スサノヲ、大進撃
3.
文通が始まってから、一週間が過ぎた。
こころはわくわくしながら郵便受けを開け、新聞と共に手紙を取り出した。裏返すと、差出人の名前がきちんと書いてある。スサノヲ。
「スサノヲさん」
朝食を片付けた後のテーブルに手紙を広げ、読んだ。
拝啓 (はいけい) 源こころ様 (さま)
お元気 (げんき)ですか。俺 (おれ)はオールグリーンです。
昨日 (きのう)のお返事 (おへんじ)に同封 (どうふう)してくれたクジラの絵 (え)、大事 (だいじ)にします。
スキャンして画像化( がぞうか)したファイルを一万個 (いちまんこ)単位 (たんい)でバックアップを作ります (つくります)。
そのデータを元 (もと)にして複製 (ふくせい)し、オリジナルを厳重 (げんじゅう)に保管 (ほかん)します。
たとえ地球 (ちきゅう)が破壊 (はかい)されても、こころちゃんの絵 (え)は守 (まも)り抜 (ぬ)きます。
それが俺 (おれ)の愛 (あい)だからです。
こころちゃんの絵 (え)の素晴らしさ (すばらしさ)について、百万文字 (ひゃくまんもじ)ほど語り尽くしたい (かたりつくしたい)ところですが、便箋 (びんせん)が狭い (せまい)のでこの辺 (へん)にしておきます。
敬具 (けいぐ) 追伸 (ついしん) 切手 (きって)は舐めて (なめて貼る (はる)ものです。
「クジラさんの絵、そんなに大したものじゃないんだけどな」
スサノヲの喜びように気後れしつつも、こころは返事を書いた。
はいけい (で、いいんだよね?) スサノヲさま
こんにちは。私はげんきです。
クジラさんのえ、きにいってもらえてうれしいです。
むずかしい字をよみやすくしてくれて、ありがとうございます。
でも、なにをいっているのかはわかりません。ちっとも。
だけど、ぶんつうはたのしいので、またお手がみをかきます。
けいぐ PS.やっと、スサノヲさんがこわくなくなりました。
という文をノートにしたためたこころは、そのページを破って折り畳み、淡いピンク色の封筒に入れて封をした。
切手は舐めるべきだとスサノヲに強調されたのは五度目だが、食べ物でもないものを舐めるのは抵抗があったので、水で濡らして貼った。そして、散歩がてらポストに向かった。
衛星軌道上、アマツカミ級無尽戦艦スサノヲのブリッジ。
「こころちゃんの生活排水を冷却水にしたい」
とてつもなく真剣な声色で、スサノヲはえげつないことを言った。
「は? 再利用すら不可能な高レベル汚染水だぞ、あれ」
いづむが思わず聞き返すと、スサノヲは力説する。
「そして、こころちゃんの体内から生み出された物質をフィルターで受け止めて未来永劫保存しておきたい。むしろ後世に伝えたい、俺の天使の素晴らしさを。だが、こころちゃんの魅力を理解しつくしているのは俺だけでいいという、オスの独占欲が邪魔をする! なんというジレンマ!」
「感じるなよそんなもん」
「で、だ」
スサノヲは艦内作業用ロボットアームを動かし、マニュピレーターで丁重に掴んでいる四角い密閉容器に入れたこころからの手紙を高々と掲げた。
「成分分析の結果、こころちゃんは切手を舐めてくれなかったことが判明した。なぜだ、人類は切手を舐めて封筒に貼るという習性があるのではなかったのか!? これでは、こころちゃんの唾液をぺろぺろ出来ない!」
「するなよ。てか、そんな発想に至るなよ」
「いづむは好きな女の子の唾液をぺろぺろしたくないのか? したいだろ、しなきゃならないという使命感にすら駆られるだろう!」
「しねーよ」
ロボットアームを振り回して力説するスサノヲを一蹴し、いづむは第三次作戦を記した書類を読んだ。そのタイトルを読んだ途端にやる気が失せたが、働かなければ生き残れない、と割り切った。
第三次作戦の名は、〈ランデブーであいらぶゆー!〉だった。
こころの元に届いた朝刊に星占いコーナーがあった。
「今までこんなのなかったよね?」
