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11話 form of challenge

「ふあぁ…」

「あ、おはようございます」

「おう。とりあえず今日は女性の中であと一人の…えぇと、名前は何やったっけかなぁ…」

「…すぴー」

 八坂は眠ってしまっていた。

「おい、起きんか」

「は、えぇと、何の話でしたっけ」

「…やれやれ。」

 エイジはため息を吐くと缶コーヒーを八坂に渡す。

「眠いのは俺かて同じや…。でも、もう少しでたどり着けるはずや。がんばろ、な」

「はい! …で、今日はどうする気ですか?」

「まだ一人事件を知らないはずの佐野サノ春香ハルカに注意だけしておく。」

「では、行きましょうか」



 八坂たちの住む住宅街の一角。

 その片隅の「佐野」と書かれた表札を見つけ、インターホンを鳴らす。

「……」

 2回目のインターホンを鳴らす。

「…いないのか?」

「…あ!」

「どうした?」

 八坂が思い出したように声を上げる。

「佐野さん、確か普通の会社員なのでこの時間は会社だと思います」

 時計を見ると時間は午後の2時。

「…そういうことは先に言え」

「す、すみません、まだちょっと眠いみたいで…」

「…そういえば暁さんのところに行くのを忘れてたな。一応犯人がホンマに宮野かどうか聞いてみるか。…ついでに三城の首実検もせねばならんし。」

 幸い、佐野の家から暁の家まで5分とかからない。

 暁の家のインターホンを鳴らす。

「……」

 増して警戒しているのか、以前訪れたときより長い時間の後、ドアが開かれる。

「…あれ、八坂さん、どうしたの?」

「…とりあえず犯人候補が2人おるから話を聞こうと思いまして。」

「へぇ」

三城ミキ雷流ライルって男の事は知ってますか?」

「三城…誰だっけ…?」

「ほら、エアガンの射撃がうまくて『狙い撃つ!』が口癖だったの」

「あぁあぁ、思い出した! 嘘、あいつが犯人だったの!?」

「ほんとなのよ! もう信じられなくて」

「こらこら。」

 八坂と暁が昔話で盛り上がる中、エイジは制する。

「…でも、三城君が犯人とは考えがたいような…」

「もう一人いる。三城に関しては俺も違う思ぉてます。」

「じゃあ、もう一人は?」

宮野ミヤノ刹那セツナ。多分、彼が犯人ね」

「宮野刹那… 誰だっけ?」

「そこらが問題やねん。」

「この宮野って言う人、まったく記憶にないのよ…」

「確かに…私もほとんど記憶にないわね…」

 …どうでもいいことだが俺抜きで話が進んでる気がするな…とエイジは思ったが合えて口を挟まない。

「宮野か… ほとんど記憶にないわね… ところで真崎さん、その犯人は捕まえられそうなの?」

「え、あぁ、どうにかなるとは思う。」

「そうですか。…もうあんないやな感触は消したいので…」

「…わかりました。こちらもなるべく全力を尽くします。」

「お願いします」

 そう言い、暁と別れる。

「さて、次はどうします?」

「…衛宇午エゥーゴ高校でちょっと話を聞こう。」

 数分歩き、衛宇午エゥーゴ高校に着く。

 事件のことは秘匿状態となっているのか生徒はいつもと変わらぬ日常を送っているように見える。

「とりあえずは職員室行かなあかんな」

「ですね」

「あれ、何の用ですかぁ?」

 近くの茂みから用務員の北条が出てくる。

「おぉ、ちょうどえぇ、ちょいと話を聞こう思って」

「なんでしょうかぁ?」

「事件のことはわかってるな?」

「えぇ。というか通報したのは僕ですよォ」

「何か怪しい人影はなかったか?」

「無かったんだなァ。」

「…そうか、ありがと。」

 2人は衛宇午エゥーゴ高校を去る。

 この後も商店街などで宮野に関する情報はないかと、聞き込みを行うが結局情報は無いまま。時折、パトロールの指示を出した警官に会い、何か真新しいことは無いかと聞くが何も無い。

 無駄な時間のみが過ぎていく。

「…そういやお前も」

「はい」

「怖くないか? お前も一応クラスメイトやし狙われる危険性は大やで?」

 そういうと八坂はフッと笑う。

「大丈夫です。当時とは容姿も声もまったく違うので気づかれませんよ」

「…だとえぇんやがな…」

 そんな話をしながら捜査課に戻る。

 エイジが席に着くと八坂がお茶を持ってくる。

「おぉ、ありがと。」

「…これからどうします?」

 これからの行動方針。

 残っているクラスメイトは八坂を含め、4人。

 佐野は連絡が取れずにあるために情報を伝えるにしても難しい。

 美月に関しては前原がいるから問題ないが…

「お前が犯人やったら、この先どないする?」

「そうですね…。まずはよく外出をする前原君を狙います。これで美月さんを守る人は私だけで美月さんは恐怖する…ということで次に私を狙います。」

「ふむふむ、なるほどな…」

「その後は…佐野さんをやります。その後に美月さんを狙います。…あくまで推測ですが。」

「…なるほど。ならまずは…犯人を捕まえつつ美月さんを守るべきか…」

 しばらく考え込むうちにどちらかの腹の音が鳴る。

「…腹、減ったな…」

「マック行ってきます。」




 八坂が警察署から外出して2時間が経過していた。

 その間に、エイジは同僚と話をしていたり、別の事件の資料を見ていたがいつまでたっても帰らぬことに疑問を抱く。

 一体何があったのか…。それは誰にもわからない。

 いい加減外に出て捜索しようかと思ったそのとき、捜査課の入り口にエイジの見慣れた人影を見つける。

 そこにいたのは慎重な面持ちの美月と前原だった。

「なんや、二人ともどないした?」

「…こんなものが事務所のポストに」

 それは大きめの赤い封筒。宛名には何も書かれてない。差出人には「宮野刹那」と書かれている。正規の郵便ではないために切手どころか消印も押されていない。まず、宛名を書いていない時点で普通に届くはずもない。

「…どうやら向こうから名乗り出てきたらしいな…」

 興奮気味に封を開ける。

「なっ!?」

 入っていた写真にあったのは無残な格好となり、吊るされる八坂の姿だった。…どんな姿かは自由に想像してください。

「これは…」

 写真の裏には「国立鮫島病院」と書かれている。

「…なんや、鮫島病院って…初耳やぞ」

「確か…」

 その昔、国が無駄に余った税金を使い、建てたという国立の病院。

 当時からすればかなり性能のいい医療器具を多数置いていたがバブルが崩壊するとともに廃っていき、その後閉鎖された。

「そんなことがあったのか。…恐らく宮野刹那はそこにいる。」

「…どうする気ですか?」

「俺は行く。八坂を救出して犯人をぶっ飛ばす。」

「…僕も行きます」

 名乗りを上げたのは前原だった。

「…一般人を巻き込むわけにいきません。」

「ですが…クラスメイトである以上、僕の手で救い出したいです」

「前原君…」

「…わかりました。美月さんはここで待機を。」

「はい。」

「俺は前原さんと乗り込む。応援を何名か呼んでいつでも突入できるようにしておこう。」

「よし、行きましょう!」

 エイジと前原は鮫島病院へと向かう。

 心配をする美月だったがそうも言っていられない。ただ、2人の帰りを待つのみだった。

「前原君…真崎さん…」

「あの、ここに美月という人はいますか?」

「…え!?」

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