第8話 おっさん心配される(セインSide) ※改訂済
前話のあらすじ:セインとの会話が終わり、ついに娘達に会いに行くことになった。
※2018/8/29 改訂
セインside
「うぐ……。
俺、説教って苦手なんだよな。
だって、うちの娘達が泣いているところなんかみたくないしさ。
甘いって近所では言われているけどさ。
でもちゃんと怒っている時もあるから平気だと思うのだけどね。
あと、俺は腐ってない!引きこもっているだけ!」
ガチャ
そう言って、レンはマスター室を出て行った。
家に引き込もっていることを腐っているって言ったのだよ、バカ野郎。
あいつ怒ると結構面倒臭いタイプだから、あいつの娘達は怒らせたら苦労してるだろうな。
普段は温厚そうな顔と性格している癖に、怒ると周りのことが見えないのか突っ込んでいく癖がある。
それに怒ることが起きると、結構許さないことが多い。
レンはなんだかんだ自分の中の価値観というか、概念がきっちりとしているため、ブレることも滅多にない。
だから、そんなレンが隠居するなんて、当時の俺たちは思いもしなかった。
誰が見てもわかりやすく、俺の姉に惚れていた。
子供だからとか関係なく、というか二人の会話は老父婦かのように落ち着いていた。
当時、子供の俺から見ても姉は成長が早かったが、両親から見ても姉はおかしかったみたいだ。
生まれた時から泣くこともせず、落ち着いて見ていたそうだ。
そして、すぐには歩き出して魔法を使い始めたそうだ。
普通の人が聞いたら、ありえないと思うだろう。
俺だって、聞いただけなら信じないだろうが、実際に姉はバケモンかと思うくらいにすぐに強くなった。
そして、すぐに世界最強になってこの国の象徴となっていた。
俺もレンも姉に師匠として槍術や魔法を習った。
家族の俺よりもレンの方が長く一緒に居たから、色々なことを教えてもらっているはずだ。
レンも当時からえげつなく強かったが、結果的には世界最強の座について居た。
俺は周りが世界最強だったため、常に自分を鍛えるチャンスだった。
しかし、そんなレンも今では娘たちを育てている。
あんなにあった貯金がすべて無くなってしまうのだから、相当の事が起きたはずだ。
どうせ、いずれレンから助けてくれと懇願に来るだろうから、今のうちから原因を調べておくとするかな。
あいつ、呼び出してから1か月もかかって王都にやってきた。
当時のギルドカードやら、マントを見せるなりすれば、他のギルドから王都のギルドにすぐにやってくることが出来るだろうにやってこなかった。
それは、ここに来たくない心情の表れなのだろうな。
でも、噂によると娘好きで誰が見ても溺愛をしているいいお父さんらしく、娘達もお父さんのことを溺愛してるらしい。
お前のキャラじゃないだろうに……。
しかし、そんなに娘達を溺愛をしているというのに、学園に娘達が入ってから会っていないとか。
娘達を国を背負う貴族として厳しく育てたならわかるが、溺愛状態で一般国民として育てたというのに、その親が自分たちに会いに来ないとなると、娘達もグレてしまうのではないだろうか。
まあ、レンも俺も大貴族として、いずれは国を背負うことになると厳しく育てられたから、子供は放置しても勝手に成長するという考えがどこかにあるのかもしれないな。
それにしても、レンとは、あの戦争以来で久しぶりに会ったけど、中身は変わってないな。
いや、むしろ父親になったことによっていい方向になったかもしれないな。
当時、姉さんを亡くすまでは平気だったが、姉さんを亡くしてからは、あいつの荒れ方は酷かった。
元々、強かったことも相まって常に戦場に飛び出していた。
レンを追って後をついていく、俺たちのことを少しは考えて欲しいと何度言ったことやら。
最近になって、孤児達を拾ったって聞いた時は驚いたけど。
当時のことを知っている人が見たり聞いたら、腰が抜けてしまうのではないかと思う。
特に、前ギルドマスターのロックウッドのおばさんが聞いたら腰がなくなるのではないだろうか。
というか、レンが昔に
「お金あるから二度と働かないで、隠居生活する」
って数人に言い残して出て言ってから、どこにいるかもなにをしているかもわからない状態で、だったのにお金が無くなるとか爆笑するところだったぞ。
うん。
やっぱりもっと文句言っておくべきだった。
他の奴らに現状を伝えてやるか悩みどころだが、一旦は伝えなくていいかな。
会った時に俺みたいに驚けばいい。
ふう。
それにしても、やはり戦闘はもう出来ないのか…
あいつは若くして称号を総ナメくらいの勢いで強かった。
しかし、姉さんの敵討ちとして、無謀な戦いを挑んだ結果、心に大きな傷を残したまま隠居してしまった。
まだ、戦えるならお金なんて気にならないほど稼げるだろうに…。
敵討ちなんて良くないと姉さんにあれだけ言われたのに、我慢できずに戦いに行ってしまったからだろう。
それに、それは止めることが出来なかった俺たちも同罪だ。
だから、俺もレンの面倒はしっかりと見ないといけないと思っているのかもしれない。
まあ、その前に親友として協力はしてやろう、とは思ってはいるけれどな。
今は長い間会っていなかった娘達のために頑張ればいいさ。
そうして、働いているうちに外に出てくることに慣れてくれればいい。
もう、戦闘は出来なくてもあいつとは、気が知れている仲のため、側近に置いておくのもいいからな。
事務仕事もできるし、計算も早いため側に置いておくのは案外いいかもしれない。
とにかく、辺境の村に隠居されるくらいなら、一旦はキールの街で隠居をしているほうがいいさ。
読んで下さりありがとうございます。
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より精進していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。