こころは不思議がったのは無理もない。こころが毎朝読んでいる新聞は国連宇宙軍が作ったもので、こころの精神に余計な刺激を与えないために過激な記事が排除されているので、外界で流通している新聞とは内容が全く違う。なので、こころはハレー彗星が来ることも未だに知らない。そして、星占いコーナーを唐突に作ったのはスサノヲである。
星占いは十二星座に分かれていて、誕生日で占うのだが、肝心の誕生日がいつなのかが思い出せなかった。
「ええと、私の誕生日っていつだっけ」
考えてみたら、気にしたことがなかった。
「ギル爺ちゃんも、お祝いしてくれたことがなかったような……」
んんー、と首をひねるが、それらしい記憶が出てこない。
「思い出せないなぁ」
けれど、占いが気になる。一度気になってしまうと、そればかりが頭にこびりついてしまい、こころは家事もそこそこに家中を探し回った。どこかに自分の誕生日を記したものがあるかもしれない、と思ったからだ。だが。それらしいものは見つからなかった。
一方、その頃。
こころの家から少し離れた物陰に、スサノヲの意識を宿した人型ロボットが身を潜めていた。こころに挨拶した途端に爆発したものと同型機である。
「なぜだ」
草むらに潜り込んで体育座りをしているスサノヲは、打ちひしがれていた。
「なぜ、こころちゃんは家から出てこないんだ……。星占いにはバッチリ書いてあっただろう、《今日はステキな出会いがある予感! オシャレをして出かけてみて☆ ラッキーアイテムはミニスカートだよ☆》と。こころちゃんの製造年月日が当てはまる星座に書いたのに、どうしてその通りに行動してくれないんだ。女の子は占いが大好きだという情報は嘘だったのか、それとも俺のリサーチ不足なのか? だが、俺の作戦は完璧なんだ、こころちゃんと出会う準備は整えているんだ、曲がり角でぶつかった後に手を差し伸べてうっかり手が触れ合うシーンのシミュレーションは五〇〇回は行ったんだ。俺の作戦に不備はない!」
だが、それから何時間待っても、こころは出てこなかった。
「もしかして体調不良か? いや、だが、こころちゃんの健康状態は安定している。摂取した食料に毒性もないし、アレルゲンも含まれていないし、こころちゃんの排泄物……じゃなくて、天使の落とし物にも病原菌は混じっていなかった。となれば、こころちゃんは俺の存在に気づいてしまったとでもいうのか? 俺と出会うのが恥ずかしいから? 照れているのか?」
自分で妄想した展開で興奮してきたスサノヲは、熱い排気を漏らす。
「照れることなどないじゃないか、俺とこころちゃんの仲だぞ? いや、でも、照れるこころちゃんもまた可愛いっ、可愛いよおおおっ!」
演算能力と予測能力が高すぎるが故に、妄想がドミノ倒しのように発展していった挙句、スサノヲの思考回路の中ではこころと結婚していた。
「ああっ、ああああああっ、こころちゃんの花嫁姿が美という言葉では足りないほど美しすぎて、俺はもう、俺は主砲を誤射しちゃいそうっ、んっ!」
すると。昼下がりの空を、一条の光が貫いた。
衛星軌道上。国連宇宙軍衛星基地、司令室。
緊急警戒警報が鳴り響き、あらゆるセンサーがフル稼働し、オペレーター達が忙しなく報告を繰り返す。
「アマツカミ級無尽戦艦スサノヲより荷電粒子砲の発射を確認! 目標、不明!」
「ヲ式人工知能からの応答はありません!」
「荷電粒子砲、尚も距離を伸ばしていきます!」
「荷電粒子砲の射程内に存在していたスペースデブリの消滅を確認!」
「月面の真東京都、火星の神大阪府、並びに各都市より入電! いずれも詳細な報告を求めています!」
オペレーター達から報告を受け、ベルガーは少し間を置いてから返した。
「訓練だったと返せ。以上だ」
「では、その辻褄合わせが私の任務になるのですね」
ベルガーの傍らに控えていた女性軍人、ココ・ロズベルグ大佐が溜め息を零した。ブロンドのロングヘアと緑の瞳に大きな胸が特徴のフィンランド人だ。
ココはアマツカミ級無尽戦艦を指揮する提督であり、スサノヲの上官である。が、当のスサノヲが好き勝手なことをするので、ココはスサノヲの尻拭いをさせられてばかりだ。
