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決して広いとは言えない我が家の風呂ではあるが、それでも二人で入っているとはいえ、小さな子供が一人増えたところで狭さはいつもと何ら変わらない。子供の頃使っていた滑り止めのマットを見つけたので、床に敷いてフィアをそこに座らせ、僕はバスタブの中に溜まった湯の温度を確認する。そうして調度いい温度であるとわかると、フィアを抱き上げてバスタブの中に入れる。
シャワーで頭を流し、シャンプーを一押し手に取って頭を洗ってやると、フィアは気持ちよさそうな表情を見せた。再びシャワーで頭をすすぎ、タオルと石鹸を用意すると
「自分で洗う」
というので、石鹸を泡立てたタオルをフィアに渡す。フィアはごしごしと腕や足、身体の隅々まで洗うと、石鹸を流そうと蛇口を捻る。しかしシャワーの位置を忘れていたのだろうか──思いきり頭からお湯をかぶり、それを予期していなかった彼女は肩を跳ねさせて咳き込んだ。僕は慌ててシャワーを掴んでお湯を逸らすも、フィアはへたりこんでけほけほと苦しそうにしている。
「大丈夫?」
そう訊くと、フィアは目尻や鼻先を赤くしながら顔を上げる。目元を濡らしているそれは湯なのか、それとも涙なのか。
フィアを端へ移動させ、僕は空いたスペースに入って自分の頭をを洗い始める。フィアには石鹸とタオルを渡し、泡立てておいて欲しいとお願いしてある。フィアは小さく首肯し、ごしごしと一生懸命石鹸を泡立てていた。
洗い終わった頭を流してフィアの姿を確認すると、彼女は未だにタオルと石鹸を擦り合わせていた。礼を言って彼女からそれらを受け取ると、石鹸は先程よりふた周りほども小さくなってしまっていた。よほど夢中になって泡立てたのだろう。素早く身体を洗い、さっと身体を流してフィアをバスタブから出してやる。タオルで優しく頭と身体を拭いてから、下着とパジャマを着せ、僕も身体を拭いて身支度を整えると、そのまま二人でリビングへ向かった。
冷たいミルクをグラスに注いでフィアに手渡すと、小さな両手でそれを受け取り、美味しそうに飲んだ。戸棚からココアパウダーを取り出して彼女のグラスに振りかけてやると、茶色の粉塵が白の液体に溶け込んで褐色に染まる。不思議そうに僕の行為を見つめているので飲むように促すと、フィアは恐る恐るといったふうにグラスに口をつける。そして気に入ってくれたのか、顔をほころばせてそれを飲み干した。そうして二人でベランダに向かい、風に吹かれながら夜空を眺めた。身体を冷やしすぎてはいけないと、僕は彼女に小さな毛布を掛けさせる。フィアは肩からかけた毛布をぎゅっと握りながら、瞬く星ぼしを見上げていた。
明日には、きっとこの子は両親と再会できるだろう。彼女は今後、ここで過ごした一日を覚えていてくれるだろうか。もう会うこともないであろう傍らの少女を見つめながら、僕はふと考えていた。
久々の続きです。とゆーか更新できなくてスミマセン…。
テストも終わり(二重の意味で)、あとはなつやすみ!!!遊べない!勉強!!HAHAHAHAHAHAHAHA!
はぁ…