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10話 therd case

 午後8時30分。衛宇午エゥーゴ高校の図書室。

 かなり遅い時間なのにいつまでも明かりがついていたために用務員の北条は不審に思っていた。

「やれやれ、鍵をかけずに何をしてるんだかぁ…。もう閉まるっていうのに戸締りもせずに一体…。」

 掃除の途中だったのかホウキはそのままの状態に加え、床が濡れていた。

 数秒間、司書である鹿島の姿を見かけずにいたがさらに奥の資料室近くにたどり着く。

「おやぁ?」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「な、鹿島先生!?」

「はぁ…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

「た、大変だ…!」



 電話が鳴り響く。

 その電話のベルは爆睡をしていたエイジにとってかなりの障害で不快さえ感じていた。

 3コール鳴らした後、電話を受け取る。

「はい、もしもし?」

「あ、先輩ですか!?」

「んぁ、八坂、どないした?」

「…ちょっと前原診療所に来てもらえますでしょうか?」

「なんや…、陣痛でも来たんかぁ?」

 ハッハッハと寝ぼけ半分に笑うエイジだったが八坂はそんなエイジに喝を入れる。

「自体は一刻を争います! 今すぐ来てください! 出ないと先ほどの発言をセクハラで訴えますよ!」

 電話を一方的に切られる。八坂の大声により一気に目の覚めたエイジは上着を着なおし、サングラスをかけると言われたとおり、前原診療所へ向かう。

 時間は深夜の11時。

 周りの商店街は電気はつかず、高町探偵事務所の電気もついていない。

 だが本来は閉まっているらしい前原診療所には明かりが灯っていた。

 その診療所に入っていくと、ロビーには前原、八坂、美月の姿があった。

「なんや、全員おるのか。」

「待ってましたよ、先輩。

「で、こんな時間に呼び出すほどの用事って何やねん?」

 美月は俯く。それに次ぎ、前原も重苦しい表情を浮かべる。

「その前に…。前原君、今日の午後9時くらい、どこにいた?」

「僕はずっと診療所にいました。確かその時間にも患者が来ていたのでその人に話を聞けば僕のアリバイは証明されるはずです。」

 エイジは一体何が起こったのかまったく理解できなかった。

「…そこら辺の時間に一体何があった?」

「…鹿島さんが…襲われたそうです…」

「な、なんや、と…」

 信じられない話だった。

 事件が起こらないように周辺でパトロールを行わせていたはずであった。だが犯人はその目をかいくぐり、犯行を行った。

「…なるほど。…前原さんが犯人でないとしたら…」

宮野ミヤノ刹那セツナ三城ミキ雷流ライル。この2人か。そういえば鹿島さんのほうは話できるのか?」

「…精神的ダメージが大きいらしく、まともに話ができる状態じゃないようです。それどころか近づくと腕に噛み付いてきそうな、そんな状態です」

「…末期症状やあるまいし。まぁ、それはともかく。…そこまでそんなひどい事されたのか。」

「えぇ。」

「…そういえば、宮野と三城ってどんな奴やったん?」

「三城君は…確か普通のサラリーマンになっていると聞きました。家もこの周辺ですし。」

「サラリーマンかぁ…。そういえば今日、それらしい奴がおったなぁ」

「どんな感じでしたか?」

 エイジはそのサラリーマンの特徴を説明する。

「…多分それが三城君です。…どうも三城君はシロの気が…」

「…俺もそう思う。足は速かったけど体がひょろひょろしすぎやし、締め出すほどの力はないと思うな…」

「ならクロは…」

「宮野君しか考えられませんね。もしクラスメイトが犯人だとすれば。」

「…これである程度はまとまった。後は犯人がいかに動き出すかやな。」

「えぇ、それにもう時間も押してます。今日はここでお開きとしましょう」

「八坂…いや、それだけやない。前原さん、美月さん、お二方も身の回りは気をつけてください」

「えぇ、わかってます。」

「八坂、美月さん、家が周辺なら送っていくが…」

「いえ、そのあたりは考慮してここにいます」

「…確かにそのほうがえぇのかもな。んじゃ、俺は失礼させてもらうわ」

「はい、おやすみなさい」



 とある病院。

 集中治療室では一人の患者が昏睡状態となり、眠り続けていた。

 この日も、看護士がその患者の状態をチェックするために病室にやってきた。

「ふむ、ふむ…」

 心拍数は比較的安定状態。だが一向に目覚める気配はなし。

 絞殺されかけた酸欠状態から回復しつつある。

             ──7月10日付け カルテより

「これで…よし。」

 カルテの記入を終え、病室から出ようとしたその時だった。一瞬、布が擦れたような音が聞こえる。

 振り向くと、その患者の腕が少し動いていた。それに加え、目がはっきりと見開かれ、看護士のほうを見る。

「せ、先生!」

 看護士は担当医を呼ぶために出て行ってしまう。それから数秒たち、ドアが開かれて出てきたのは担当医ではなく一人の少女だった。

「……」

 上半身を起こし、酸素供給用のマスクを外す。

 少女は視線を動かさない。

「なんだ、お前は…」

「…あなたのクラスメイトらしい人物が、連続で元クラスメイトに対し、殺人と暴行事件を起こしています」

「あぁ、わかってる。俺もそいつに殺されかけたんだ…!」

「…早めに行かないと、美月という人も危ないそうです」

「な、咲夜が!? …何とか早いうちに退院できるように掛け合ってみるか。…ところで、お前は一体?」

「…あ、先生が来るようです。では、失礼します。」

「あ、おい!」

 少女が去ると変わりに担当医が現れた。

「…上半身を動かせるまでとは… 高町さん、具合はどうなんですか?」

「何とか動けます。…あれ、ここは…」

「ここは大学付属病院です」

「…そうですか。…退院できるようならなるべく早めにしたいのですが。」

「あなたの体調次第です。少なくとも1週間は具合を見ないと…」

「それじゃ、遅い! 後2日までにできるようにしていただきたい!」

「わ… わかりました。その分リハビリを厳しく行きますよ。」

「…構いません。」

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