プロローグ5
これにて、プロローグは終了!
時は3月中旬、東京のマンションの飾りっ気のない一室にある机に座った状態で電話をかけている女性がいた。
「もしもーし、阿宮斗くーん」
『固定電話じゃなくて、スマホなんだから、わざわざ名前呼ぶなよ。恥ずいわ』
「えー。もしかしたら、叔母さんが持ってるかもしれないでしょ?」
『うっせ! ところで、何の用だよ。茜? いつもはLINEチャットで済ますじゃん?』
「それがねえ……」
スマホで電話をかけている女性の名前は、皇 茜と言い、今年の1月に18歳になったばかりである。因みに、話し相手は茜のいとこだ。
「私、来年から福岡の大学に行くんだよねえ……皇 阿宮斗君の実家は私の通う大学から近いんだよ。だから、住まわせて!」
『断る! ってか、何でフルネームなんだ!』
「えー。あっくんの意地悪ー。そんな事言わずに住まわせてよお」
『んな事言ったって、俺の母さんは、来月には長期間、海外での仕事で家には俺1人だけになるんだぞ! 7月末頃に一度戻ってくるとは聞いたが、その間、男女で2人暮らしする事になるんだぞ! 嫌だよ、そんなの』
「実はね、私の両親だけでなく、叔母さんにも許可は既に取ってるんだよねえ……だから、お願い!」
『ってか、そもそも、何で福岡に来るんだよ? 東京の大学に行けば良いじゃんよ』
「だって、福岡って、有名芸能人を多く輩出してるって聞くし、美形男子も多いって聞いてるよ。と言う事は、可愛い系男子も居たって不思議じゃないでしょ? 東京も美形の人が多いけども、可愛い系男子は見た事無いからね」
『何、その不純な理由……まあ良いや。大変な問題にさえならなきゃ何とかなんだろ』
「え? 許可してくれるの!」
『一時的にだ! なんか問題起こしたら、追い出すからな』
「私、問題児じゃないんだけど!」
『念の為だってば……茜は何しでかすか分からんからな』
「酷い! か弱い女の子に、そんな事を言うなんて」
『事実じゃん、小さい頃とはいえな』
「私もう、18歳よ。子どもじゃないんだからね」
『ふーん』
「なっ、何よ?」
『まあ良いや。で、いつ来るんだよ?』
「明後日か明々後日ぐらいに来るよ。楽しみに待っててねー」
『あーはいはい。分かったから……んでさ、俺、今、外におるけん、早よ電話を切らせてくれ』
「んじゃねー」
茜は、電話を切ると机から立ち上がって、背伸びをした。
「よーし、それじゃあ、残りの荷物もバッグに入れなきゃ」
そう言い、茜は支度を始めたのであった。
登場人物の名前の読み方
皇 茜
皇 阿宮斗