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義体士の孤児院  作者: ジラフ
2/2

身体造りの孤児院2


「は?」


カタヒノは困惑の極みの中にいた。


殺人鬼(仮)があの子のパパらしい。


しかしそんな事を信じられるはずもない、可憐な女の子と殺人鬼ではあまりにも似つかないではないか。


「ごめんなさい捨てないでごめんなさい捨てないでごめんなさい捨てないでごめんなさい捨てないでごめんなさい捨てないでごめんなさい捨てないで」


実の親ならば子があんな懇願の仕方をするはずはない。


なんて哀れな姿だろうか大きな瞳から大粒の涙をこぼしながら縋り付いている。


これは誘拐犯だとカタヒノは結論を出した。


あとは動くのみである。


「外れろ、私は(わたし)を置いていく」


カタヒノの身体が奇妙な音を発した。それは空気の漏れる音のような、火が燃える音のような音。次いでカタヒノの腕が、赤く光り始めた。


次の瞬間カタヒノがいた場所が爆ぜた。


爆発的な推進力を得たカタヒノは一直線に殺人鬼(仮)へと腕を伸ばした。


「まちなさいな」


その腕は足に下から蹴り上げられ打ち払われた。その時カタヒノはその足が足のみしかない事を確認した。


「ええっ!?」


腕は赤熱状態であり触れればタダではすまないはずなのだがその足には全く傷はない。


「ん?お前ら今までどこにいたんだ」


殺人鬼(仮)が後ろを振り向くと5人の子供達がそこにはいた。


「父さんが面倒起こすところを見物してたのさ。案の定誘拐犯か何かだと思われてるね」


クスクスと笑う中性的な子。


青みがかった黒色の長髪を腰のあたりで緩く結んでいる。瞳は灰。


特徴はもう一つ、右腕が明らかに造りものであった。


「そんな事を言わないの。兄さんの人相が悪いのなんて今に始まった事じゃないんだから」


注意したのは橙色の大きな三つ編みの女の子。瞳も同色。


殺人鬼(仮)の妹らしき言動である。


左手が金属光沢を放っている。


「わたくしたちもどうざいでしょう、あにのようすをだまってみていたのですから」


金髪のショートカットの女の子。瞳は青。


言葉が不自由なのだろう、聞き取りにくい話し方である。


凝った意匠のチョーカーに見えるそれは喉と一体化していた。


「父上の危機をお救いしました!!褒めてください!」


赤茶の短髪の男の子。瞳は黄。


元気が有り余っている。


その右足は確かにカタヒノの腕を蹴り上げたものだった。


無骨な鉄の脚。


「抜け駆けは許さねえ!!特に何もしてないけど褒めてくれ父ちゃん!!」


黄色のポニーテールの女の子。瞳は赤。


無茶な事を言っているが本人は自信満々だ


左足が人形のようになっている。


「これはいったい……」


「騒々しくてすみません。中へどうぞ、お茶の一つでもお出ししますので」


殺人鬼(仮)がこちらに笑いかけている。正直なところ人相が悪すぎて威嚇にしか見えない。


「それは……ご丁寧にどうも……」


だがこれを断るのは悪手。


入れてくれると言うのなら入らせてもらおうじゃないか。


さあ鬼が出るか蛇が出るか……もう鬼は出てしまっているけれど。


「すみません、ウチの子たちが迷惑をおかけしました」


殺人鬼(仮)が頭を下げている。


「ごめんなさい……」


リコリスちゃんも一緒だった。


「いえもういいです。大事なかったので」


「そういうわけにはいきません、落とし前はきっちりつけるのがウチの方針なので」


「はあ……?」


どうするというのか、まさか指でも落とすんじゃないだろうな。


「リコリス……お前がしようとしたことをしっかりと説明して許しをもらえ」


「はい……。お姉さんこれを見て」


リコリスちゃんが髪をかきあげる。


「っ!?」


隠れていた瞳はおよそ人の眼球ではない、例えるならば透き通った虹色の水晶だろうか。


「これは【邪眼王の右目(ラ・バロール)】っていう義眼です。私はこれでお姉さんの記憶を消そうとしました。どんな咎めも受けます……どうかお許しを……」


「それならおあいこだよ。私だってそこのパパ?を殺そうとしたから」


「あ゛あ゛?」


あっれーおかしいなあ、さっきまでの殊勝な女の子が消え去って羅刹が出現した。


「……とりあえずこれで手打ちにするってことでどうですか?」


「すみません……リコリスももう一度謝りなさい」


「……ごめんなさい」


「それじゃあ俺はもう少し話があるから部屋に戻りなさい」


「はい……」


リコリスちゃんが部屋を出ていった。


「それではここからは大人の話ということで」


その顔でその口調は違和感がすごいな……


「別に私は身分もありませんので楽に話していただいて結構ですよ?」


「いえいえそんなこと……本当ですか?」


「本当です。腹を割って話すのに建前なんていりません」


「それは良かった」


殺人鬼(仮)が笑う。


恐ろしい笑いだ、肉食獣が牙を剥いたようにしか見えない。


「ちなみにお名前は?」


「ここの院長のタロスだ。兼業で義体士(パーツメイカー)をやっている」


「……義体士ですか」


このタロスという男が子供達の装具を作ったということだろうか。


「こっちも一ついいか?」


「何でしょう」


「その【炎人(プロメテウス)】はどこでつけられた」















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