第49話 おっさん聞き取り調査を行う
前話のあらすじ:エリクサーを追って王都に行くことになった
さて、エリクサーの行方を追って王都に転移で向かうことになり、行くメンバー全員同時に転移陣に乗った。
次の瞬間、視界がグラついて、景色が捻れたと思ったら王都の転移陣にいた。
この転移特有のグラつきが苦手な人は多くて、転移酔いと言われている。
初めて転移した人とか苦手な人だと、良く吐いているところを見かける。
「で、その副ギルドマスターは多分いないとしても、まずは報告書を作成されているか確認しに行こう」
と言うと、セインが報告書の束をギルドマスター室に持ってきてもらった。
わざわざ、他の部屋に移動する必要もないため、俺たちはギルドマスター室に待機をしていた。
「え? セインさんってギルドマスターなの?」
「そうだよ。タナさんは臨時だったけど、あいつの場合は周りがサポートすると言うことでギルドマスターみたいだ」
なんて話をタナさんとしていたら、セインが戻って来た。
……報告書多いな。
結構な量がある。
目測だけど、数百枚はあるだろう。
さすが、王都のギルドだ。
本部だけあって、報告書の量が多すぎる。
「さて、1週間前から今日までの報告書を確認しよう。
当日に出さなくてもそれ以降に出している可能性もあるからね」
確認を初めてから2時間程度が経過した。
みんなで手分けして報告書を探したが見つからない。
うーん……。
報告していないと言うことは、やはりエリクサーを盗んだのだろうか。
でも、それなら直ぐに足が付くと思うのだがそこまで頭が回らない人なのだろうか。
「くそ、学生の頃からバカの見栄っぱりだとは思っていたが、もう35歳になるんだ。
落ち着いて良いはずなのに……。」
詳しく話を聞いたところ、クルスさんとその副ギルドマスターのダスさんは学園からの腐れ縁だったらしい。
当時からバカだったがそんなに悪い奴ではなかったらしい。
しかし、権力にはどう足掻いても負けることを知ったため、媚びることを覚えて捻くれていったらしい。
2人とも最近副ギルドマスターに昇格したばかりのギルドの有望株との事。
んー、ならなおさらエリクサーを盗む必要はないと思う。
副ギルドマスターに、その若さでなることは難しいため伯爵家だとしても優秀過ぎるくらいだ。
それなのに、自分から信頼を失墜させることをするのだろうか。
「これには裏がありそうだな」
「ああ、そうだな。
こんな足がつきやすいことをするとは思えん。
嫌な予感がする。これは、慎重に調査の必要がありそうだ」
やはり、セインも同じ結論に至ったか。
これは簡単な調査にはならなそうだ。
どうするか。
裏を取るべきか、正面から確認をするべきか。
「二手に分かれようか。
タナさんかクルスさんのどちらか片方とセインがダスさんに会いに行ってくれ。
偉い人が来れば媚びる性格なら、セインが行けばヘコヘコするだろう。
俺はダスさんの魔力を辿って王都での痕跡を探したいと思う。」
「そうだな、そうするか。
じゃあ、どちらかは俺について来てくれ」
「なら私が行きましょう!」
クルスさんが勢い良く言い切った。
タナさんの方を見て、しっかりと頷きこちらを再度見ている。
強い眼差しだ。
相当ダスさんに言ってやりたい言葉があるのだろう。
まぁ、友達なのかはわからないが、同級生が容疑にかかっているのだ。
どうにかしたいのだろう。
タナさんも俯いているし、折角作ったエリクサーが無くなってしまって悲しいのかもしれない。
「そうか。じゃあ、クルスさん行くぞ。
おい、レン。ちゃんと守れよ?」
「おいおい、戦闘はない想定だよ?
まぁ、もちろん守るけどね」
「……んー!!!」
タナさんが真っ赤になっている。
どんだけダスさんに文句言いたかったの?
それとも俺との行動が嫌とか、そうゆうパターン?
でも、それはないか。
嫌なら元々着いてこないよね?
もちろん、直接は聞かないけれどね。
さて、まずはギルド職員に当時の状況から確認かな?
本当ならセインがいた方がいちいち説明しなくても聞けるため楽だったが、セインにはダスさんに会いに行って貰ったからしょうがない。
俺が行ったところで、正体をバラす訳にもいかないからね。
聞き取り調査の結果、人からの評価は二分化した。
一方は事前知識通りの悪い評価だ。
仕事は真面目にしているが、権力者には逆らわず、時と場合によっては仕事を投げ出すこともあるとか。
一方はよくわからないという評価だ。
仕事は真面目にしているように見えるが、どこか落ち着かない人で、何を考えているのか全然わからないという。
うーん。
いい評価がないのは、本人の行いが悪い事に対する評価だからしょうがない。
でも、悪い評価だけなら副ギルドマスターにまで昇格しないはずだ。
この話には裏がありそうだ。
その時、面白い話が聞けた。
「以前、ロックウッドさんがギルドマスターとして勤めていた頃は真面目な青年で、伯爵家というだけあり優秀で、仕事もテキパキとこなしていたよ。
でも、ロックウッドさんが辞めるちょっと前くらいからかな?
副ギルドマスターに昇格した時くらいから、だんだん変わっていってね。
いつからか評価が真逆になってしまった。
当時でも権力者にはヘコヘコはしていたが、今ほどじゃなかったと思うんだよな」
これはいい情報だ。
再度、他の人に話を聞かせて貰ったところ、同じような回答が返ってきた。
その上で、現在は悪い評価か、以前の評価があるからよくわからない評価になっているのだろうか。
さて、まずは原因を知っているかもしれないロックウッドのおばさんに会うしかないだろう。
あの人苦手なんだよな。
初対面の知らない人として会いに行こう。
確かセインは騎士団にいるって言ってたよな。
騎士団と冒険者のなによりの違いは、生涯雇用かどうかの違いだ。
日本で言うと、騎士団が公務員で生涯雇用に対して、冒険者は会社員や個人事業主のような形である。
コンコン
「失礼するぞ」
入って来てのはセインの父親のセシル・セルフィードだった。
この人が前回の大戦も含めて長い間、国やギルドのために尽力している英雄だ。
本当に国民からは英雄として扱われている。
俺の父親、セシルさん、国王の3人がずっと戦争で前線に立っていてため、国の英雄だ。
相変わらず、見た目が厳つい人だ。
中身は優しいんだけどね。
俺の正体を知っている数少ない人だ。
「むっ!
なんと、帰って来ていたのか?
セインはどうした?」
「セインに用事ですか?」
「取り急ぎの連絡ではないが、セシリアの体調が芳しくない」
「いやそれ取り急ぎの連絡ですよ!
今、セインはエリクサーを追っているのです。
タナさん、この人はグランドギルドマスターのセシルさん。
セシルさん、こちらはキールの街のギルド職員のタナさん。
タナさん、この人なら信用できるから話してもいいかい?」
タナさんに許可を取ってから、セシルさんに現在の状況を伝えた。
「ということなんです。
だから、セインは今エリクサーを追いかけていて、俺たちはダスさんの情報を集めています」
「……そうだったのか。
まさか、完全体のエリクサーが完成するとは思わなかった……。あれは過去の遺物だから、もうセシリアは間に合わないと思っておった。
それに、ダスの奴も前はまともに働いておったのだがな」
やはり、セシルさんから見てもダスさんがおかしくなったのは事実みたいだ。
それにセシリアさんとはセシルさんのお嫁さんでセインの母親だ。
つまり、師匠の母親でもあるため、当時相当良くしてもらった。
絶対にエリクサーを見つけて助けたいな……。
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