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善大魔王  作者: のこりかす
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勇者翁と大魔王

 「じいちゃん、必殺技教えてくれぇ」

 祖父の家の玄関を開けるなり、我が家のように上り込んでいくマルク。

 「おじゃましまーす。」

 マルクに続いてみんなぞろぞろと入っていく。

 全員が入ったところで、先に入ったマルクがトラップに引っかかってひっくり返る。

 「あら、マルクいらっしゃい。」

 何事もなかったかのように奥の部屋から眼鏡をかけた女性がひょっこりと顔をだした。

 「フィアお姉ちゃんお久しぶりです。」

 すっころんで戦闘不能になっているマルクに代わって、ランが挨拶する。

 「キャァ~!ランちゃん久しぶりぃ~♪」

 ランを抱きしめようと、両手を広げて突進してくるフィア。それを受け流すように1回転してかわすラン。

 勢いは止まらず後ろにいたレフトに抱き着く形で止まった・・・・だけだったのなら良かったのだが、抱きしめてサバ折りするのがランに対する挨拶の形式だった。

  ギュウゥゥゥゥゥゥ。

 「あら、しばらく会わなかった間にずいぶんとがっしりとした体つきになったじゃないの。」

 体つきを確かめる為と言いつつ、さらに力を入れて締め付けるフィア。

 いきなりのことで声を上げることも出来ないでいるレフト。それを見ておろおろするサラ。慌てて止めに入るラン。

 「お姉ちゃん人違い、私はここです。」

 「え?キャ!・・・はわわ、ワタシったらなんてはしたないことを・・・。」

 渾身の掌底突きによってレフトは玄関を突き破って外まで吹き飛んだ。

 「あわわ、大丈夫だか、レフトどん!」

 吹っ飛んだレフトを心配して、サラが慌てて駆け寄よった時、足がもつれてレフトの上に倒れかかる。

 「グハァ!!・・・お、お前ら・・・危うく中身出かかったぞ・・・。」

 魔法障壁によって事なきを得たレフトだったが、もう少しで魔王だけが持つすべてを無効化する防御魔法、暗黒障壁が発動するところであった。

 「あわわわ、すまねぇだ。」

 「ごめんなさ~い、生きてますかぁ~。ランちゃん、回復お願い。」

 かけよって来たフィアとランに、レフトは重要なことを伝える。

 「ワシのことよりマルクのほうがやばいんじゃないか?」

 一同振り返ると頭を押さえてうずくまってるマルクが、必死に痛みをこらえている。

 ・・・

   一瞬の間。

 「「大丈夫です、男の子ですもの。」」

 「いいだか!?本当にそれで済ませていいだか!?」

 フィアとランが息ぴったりに匙を投げた。サラはただオロオロするしかなかった。



 「ひでぇよ姉ちゃん、家の中に罠仕掛けるなんて聞いてねえよ。」

 ぶった頭を押さえて愚痴をこぼすマルク。

 「あら、この程度の罠なんて引っかかるほうが間抜けですわよ。ねぇ~♪」

 「ねぇ~♪」

 フィアが同意を求めるとランが同調する。

 「チィ!!」

 なにも言い返せなくて、マルクが舌打ちする。

 「そういえば姉ちゃん、じいちゃんは?」

 「ん?奥にいない?」

 フィアが奥の部屋を見に行ったが、すぐに血相を変えて戻ってきた。

 「大変!おじいちゃんが勇者の剣をもって裏口から出て行っちゃったみたい。」

 「別に元勇者なんだから剣持って出かけるのはおかしくないだろ。」

 「おじいちゃん最近ぼけちゃってるのよ、剣なんか振り回してご近所さんに迷惑かけるといけないから、探してきて。」

 フィアの慌てぶりから、全員で手分けしておじいちゃんを探すことになった。

 フィアの指示で各々が別の方向に向かって探し始める。

 レフトが村の入り口の方へ歩き、何軒か先の角を曲がった時、剣を持った老人と出くわした。

 その老人の眼光は鋭く、闘気をまとってレフトに相対する。

 その姿はとてもぼけているとは言えないものである。

 「胸騒ぎがしてみれば、やはり貴様か大魔王!ここであったが百年目、今一度成敗してくれるわ!!」

 老人は一歩飛び退き、剣を抜いて必殺技の構えを見せた。

 「ふはははは、貴様ごとき年寄りに何ができるというのだ。」

 レフトにはこの老人の構えに見覚えがあった。半世紀前に戦った勇者が使っていた技だ。

 あの時は大魔王が勇者に敗れるというシナリオの元、わざとやられたふりをしていたが、その気になればかわすことなど造作もないことであった。

 「ハァーーーー!」

 気合とともに老人の剣先に膨大な魔力が込められていく。

 この後、周りへの被害が最小限になるように、この周辺が閉鎖空間に包まれるはずだったが、屋根の上から二人の間に降ってきたフィアが老人の前に立ち塞がり、渾身の一撃を食らわせて必殺技を止めた。

