

 その近くにある台所らしき場所には女性がいた。

「どうも、美月さん、お待たせしました」

「あれ、この人たちは?」

「例の事件を調査している真崎刑事と八坂さんです」

「八坂さん…えぇっ、本当に八坂さんなの!?」

 その女性は八坂を見るや驚きの声を上げる。

「まぁとりあえず…。話をしたいということで連れて来たんです」

「こんにちは、この高町探偵事務所の副所長を務めています、美月ミヅキ咲夜サクヤです。ちょうどお昼時なので食べながらお話をお聞きします」

「えぇと…つまり?」

「ここで食べていってくださいな」

「はぁ、しかし…」

 真崎の腹の音がなる。

 美月はクスリと笑うと前原が持ってきた食材を受け取り、台所に戻る。

「少し待っていてくださいね」

「…面目ないです」


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