第51話 おっさん逃走する
前話のあらすじ:正体がまたバレた
さて、ロックウッドのおばさんに教えてもらったことだし学園に行くか。
俺が学園に入るのは数回目だ。
当時、学生を保護する時に師団としてやって来た事が何度かあった。
王都は東西南北に門があるが、王城が王都の真ん中にあり、東西南北に大きく道が繋がっている。
いわゆる、大通りといった感じである。
イメージでいうと整地された土地で、平城京や平安京といった碁盤の目のようになっている。
南はギルドやお店が多く、西は高級住宅街、東は一般住宅街、北は学園関係といったところだ。
学園は最北端にあり、過去の王城を使っているため凄く大きい。
今は王城が中心にあるが、昔は北に王城があった。
過去の王城を使っているというだけあり、色々な噂がある。
例えば、地下には封印された古代武器があるとか、夜な夜な聞こえる泣き声とか、望みの物が手に入る部屋など、様々な噂がある。
都市伝説が好きな人達が集まって研究はしているらしい。
学園に行くまでも長いので、乗合馬車を使って移動する。
お金はセシルさんが払ってくれた。
さすが、英雄はお金をたくさん持っているみたいだ。
生活費もままならない俺とは天地の差があると思う。
乗合馬車で10分くらいで学園についたため、馬車を降りて学園に向かう。
学園に入る際には、王城と同様にセシルさんが身分を証明してくれて、ギルドカードを見せたら中に入れてもらえた。
あ!
うちの娘達がどこかで授業受けているのかな?
今日は平日だし、まだ昼前のため授業中だろうな。
というか、ロックウッドのおばさんは学園に行けとしか言わなかったから、とりあえず学園に来たけど、どこに行けば良いのだろう。
「とりあえず、学園長に話を聞いてみますか?」
「ああ、それがいいだろう……。
レン、覚悟した方が良いぞ」
覚悟?
俺が覚悟をするの?
どういう事だろう。
セシルさんは学園に来慣れているのか、先頭を歩いてくれて、迷う事なく学園長室に辿り着いた。
やっぱり王都の学園は広すぎるよ。
門入ってから校舎までも長かったけど、校舎入ってからも学園長室まで長かった。
セシルさんとタナさんと会話をしていたから平気だったけど、長かった……。
ああ、そういえばタナさんは俺が灰色の雨の件を知らない事が不審だったみたいで、その時は他の国にいた事にした。
セシルさんの言葉から、一緒に戦場にいたと思われてしまったかもしれないがひとまずは誤魔化した。
やばいよ。
このままいくと正体がバレそうだよ。
タナさんにバレても娘達にまで伝わらなければいいのだが……。
コンコン
「どうぞ」
どうやら、相手は俺達が来ることを知っていたみたいだ。
念のため、ロックウッドのおばさんに指摘された魔力の波長は変えてある。
「失礼するぞ」
セシルさんに続いて挨拶をして、中に入ると母さんがいた。
俺は何も言わずに外に出て、とにかく走った。
え?
なんで、母さんが学園にいるのだ?
学園長って結構歳を重ねた人がなる職だろ?
母さんはサリーと同い年だから35歳だろ?
早すぎない?
なぜ?
頭が回らない。
とにかく、バレたらいけないと思って逃げた。
家族には生きていることを伝えていないから、俺が死んでいると思っているのだ。
そんな中、おめおめと姿を表すわけにもいかないだろう。
ふう。
動揺してしまった。
一旦、落ち着こう。
あれから10分ほどしてから、やっと冷静になれた。
少し、どこかで休憩したいな。
もう10分程歩くと、校舎の中にひっそりと佇む場所を見つけた。
ん?
ここは中庭か?
綺麗な場所だ。
丁度、中庭みたいな開けた場所に出たため、ここで休憩する事にしよう。
タナさん達とはぐれてしまったが、母さんのところへは行けない。
会うわけにはいかないのだ。
中庭は芝生になっており、真ん中には噴水がある。
程よい広さで休憩には十分過ぎるだろう。
芝生だから地面に座っても横になっても平気だとは思うが、見た目がいい大人が芝生に座っているところを学生に見られてもややこしいので、ベンチに座りたいな。
見渡すとベンチがひっそりと存在していた。
しかし、先客が座っていたため、座りたいなら同席させてもらうしかないだろう。
でも、タナさん達が出て来るまで暇だから座らせて貰えないか聞いてみるか。
「突然ごめんね。
隣座っても大丈夫かな?」
「ええ。構いませんわ」
「ありがとう」
お礼を言って、隣に座らせてもらう。
ふー、精神的に疲れた。
「おっ、ひっそりした場所にあったから景色悪いかと思ったけど、綺麗だな」
「あら?
あなたこの良さが分かるんですの?」
「声に出してたか。
邪魔してごめんね」
「いえ、いいですわ」
お礼を言って、ゆっくり景色を眺める。
あー、ゆっくりとして眺めがいい景色を見ていると癒される。
こんなゆっくりの過ごし方というのもいいものだな。
なんというか、優雅な過ごし方だと思うので、貴族とかでは流行っていそうだ。
まだゆっくりしていたいところではあるが、セシリアさんが危ないのだ。
ゆっくりしている訳にはいかないだろうな。
折角だからこの子に聞いてみようか。
「ゆっくりしてるところ、ごめん。
ちょっと聞きたい事あるんだけど、聞いても大丈夫?」
「いいですけど、答えられない事は答えないですわよ」
「ありがとう。
今ちょっと灰色の雨について調べているんだけど、なにか知ってる事ある?」
「灰色の雨?
ああ、終戦の灰雨の事ですわね」
「終戦の灰雨?」
「ええ、終戦した時に降った灰色の雨だから、終戦の灰雨と言われているんですの。
で、なにが知りたいのですの?
学園には特になにもなかったと思いますけど」
「んー、なにか終戦の灰雨の事が学園なら手掛かりがあると思ってきたんだけど、検討違いだったかな。
じゃあ、あともう一個聞きたい事があって、王都の副ギルドマスターを学園で見かけなかった?」
「副ギルドマスター?
ああ、あの人ね。そうね、何度か最近になってよく見かけるようになったわ」
どんぴしゃりかもしれない。
ダスさんは学園に来ていたのだ。
だが、なぜ学園に?
学生に聞いた方がわかるかもしれない。
というか、この子どこかで見た事ある気がする。
どこだっただろう。
似ているだけなのだろうか。
遠い昔に出会ったような気がするのだが、思い出せない。
どこかで……。
ダメだ。
いつか思い出せるかもしれないから、名前だけでも聞いてみるかな。
「そうだったのか……。
突然、変なことなんだけど名前を教えてもらっていい?
名前知らないと呼びづらくてね」
それとない理由をつけて名前を聞いて見た。
「確かに一理はありますわね。
しかし、遠慮させてくださいませ。
名前を知られて態度が変わるのは嫌なんですわ」
断られてしまった。
多分、何か嫌な理由があるのだろう。
読んでくださりありがとうございます。
だんだん、日が短くなって来ました。
もっと明るい時間が長いと嬉しいのですが……。
もしよければ、評価やブックマークをしていただけると嬉しいです!
今後ともよろしくお願いいたします。




