雅は精霊
「なぁ、時計塔の下に着いたけど街無いぞ」
てっきりあるものだと思って来たから寂しいな…まぁ、吸血鬼の街フラグが回収されなくてよかったけど。
「無いね…雅ちゃんどこにいるんだろう」
「ここにいるよ?2人とも来てくれたんだね」
「雅!…お前服は?それに透けてないか?」
雅が時計塔の裏からでてきた。雅の裸をまた見てしまった…後ろの風景も見えたけど。
「ドラゴンに殺されてしまってね。肉体を失って人型の精霊に戻っちゃったんだ。」
「そ、そうなのか……半透明でも見えてはいけない部分が見えてるぞ?隠した方がいいんじゃないか?あ、いや、別に隠さなくてもいいんだけど!」
「光輝君、最後に本音がでてるよ」
「東堂君、今はそういうのやめよう?シリアスモードだよ?」
しょうがないだろ!男の子なんだから!
「ご、ごめんなさい…じゃあそんなものより雅が殺されたって話を詳しくお願いします」
「そうか、光輝君にとって僕の裸はそんなものなんだね」
「東堂君、男の子としてそれはそれでどうかと思うよ?」
めんどくせぇ!女の子めんどくせぇ!
「…雅、服を着ないのか?」
ほら、これで文句ないだろ!少し惜しいけど服を着ろ!
「僕は服の予備を持ってないんだ。だから着れる服がないよ」
「今までの会話はなんだったんだ!」
全部無駄だったんじゃねぇか!最初に言えよ!…あれ?つまり雅の裸を見放題?
「雅ちゃん、私の服貸すから着て?東堂君が鼻血出しちゃう」
「誰が鼻血出すか!…あ、出てきた…」
チクショウ!素直過ぎるよ俺の体!
「桐奈ちゃん、君の服を僕が借りたら桐奈ちゃんは何を着るんだい?」
確かに。桐奈はワイシャツにスカートというかなり薄手の格好だ。…まぁ、男の目線としてはグッジョブな格好だな。
「あ…東堂君、上半身裸でも平気だよね?ワイシャツ貸して?」
まぁ、こうなるよな。
「いいけど俺より雅の方が背高いしピチピチになっちゃうんじゃないか?」
「私が貸してもそうなるよ、だから大丈夫」
大丈夫かどうか判断するのは雅では…?
「僕は問題ないよ。光輝君がいやらしい目で見ないなら」
「み、見ねぇよ!?」
「じゃあ光輝君、ワイシャツを貸してくれるかい?」
「わかった。」
…こいつら後ろ向くとかしないのか?というかむしろこっちをガン見してる気がする。俺が後ろ向けと言うことか?…見られても問題無いし脱ぐか。
「あれ?光輝君、背中にあるその黒い翼の絵、吸血鬼になったのかい?」
背中?
「吸血鬼に襲われたよ。でも背中に何かついてるなんて知らないぞ?」
「東堂君…肩甲骨の内側に2個、翼の絵が描いてあるよ。タトゥーみたいに」
タトゥーなんて入れたことないな
「雅、その絵に意味はあるのか?」
「翼を生やせるよ。ただし飛べるとは限らないけど」
「え?つまり飛べない翼が生えるってこと?」
いらなくね?
「精霊が精霊光で精霊であることを示すように翼で吸血鬼であることを示せるよ」
「つまり吸血鬼だっていう身分証明に使えるってことか」
「そういうことだよ」
なるほど…つまり実用性の無い身分証明用の物ってことか
「雅ちゃん、私にもある?」
「見てみないと分からないよ」
桐奈も吸血鬼になってるのか調べるのか
「東堂くん、なんで私をそんなにじっと見つめてるのかな?今から脱ぐんだけど?」
「光輝君、君は最低だね。こういうときはそっと後ろを向くべきだよ」
この2人俺に対する言い方ひどくないか…?
「わかったよ、後ろ向いてる」
「ありがとう、東堂君」
「まぁ、当然だろうね」
雅こんなにひどいやつだったっけか…?
「ああ、桐奈ちゃんにもあるね。二人とも吸血鬼になってる。」
「やっぱりか…なぁ、吸血鬼になって何かデメリットとかあるのか?」
「デメリットは日光が痛いくらいだと思うよ。」
そうか…やっぱり日光に弱くなってるのか
「メリットはあるの?」
「身体能力が上がるし吸血鬼特有のスキルがあるからかなり強くなるよ」
「どのくらい上がるんだ?」
また吸血鬼に襲われても追い払えるくらい強くなってるのか?
「知らないなぁ。僕は精霊だからね、吸血鬼じゃない」
まぁ、そりゃあそうか。さすがにそこまで知っているわけないな。
「じゃあー」「おい、そこの3人。街の入り口で何をしている?」
時計塔から声が聞こえてきた。驚いて時計塔の入り口を見るとそこには、デュラハンがいた。頭を自分で抱えてる禍々しい鎧を着た禍々しい色の馬に乗った禍々しいオーラを放つ…禍々しい騎士だ。
「街に入りたいのか?」
「街なんてどこにあるんだい?」
「ん?幽霊か?…この時計塔はワープゲートだ。街に入りたいなら資格を見せろ。」
「資格?」
「ああ、資格というのは人間ではない証だ。幽霊は見ればわかるが二人は人間か?」
なるほど…人間立ち入り禁止の街なのか
「私と東堂は吸血鬼だよ」
「ほほぅ…珍しい。翼を見せてもらえるかな?」
ナイス桐奈自己紹介。で、翼どう生やすんだ?
「この二人は吸血鬼になったばかりでね、まだ翼を生やすことも出来ないんだ。」
ナイス雅。俺役立たずだな…
「ふむ、なったばかりということは黒衣の男に襲われたか?」
「襲われた。血を吸われた。」
「私も血を吸われたよ。襲った人は見えなかったけど…」
「襲われたのは二人だけか?」
「そうだけど…?」
他にも俺らみたいな人がいるのか?
「相当運がいいんだな、二人は。人間が血を吸われて生き残れるなんて1%にも満たない確率だ。それが二人とも生き残れるとは」
なに?そんなに俺たちピンチな状況だったのか!吸血鬼に血を吸われたら吸血鬼になるのって絶対のルールじゃなかったんだな…
「まぁいい。背中を見せてくれ。それでも翼があるかわかる」
「わかった」
「え…また脱ぐの…」
「ああ、女のほうは見せなくていい。男のほうで吸血鬼だとわかればいい。女の子を脱がせたくはないのでな」
!?…こいつ、紳士だ。紳士の中の紳士だ!
「紳士なデュラハンだね。光輝君とはまるで違う」
「…はい、背中に翼の絵あるだろ?」
「うむ、確認した。虚無の国へ招待しよう」
あ、この霧がかかった暗い世界は虚無の国じゃなかったのか。
「俺らをここに送ったやつはバカだな。虚無の国に送れてないぞ」
「いや、こんなに遠い所までテレポートさせれることが凄いことだよ」
そうなのか。まぁ、別にどうでもいいんだけど。