最終話 decisive battle
「ここか…」
国立鮫島病院。
だが看板は鮫の「交」の部分が欠けており、魚島病院にも見えてしまう。
閉鎖後から手をつけられていないのか外壁は一部が崩れ落ち、また一部のガラスは割れている。
「鍵は…」
「ご丁寧にかかっていないようですね。」
「よし、行くで。用心しておけよ」
「えぇ、わかってます」
内部も外部に負けず劣らず廃っている。
床にはほこりが溜まり、無断で進入した者達の落書きも多く目立つ。
とにかく暗いため、周囲の状況を確認することが困難な為に、聞き耳を立てて周囲の状況を理解しようとする。
「見えないならサングラス外せばいいじゃないですか。それほど暗いとも思えませんが」
「……」
「…ここは二手に分かれましょうか。」
「得策やな。何かあったら大声出すこと、これでえぇな」
「はい。」
前原はエイジとは正反対の方向に消えていく。
「……」
奥の廊下へと進むところに足跡が続く。足の大きさなどから少なくともエイジや前原のものではない。
さらに耳を済ませる。風の音や自分の足音、果てには自分の心臓の鼓動など普段気に障ることのない音が聞こえる。
「…ん?」
かすかに人の足音が聞こえる。自分のものではなく遠いところから聞こえてくる。
「…これで前原さんやったら大笑いやけどな…」
声と足音を頼りに廊下の方へ向かう。
しばらく歩くと壁に座り込む人影がひとつ。
「…前原さん!?」
「ふ、ふふふ…」
どこを殴られたか口からは血を吐き、下を向いたまま動こうとはしない
「だ、大丈夫ですか!?」
「やられましたよ…。まさしく化け物と呼ぶにふさわしい姿でしたね…」
「…動けそうもなさそうやな」
「えぇ、しばらく、休ませてほしいです。…犯人はあちらです」
「…あぁ。」
さらに奥に進み、犯人を捜索する。
周囲に気を配り、じっと耳と目を凝らし、風の音と自分の足音しか聞こえない。
さらに歩いていくが犯人の気配は一向に感じられない。どこかの部屋に入ったのかと思ったがどの部屋のドアも埃が溜まり、開けた様子はない。
「ケケケ、誰を探してるんだ?」
「!」
一瞬の隙をつかれ、エイジの体は宙に浮く。
首を掴まれ、腕を使って抵抗しようとするが敵の力が思ったより強く、離す事ができない。
「くっ、離せ!」
「離せといわれて離す馬鹿がいるかよ!」
「ごもっとも… やなくて、お前が主犯の宮野刹那やな!?」
「ビンゴ! まぁ、誰でもわかるよなぁ!」
宮野は不適に微笑み、さらにエイジの首を締め上げる。
「ぐああぁぁぁ…っ!」
「高町の野郎を受け継いでこの事件調べてたってわけか?」
「…あぁ、そういうことに、な、る、な…」
「ならてめぇもぶっ殺してやらぁ! 死ね!」
どうにか腕を剥がそうとするが微塵も動かない
「けっ、無駄だよ! 無ゥ駄無駄無駄無駄無駄無駄! 無駄ァ!」
「くっ、ここまで、か…」
「ケケケ… ぐあッ!?」
瞬間、宮野の腕がはがれ、エイジは何とか着地する。
一瞬何が起こったか理解できない。近くを見上げた先にいたのは長身の青年だった。
「大丈夫ですか、真崎さん。」
「あ、アンタは…」
「はじめまして、高町探偵事務所所長、高町烈です。」
「おぉ!」
「事件の内容は咲夜から聞きました。…宮野刹那が犯人だということも。」
「うぐぐ…」
頭を抱える宮野。
エイジと高町はバックステップを取り、起き上がるのを待つ。
「ぐぐぐ…てめぇら揃いも揃って…!」
起き上がった瞬間を狙い、三角飛びで接近し、片足飛び膝蹴りを食らわせる。
完全にノックアウトしたか、宮野は起き上がることはなかった。
「…終わりましたか?」
「…前原。無事だったか。」
「えぇ、おかげさまで。…八坂さんを助けに行きましょうか。」
「あぁ。…応援の必要はなかったか」
幸い、八坂はなんら暴行を加えられていなかった。
宮野は八坂を親族か何かだと思ったと供述し、あくまで復讐対象は元クラスメイトであることが証明された。
犯行を行った目的としてはクラスメイトに無視されたゆえの復讐だと供述している。この出来事は「間違った教育によるもの」としてマスコミが報道したが評論家やインターネットの書き込みはそれらに対し、激しい非難を浴びせた。
これらの出来事から数日後。
エイジと八坂は高町と美月の招待を受け、車を走らせていた。
「…八坂はわかるが何で俺まで呼ばれんねん。俺、お前らの高校の同級生でもなんでもない赤の他人やぞ。」
「2人とも、この事件を解決してくれたことに感謝の意を表しているんですよ。」
「…そんなもんなのかねぇ。」
「…先輩、車内でタバコを吸うなら締め切ってないで窓開けてください」
「ん、おぉ、すまん」
締め切った窓を開けると瞬間だけ夏の熱い風が入ってくるが、車を走らせているのでその後は涼しい風が流れ込む。
「しかし、あの2人が結婚たぁねぇ…。なんとなくそんな感じはしてたが…」
「まぁ、そういうことはいいっこなしですよ、先輩。」
はぁとため息を吐くエイジ。
赤信号が青信号に変わったその瞬間、近くで大きな爆発が発生する。
「な、何や?」
爆発の音がする地点に向かうと中学校の一部から火が出ていた。
近所の住民が野次馬見物として集い、小学校の校門前は職員と住民での軽い騒動が起こっている。
「こ、これは一体…」
「……」
燃えている小学校を前に、エイジと八坂は立ち尽くすのみだった。
To be continued...
かなり忙しく、急ぎ足の更新となってしまいました…
特に終盤のゴタゴタ感はもうどうにもならない感じです。小説はもう少しゆとりを持って書くべきですね、反省。
…というか2週間でここまで書くというのがそもそも(略
とまぁ、かなりグダグダですが1章、完結です。
では、2章に向けてネタを考案したいと思います。