第9話 おっさん娘達に再会する ※改訂済
前話のあらすじ:セインから心配される
※2018/8/30 改定済
レンside
さて、セインに聞いた娘達が待っているという宿屋に着いたけど、中からは凄く重い雰囲気が伝わってくる……。
考えてみれば、娘が父親のお金を使ってしまったということに関して、責任を感じているだろうし、後悔しているだろう。
というか、していなかったらどうしよう…。
あれ?
もしかして、お父さんのお金は使って当たり前だったみたいに思われているかな?
いや、別に父親としては、娘にお金を出すのは当たり前だからいいけど……。
それは何か違う気がする。
ん?
部屋からなにか声が聞こえる。
「ユイがお金使っちゃったんでしょ?
お父さんになんで直ぐ連絡しなかったのよ。
ユリも何も聞いていないんでしょ?」
これは、長女のルナだ。
金髪で物凄く整った顔をした、めっちゃ可愛い娘だ。
歳は同い年の15歳だ。
もちろん、俺の歳のことはバレていないけれどね。
きっちりした性格をしており、言葉遣いから世の中の奥様方に似ているなと思う。
将来はいいお嫁さんになるだろう。
え?
娘達の名前?
名前は元々ついてたよ。
というより、凄く似合っていたからそれで良いかな、って思ってそのままの名前を使っている。
「聞いてないよ。
ルナお姉ちゃんが聞いてないなら、ユリだってユイお姉ちゃんから聞いてるはずないよ。
それにお父さんに会うのは、ユリも3年ぶりくらいだし」
こちらは一個下の双子の妹のユリだ。
一番下のため、基本的にほんわかした性格をしている。
言葉遣いも厳しくも棘もなく普通である。
ルナは長女ということでキッチリした性格だ。
人によっては厳しいと感じる人もいるかもしれない。
ユイは……。
当時はお気楽な性格だったが……。
「…」
どうやら、寡黙な人になってしまったみたいだ。
ええええぇ。
ユイさんや、どうしてしまったんだい。
学園に通い始めるのは12歳ということで、ルナは今15歳ということもあり、4年ぶりくらいだ。
ユイとユリは一個下だから、3年ぶりくらいだ。俺が7歳の頃に拾ったから、5.6年一緒に暮らしていた。
いやー、よく懐いてくれたよね~。
今思っても、俺も精神年齢が27歳の頃に拾ったが、最初のことは大変だった。
泣くわ、騒ぐわ、暴れるわでとにかく忙しい毎日だった。
とりあえず、入ってみるしかないか。
コンコン
リズムよく2回ノックする。
日本では3回とか聞くけど、こちらでは2回が主流だ。
「……! はい! どうぞー!」
ユリが返事をしてくれたみたいだ。
では、お言葉に甘えて入っていくとするかな!
「失礼しまーす!
って! おわ!」
応接室に入った瞬間、ルナとユリが飛びついてきた。
この子達は、未だにこの癖が治っていないみたいだ。
逆にユイは飛びついてくる癖が治ったみたいだ。
「お父さん! 久しぶり!!
本当に王都に一回も来ないんだから!!」
「お父さん、元気にしてた!?」
上からユリ、ルナだ。
言い方でも結構わかるものだよね。
うんうん。元気だね。
良いことだ。
ユイは……無表情や。
なんやこの子、お父さんが嫌いになったのかな。
くっ、やはり仮初めの父親ということか!!!
と、ふざけるのもこの辺にして、しっかり会話していきましょうかね。
「3人とも久しぶり!
