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3話 first case

 公園を通り抜け、歩くこと数分。

 周辺は住宅が連なって並んでいる。昼前だが事件の影響か元からなのか人通りは少ない。

 ここまで寂れてる市街も珍しいなとエイジは感じていた。

「ここって…こんな寂しいもんなんか?」

「東京だからって住宅街にも人が多いとは限りませんよ?」

「…大阪はオバハンがようくっちゃべってるのにな…」

「あ、ここですね」

 住宅街の一角、赤い屋根の2階建ての家。表札には「暁」の文字があった。

 エイジはインターホンを鳴らす。だが数秒待っても出ないため、もう一度押そうとしたその時静かに扉が開く。その家から八坂と同じ年齢と思われる女性が顔を覗かせていた。

「…どちら様ですか?」

「警察のものです。暁美玲さんですね? 話を伺いに参りました。」

「…本当にですか?」

 見た目が怪しいと思われたのかエイジは警察手帳を取り出し、見せる。

 本物だと安心したか暁はドアをしっかり開け、招き入れる。

「…どうぞ」

 エイジと八坂が暁の家に入ると厳重に鍵をかける。

 リビングに通されるとカーテンを完全に閉めきり、相当なショックを受けた跡がうかがえる。

「改めてはじめまして、前野署に勤めております、真崎エイジです」

「…暁美玲です。この近くの証券会社に勤めています」

「早速ですがお話を…聞かせてもらえますか?」

「…はい」


 

 7月上旬。

 証券会社に勤める美玲の帰りはいつも夕方の時間帯だったが、この日は違った。

「ったくもう、信じらんない!」

 彼女の上司から残業を迫られてしまい、早く帰って仕事の気晴らしの解消にどこかで飲もうかと考えていたが時間的にダメとなってしまった。

 ならば早く終わらせようかとパソコンの画面に目を凝らし、黙々と作業に取り組む。なんとか残業の宣告をされてから2時間ほどで終わらせ、早く退社しようかとしたがやり直しを言われてしまい、さらに打ち込んで会社を出たのは深夜となってしまっていた。

 時間が時間なために周辺の居酒屋は開いているはずは無く、仕方が無いのでコンビニで発泡酒を買い、家に帰る途中だった。

「ったく、あの馬鹿課長、自分じゃ何もしないくせに人をこき使って…! 大体人を何だと思ってるのかしら…っ!」

 近道のために前野公園の深い森を歩いていた。

 人の気配は無いに等しく、街頭も無いために真っ暗。道は見えるものの遠くの景色は見えない。真っ暗な景色に目は慣れていき、だんだんと明るく感じてくる。

 美玲は無能な上司に対する怒り、振るわない会社自体の営業成績などに不満を持ち、誰もいない公園で愚痴を言うことが多々あった。

 後、数歩というところで深い森を抜け、明るめの広場に出るところだった。

「はぁーあ、どうにかあの会社も立ち直ってくれないのかしら…」

「ヘッヘッヘ、ご機嫌斜めですねぇ、暁美玲さん」

「え、誰?」

 突然の出来事だった。

 何者かが美玲の名前を呼ぶ。美玲はそれが何者かはわからないが声質からして男だと理解する。どこから話しかけているのかまったく見当がつかない。

「誰? あなたは一体?」

「ヘ、いい事をしようぜ、なぁ?」

 男はいつの間にか美玲の後ろに回り、拘束をする。

「嫌っ! 放してよ、変態!」

 男は美玲の話を聞こうとはしない。それどころかさらに攻め立てようと左手は胸に手を付け、右手は首元をつかむ

 ※しばらくは台詞のみお楽しみください。情景は脳内で補完しましょう。

「嫌あぁ! 放、あっ…」

「ケッケッケ、これ以上騒ぐと絞め殺しちゃうよ」

「うぐぐ…っ、や、め…」

「おいおい、さっきまでの元気はどこ行った? あぁ?」

「ぐっ、触る、な…!」

「いいねぇ、苦痛に歪む女の顔は。そんなザマじゃ説得力ねぇがなぁ!」

「ううっ! この、けだもの…っ!」

「そんな口聞くと本当にぶっ殺しちまうぞ?」

「いやぁ、もう、許し… 誰か、助けてー!」

「イッヒッヒ、誰も来やしないよ」

「誰か! 誰かぁ!」

「チッ、いい加減にしねぇと本気で…」

「もしもーし、何をされているんですか?」

「なっ!?」

「あ、た、助けて!」

「チッ、運のいい奴だ…」

 男はその場から逃げ出す。

「…なんだかなぁ」

「よ、よかった…ゴホッ、助かりました」




「…なるほど。」

 エイジはタバコを口にくわえ、腕を組んで考え込む。

「…あまり話したくは無かったのですが…」

「ところであなたを助けてくれた青年というのは?」

「私の高校時代のクラスメイトの前原マエハラ時雄トキオという人です。この近くで診療所を開いている医者です」

「前原君… あぁ、あの人…」

「八坂、知ってるんかいな?」

「…もしかして、あなた、衛宇午エゥーゴ高校の出身ですか?」

「そうですが…あなたは?」

「八坂美奈子です。」

 美玲は唖然とした様子で八坂を見る。

「嘘、あの八坂さんなの!? あんなに太ってたのに…」

「キャアッ! 今ここで言わないでー!」

「なんや、クラスメイトやったんか。」

「何なら、アルバム引っ張り出す?」

 八坂と暁が騒ぐ中、エイジは軽く咳払い。

「…まぁそれはともかく、暁さん」

「はい」

「ある程度の概要はわかりました。犯人の特徴とかはわかりますでしょうか?」

「…以前捜査をしていた刑事さんにも話したのですが、暗かったので詳しくは覚えていません。男性と言うことだけしか…」

「…そうですか」

「前原君なら第三者から見てたし何かつかめるんじゃないですか?」

「あぁ、そうか。その前原さんの診療所を教えてもらえますか?」

「わかりました」

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