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CamelliA  作者: 御城 碧
Beginning
6/15

1-6

署の中で僕が幾枚かの書類に記入している間、フィアは僕の隣で大人しく座っていた。足を揺らして退屈そうに待つ姿が可愛らしく、彼女が心も身体も少女である事を僕に実感させた。それは今更であるのだが。

書類全てに記入を終えて警官に提出すると、警官はそれを受け取る代わりにフィアと僕に飴玉をくれた。僕にはいらないと言ったのだが、

「この子の保護をお願いするのです、こんなものしか渡せなくて申し訳ないが──」

フィアの頭を撫でながらそういうので、僕は礼を言ってその飴玉を受け取った。


署を出てからの帰り道は、2人で飴玉を舐めながら帰った。フィアは飴玉の袋を開けようとして力んでいたのだが、どうしても袋から飛んでいく飴玉の姿が目に浮かび、フィアから飴玉の袋を受け取り彼女の口にヒョイと飴玉を放ってあげると、フィアはコロコロと口の中で飴玉を転がし始めた。僕も自分の飴玉を舐めながらフィアの手を引き、2人で足並みを揃えて僕の家へ歩いた。


家に着くと、僕はフィアとの生活について考え始める。つい引き受けてしまったものの、彼女に関する問題はいろいろあった。先んじて問題となったのは、彼女の衣類だった。買いに行こうかと席を立ったその時、昔妹が着ていた服が保管されているのではないかと思い立つ。今はあまり使われていない隅の部屋に入り、クローゼットの中を探すと、やはり昔の妹の衣類が捨てられずに残っていた。僕はそれらを取り出して、僕の使用している棚の使っていない引き出しへ仕舞い込む。その他に靴や食器等必要な物も、妹が以前使っていた物で補う事ができた。支度を終わらせてリビングに戻ると、フィアは退屈そうに椅子に座っていた。窓から夕陽が差し込み、彼女を照らしている。白い衣服が橙色に染まり、彼女の存在をその空間に置いて際立たせていた。そしてその時、僕の中にはフィアと出会った時と同じような、不思議な感情が生まれていた。まるでこの世の物ではないような、そんな光景を見ている気がしたのである。


と、リビングに入ってきた僕に気づいたフィアはこちらに近づいてくる。その歩き方に僕は違和感を覚えた。彼女は僕の前に来るなり、何を話すわけではなく、ただ身体の下で手を合わせてもじもじとするだけであった。


事態を察した僕は、手招きしてトイレへ案内した。その時には既に、あの不思議な感情は僕の中から消え失せていた。

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