現実と夢
振り向いた瞬間言葉が出なかった
人間か?狐か?
どちらなのかわからない。
人間の体に狐の様な大きな真っ白な耳とフワフワした大きな一本の尻尾。
の、様な生き物が二人と言うか二匹と言うか
歳は同じくらいなのだろうか、大学生くらいなのか。
腕組みをして仁王立ちしている
「そこの人間。ここで何をしている、どこからきたか答えろ」
冷たく低い声が胸に響くーーー
「やめろよ兄貴、怖がってるだろ」
続いて少し鼻声かかった声がーーー
先程の石像に目をやると石像がない。
この石像は二人の事で兄弟だったのか。
目の前ではいつの間にか喧嘩が始まっている
全く状況が掴めないぞ!!!!
「こら、やめんか。真っ当もないぞ」
ーーーー・・・上から??
「「母上。」」
母上??
恐る恐る正面に振り返り上を見上げた
予想通り二人とは比べ物にならないくらいの大きな耳と大きな九本の尻尾をもつモノが屋根の上に堂々と座り、私達を見下していた
「人前で兄弟喧嘩はよせと言っただろう、どうしようもない奴だね。そこの娘、許してやってくれ。」
「・・・あ、え、はい・・」
情けない返事をした後だった
華麗にゆるりと下に降りてフワフワな九尾で私の身体全体を包み込み微笑んだ
「名はなんと言う」
「・・美佳子、です。」
「そうか美佳子か、昨夜は我が祠に願いを申し出たな?」
「祠?・・あ、」
鈴狐ーーーー
「そうだ、鈴狐の事だ。」
「スズコ、あのこれ夢ですよね?」
「「「・・・・は?」」」
兄弟まで、三人が私の顔をみて目を点にして固まる
何、この反応は・・
「お前なに馬鹿な事言ってんだよ、夢じゃねーよ笑」
「こら、そういう言い方をするな。我が子がすまないな」
夢じゃないーーーー?
「いやいやいやいや、え、うそうそ。」
「こんな現実的過ぎた夢があるかよ。」
低く冷たい声が現実的を突き刺す
もしここが祠の場所なら帰路を辿れば帰れるはず
その前に夢じゃないってどういうこと?
「あ!こら!美佳子待ちなさい!」
現実から逃げる様に気付けば私は走り出していた
三人の呼び止める声が遠ざかって行く中、無我夢中で帰路を辿ろうと走った