第19話 おっさん優しさに触れる ※改訂済
前話のあらすじ:家がないことを知る
※2018/9/1 改訂
リンさんから、衝撃の家がない宣言をいただき、どうやら1週間で家を見つけないといけなそうだ。
でも、この街の右も左も分からない状態で、不動産を見つけたりすることも大変だ。
なにより、ご飯が食べれない……。
もしかしたら、明日のお昼までご飯は抜きかな……。
そして、誰かにお金を借りるしかないだろう。
残っていた硬貨もキールの街に着くまでの乗り合い馬車でのご飯で使い終わってしまっているし……。
でも、考えてみれば給与が当日に貰えるわけがないので、もっと節約をすればよかった。
ひとまず、ギルドマスターにはお礼を言ったので、仮眠室に向かうことにした。
仮眠室は、ギルドの裏の敷地に5階建ての建物が立っており、そこに入っている。
というより、建物すべてがギルドの所有物で仮眠室などのために建てられたらしい。
1階は診療所や受付などで、2階から5階までが仮眠室である。
仮眠室の役目としては、ギルド職員が泊まったり、宿が取れなかった冒険者や怪我人が泊まっている。
受付で確認したところ、俺は5階の1番遠い部屋らしい。
どうやら、怪我人は下の階で元気な人ほど、上の階の遠い部屋になっていると教えてくれた。
それにしても、一番遠くはないんじゃないだろうか。
見た目は30歳だから、働き盛りの元気に見えたのだろう。
仮眠室に入ると、4畳半くらいの部屋と簡単なキッチン、トイレ、お風呂があり、日本でいう大学生が一人暮らしをする、ワンルームアパートといったような感じである。
狭いとは思うが、生活するには十分な広さがある。
荷物は魔法の鞄にいれているため、そこまで多くない。
それに、この魔法の鞄もカモフラージュで、本当の荷物は亜空間ににしまってある。
この魔法は無属性の魔法だが、難易度は非常に高く使用できる者は殆どいないと聞いている。
当時に使っていた武器などは亜空間ににしまってある。
槍とか大剣とかのため、持ち歩きには不便だし、もう使うこともないだろうからね。
んー、仮眠室に置いておく物も特にないかな。
とりあえず、ご飯を食べよう。
本当にヤバければ、亜空間にしまってるものを売るしかないかな。
でも、当時戦争後の復興の為にいらないものは、殆ど寄付してしまったから、大事な物しか入ってないんだよね。
あぁ!
後はルルド村で貰った野菜があるか!!
出て行くときに村の人達からたくさん野菜を貰っていたのだった。
みんな、いい人達だからなぁ。
お金を稼ぐ必要がなくなったら、また村に隠居するのも良いと思う。
ん?
待てよ?
よくよく考えてみると、野菜炒めを作るにしてもフライパンなどの調理器具も、お皿などの食器もない。
部屋に食器などは置いてあるかと思ったけど、さすがに置いてないな。
ルルド村を出てくる時に、お金が失くなるとは思っていなかったので、周りの家に寄付してしまった。
特に近所のおばあちゃんに殆どの物をあげてしまった。
娘達が小さい頃に大変お世話になったから、食器や器具だけではなく、様々な物を渡してきた。
もちろん、防御の魔法陣を刻んだお守りも渡してあるし、村全体を魔法陣で守ってはいる。
つまり食器もないという事は、外に再度行くしかないようだ。
勝手が分からないが、適当に街をぶらついてみようかな。
ひとまず、食堂でお金を後払いでご飯を貰えないか聞いてみることにしよう。
ギルドに戻って食堂のおばちゃんに聞いてみたところ、今まで前例がないから、ギルドマスターに確認してくれとのことだ。
いや、今日だけで3回も行くのは相当気まずい。
昼にタナさんに聞いた話では、ギルドマスターやタナさんは現在夏休みで長期休暇との事だ。
長期休暇中は、普通の職員と同様に働くそうだが、学園期間中は第2シフトだったり、第3シフトで出る事もあると聞いた。
ただ出勤日数は学生ということで、相当少なくしているらしい。
給与は低くなっても、学生の本職は勉強だからね。
ギルドもその辺りは配慮をしているのだろう。
さて、そんな折角の長期休暇を使用して、尚且つ普段溜まっているであろう仕事をたくさんしているギルドマスターのに何度も伺うのは気が引ける。
というか、もう19時くらいだが、まだいるのだろうか。
今日は、フライパンなどを手に入れに行くしかないな。
どこかにお金を前借りして買えるお店を探し回るしかないだろう。
「あんた! 食堂でもう使わない食器とかあげるよ!」
「え?? 本当ですか!!
ありがとうございます!!
大切に使わせてもらいます!!」
ギルドを出て行こうとすると、後ろから食堂のおばちゃんに呼び止めれて食器を貰うことができた。
大きめのダンボールで渡してもらったので、どうにかなるかもしれない。
まさか、無料で貰えるとは……。
お金がないから、本当に助かる。
もしかしたら大切な剣とかを売るしかないと思っていたところだった。
本当に嬉しい。
ルルド村でも人の優しさに触れることがよくあったが、このキールの街でも似たような雰囲気だ。
優しくしてもらったことがあまりないので、思わず泣きそうになるが堪える。
当時も優しさは世界中にあったのかもしれない。
しかし、俺は常に戦場にいたため、生きるか死ぬかの世界だった。
そのような状況下で、他人に手を差し伸べるような余裕がある人はほとんどいなかった。
いたとしても、味方を助けるくらいだ。
それに、よく裏切りとかもあったからね。
だから、基本的には人を信じないようにいた。
昔のことを思い出すと、暗くなってしまうな。
良くない傾向だ……。
俺はおっさん。
俺はおっさん。
一般人だ。
一般的なおっさん。
うん。
催眠術じゃないけれど、自己暗示のようなものだ。
そう思えば俺がおっさんだと思えてくる。
なんだかんだ、15歳であることを忘れている気がする。
同年代の人を見ても、ああ、若いな、って思うようになってしまっている。
気を付けよう。
呪いで見た目は変わっているが、中身は15歳なんだ。
精神年齢は35歳だけど15歳なんだ。
なんだか、ややこしいな。
さあ、部屋に帰ってご飯を作ろう!!
読んで下さりありがとうございます。
読者の方がいると思うと力が湧いてきます。
なんというか不思議な感覚ですね。
これからもよろしくお願いいたします。
※2018/9/1 改訂