 「おじいちゃん、何必殺技使おうとしてるのよ!危ないでしょ!!」

 「魔王じゃ!魔王を倒さねば!!」

 「おじいちゃん、彼はマルクの仲間の方です。」

 再び必殺技を使おうとする老人に対して、フィアは何発か拳を叩き込んで昏倒させてしまった。

 「おいおい、老人相手に何もそこまでせんでもいいだろ。」

 フィアの仕打ちに対してレフトは老人の事を心配した。

 「腐っても元勇者ですから、これくらいしないと逆にこっちが危ないんです。それにおばあちゃんに比べたらまだまだ生ぬるい方です。」

 笑顔で語るフィアに、この老人の事が本気で気の毒で気の毒でしょうがないとレフトは思った。

 「さあ、戻りましょう。」

 フィアは気絶している老人を軽々と持ち上げて歩き出した。

 家に帰る前に老人は目を覚ました。

 「・・・フィアさんや、そちらの御仁はだれかいな?」

 先ほどとは打って変わってほんわかとした雰囲気を醸し出しており、先ほどの人物と同一人物であるとは信じられないものがあった。

 ボケなのかはたまたフィアの拳のせいか、さっきの出来事は忘れているようだ。

 「マルクのお仲間さんで・・・自己紹介はまだでしたよね?」

 「レフトだ。一応、魔法使いと言うことになっている。」

 「おぉ~、しょうかしょうか、そいつは遠路はるばるご苦労様ですだ。」

 先ほどの気迫が嘘のような、おっとりとした老人の姿がそこにいる。

 剣を持つよりも、縁側で日向ぼっこしてるほうが似合うであろう。

 家にもどると、一番日当たりのいい場所で庭を眺めている。

 その姿は世界が平和であると錯覚させるほど、のどかなものであった。

 「姉ちゃん、じいちゃんいなかったよ。」

 マルクに続いてサラとランも帰ってきた。

 「ご苦労様、おじいちゃんはこっちで無事に確保したわ。」

 「あれが無事なのか・・・」

 レフトが突っ込みを入れる。

 「そっか、なら良かった。じいちゃん、必殺技教えてくれぇ~。」

 マルクはシオドアのところへ駆け寄って行った。

 サラも元勇者のシオドアに興味があるらしく、気になってそわそわしている。

 「とりあえずお茶にしますか。ランちゃん手伝って。」

 フィアとランがお茶の準備を始める。

 レフトは座って一息つこうと、ソファーの前まで来るとガタンという音とともに床が開いて4~5メートルはあろうかという落とし穴に落ちた。

 「どわぁぁぁ!」

 「レフトどん!!」

 鉄仮面で視界が狭いサラは、急にレフトがいなくなったことに驚き、あわてて駆け寄って、同じ穴に落ちた。

 落ちてきたサラを暗黒障壁を張ることによって受け止め、二人とも怪我を負うことはなかった。

 落とし穴の底が薄暗かったのと大量の埃が舞い上がったために暗黒障壁に気付かれることはなかった。

 「サァァァ~~~~ラァァァ~、なんでお前が降ってくるのか30文字以内で答えろ。」

 地獄の底から響いてくるようなレフトの声に、サラは恐怖した。

 その恐怖が実は暗黒障壁に対するものであることに気付いたのは、もっと後の事だった。

 「すまねぇだレフトどん、悪魔の呪いがまだ残ってるみたいだべ。」

 「呪いならこないだ解いたばかりじゃないか、もっとましな言い訳は無いのか。」

 「嘘じゃねぇだ、きっと別の呪いがかかってるはずだら。」

 サラがあまりにも真面目に話すので、レフトは再度念入りに呪いの有無を調べてみたが呪いが掛かっているいる様子は全くない。

 疑問に思ったレフトの頭にある一つの可能性が横ぎった。

 「サラ、お前のは呪いじゃなくて、ただ単にドジっ娘なだけなんじゃないか?」

 「えぇ!?」

 レフトが指摘するとサラは自分の過去の行動を振り返って当てはまることが多すぎた事に気が付き盛大に落ち込んだ。

 「ま、まあなんだ。女は少しぐらいドジだった方が、可愛げがあるってもんだ。」

 「穴があったら入りてぇだ・・・。」

 いまのサラは暗黒障壁よりも暗く重い空気をまとっている。

 「生きてますか~?」

 天の助けとはまさにこの事だろう。フィアが心配して落とし穴を覗き込んでいる。

 「大丈夫だ。だが別件でサラが戦闘不能だ、早く引き上げてくれ。」

 上から垂らされたロープにサラを括り付けて、上に合図を送る。

 ゆっくりと浮かび上がったサラはぐったりとしている。そして次の瞬間、レフトの視界から消え去り、天井をぶち破るすさまじい音が聞こえた。

 レフトは魔法で飛び上がり、状況を確認しに行った。

 「いったい何が起きた!?」

 両手を挙げた状態で天井を見上げて惚けているフィア。

 手に持ったロープは天井に空いた穴に続いている。

 「テヘっ☆力加減間違えちった。」

 「お前もドジっ娘か!」

 ティアは首を傾け、自分の頭をグーで小突いて舌べらを出した。

 「『テヘっ☆』じゃねぇよ、全く世話が焼ける・・・」

 バキバキっと音がして、天井の破片とともにサラがレフトの上に落ちてきた。

 受け止めきれずに、サラの胸で頭を押し潰されるレフト。

 板金鎧の厚さ数ミリの鉄板が天国と地獄の境界線になっていた。


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