積もる話も色々あると思うけど、とりあえず座ってから今後の事をしっかり話し合おうか」
と、席に着くことを促す。
この宿屋で借りている部屋は、そこそこ大きいみたいだ。
寝室以外にリビングがあり、4人がけのテーブルとイスがしっかりと備わっている。
非常にありがたい。
多分、セインが気を利かせてくれたのだろう。
あいつ、ずぼらそうに見えてなかなか気が利くやつだからな。
だから、今回のギルド職員の話も多分平気だろう。
「まず、最初に今の所3人共、他の学園に行く必要はなくこのまま通えることになっているから、そのあたりは安心して良いよ。
勿論、生活費もたくさんはないけど、少しはお父さんから渡せるから、とりあえず生活も出来ると思う。
多分生活費とかもギルドから直接渡してもらえると思うから、ギルドから受け取ってもらえるかな?
あとは、お父さんは働きに出るから当分ルルド村にはいないと思う。
だから、もし用事があるならギルドに問い合わせしてくれるかな?」
「え?お父さん働くの??なにして働くの?」
ユリの純粋な一言に傷ついたわ。
生活出来る事より気にするのはそっちなの?
「知り合いに仕事斡旋して貰えるから大丈夫だよ」
「本当に?危ない仕事じゃないの?
今まで働いていなかったのに、働けるの?
というか、お父さんに知り合いの人なんていたんだ」
今度はルナからの辛辣な言葉だ。
というか、本当にそういう風に見えていたんだね。
お父さん悲しすぎて涙出ちゃうよ。
「確かにお父さん知り合い少ないかも知れないけど、一応友達くらいはいるよ?
それで、仕事はギルド職員だから安全なはずだよ」
少しは弁解しておかないと、今後の父親としての威厳に関わってきそうだ。
いや、本当にこの歳で娘達からバカにされたら困ってしまう…。
ルナとユリは笑っているが、唯一ユイが笑っていない。
どうやら、本当になにかあったようだ。
どこかで俺が子育てを間違えてしまったのだろうか。
いや普通に考えれば間違えている可能性は高い。
確かに、地球での年齢を足せば少しはマシな歳かもしれないが、こちらの年齢だと7歳児が同級生を育てていたのと同じだからな。
「とりあえず、お父さんのことは心配しなくていいから、あとは自分の生活費とかを心配してね。
あ、武器代とかどうしよう。生活費とか諸々込みで1人1ヶ月どのくらいかかってる?
金貨5枚あれば足りる?」
「大丈夫よ。
学園の寮費は学費に含まれているし、食堂があるから朝と夜はお金かからないし。
残った分を貯金に回していけば、武器とかも問題ないと思うわ」
ルナがそう言うなら大丈夫なのだろう。
足りないって言われたらどうしようかと思ったよ。
あとはセインが斡旋してくれた、ギルド職員の稼ぎ次第だよな。
でも、そんなに給料が高いのだろうか。
普通だと一般職で450000ルト稼げる仕事なんて聞いたことがないので、相当高級取りのはずだ。
「お父さんはどこで過ごすの?
王都にいれるの?
私は長女だから、大丈夫だけど、この2人はそうとう寂しがっていたよ?
周りの友達も長期休暇で実家に帰れるのに、3人とも帰れなかったし。
ずっと手紙のやり取りだけだったし」
「いや、王都に居られない。
仕事先は今のところは、キールの街らしい。
だから、王都から1週間くらいは距離があるかな?
でも、ルルド村に比べたら近い距離だと思うから、たまには会えると思っている。
それに、ルルド村が遠いのはしょうがないことだよ。
でも凄く落ち着いた良い村だし。
そういえば、手紙に書いてあった通り、3人とも学園対抗試合の選手に選ばれたのだろ?
凄いじゃないか!」
そう。
夏休みなどの長期休暇はあるが、ルルド村が辺境過ぎて、往復で相当時間を使ってしまう。
また、学園対抗試合といった物があるらしく、学園対抗で色々な種目ごとに試合を行うものの選手に選ばれいるらしい。
それが、どの程度すごいのかはわからないが、多分すごいのだろう。
俺?
俺はこの学園の学校は通ったことがないからな。
よくわからないさ。
読んで下さりありがとうございます。
更新はまだ続きます。