「有効射程が一七〇〇〇キロだなんて……情熱的ですわね。うふふふふふふ」
が、しかし。ココはスサノヲの尻拭いを嫌がるどころか、喜んでいる。
それもそのはず、ココは重度の機械フェチで人間の異性には全く興味がないからだ。二十一歳という恐るべき若さで大佐に昇進してスサノヲの提督に着任したのは、スサノヲ自身がココを推薦したからである。
だが、スサノヲがココを提督に抜擢した理由は、ココの発する熱量の高さでも有能さでも秀でた美貌でも抜群のスタイルでも性癖でもない。単純に、こころに名前が似ていたからである。
「いつか私にご立派な主砲をぶちこんでくださいまし、スサノヲ様ぁん」
こんなんばっかりだ、と思いはしたが、相手は上官なので口には出せず、射延いづむ技術少尉は荷電粒子砲の弾道を見つめた。
地球の重力と月の引力で、ちょっと左側に曲がっていた。
家中ひっくり返してみても、散らかっただけだった。
こころは足の踏み場もなくなったリビングに仁王立ちし、考え込んだ。誕生日が解りそうなものは一切出てこなかった。
「これじゃ、いつまでたっても占いが出来ないじゃない」
こころはむくれていたが、鏡に映る自分を見、ふと思いついた。
「体のどこかに書いてあるかも! ギル爺ちゃんも右腕に何か書いてあったし! 体はまだ調べてなかったもんね!」
ギル、もとい、ギルベルト・ベルガーの右上腕に刻まれているのは、感情量子分泌濃度の数値である。戦艦を運用する上で不可欠な量子分裂炉の炉心である高濃度感情量子発生源が、任務中に何らかの原因で機能不全に陥った場合、軍人が自らを炉心として兵器を運用しなければならないため、全ての軍人は右上腕に感情量子分泌濃度数値を明記することが義務付けられている。
「んじゃ、早速調べてみようっと」
こころはエプロンを外してから、ワンピースの背中のファスナーを下し、首の後ろにあるホックも外す。
「んー……」
鏡に背中を映してみたが、何もない。
「よく見えないなぁ」
ワンピースも脱ぎ、靴を脱ぐと、下着と靴下だけになる。膨らみかけのささやかな胸を包むのはコットンのジュニアブラで、ショーツはそれとお揃いの淡いオレンジのストライプだ。健康的な肉付きの太ももには、黒のニーハイソックスが浅く食い込んでいる。
「どこにあるのかなぁ」
ソファーの手すりに腰かけ、こころは片足を高く上げてニーハイソックスを脱ぐ。黒い布地をするすると剥がし、素足を露わにする。もう一方の足も脱ぎ、足を曲げ伸ばして眺めるが、どこにも何も書かれていない。足の裏も綺麗なものだ。
「それじゃ、こっちかなぁ?」
鏡に背を向けてショーツを下ろすと、色白で丸い尻が映るが、やはり何もない。
「だったら、こっち?」
パッドもなければホックもないジュニアブラを首までずり上げ、胸よりも肋骨が目立つ胸部を観察する。が、やはり何もない。内股を広げてみたり、舌を出してみたり、髪を掻き上げておでこも見てみたり、と思いつく限り調べてみたが、成果は上がらなかった。
「そういえば、これ、なんだっけ」
ジュニアブラの位置を戻してから、こころは胸の真ん中に埋まっている銀色の棒に触れた。直径は一センチほどで、引っ張ってみると難なく抜けるのだが、全部抜くのは怖いのですぐに胸の中に戻した。
もしも、その棒を全部引き抜いていたら、こころは棒に刻み付けられている文字に気付いただろう。
《二〇四五年三月六日施工 人造超高濃度感情量子発生源 心臓摘出済 制御棒挿入孔作製済 量子分裂炉・炉心 個体識別名称・呂号 製造元・(株)イノベーション旧東京支社》
その一部始終を見つめていたスサノヲは、前屈みになっていた。
「こっっここここっ、ここここころちゃんのつるすべ素肌ぁ……!」
ログハウスの窓はカーテンが引かれていないので、中が丸見えになっていた。こころの家の傍にも人型ロボットを配置して、こころが出てくるかどうかを監視していたのだが、それが功を奏した。
「ああ……俺の、俺だけの、俺のために天から使わされた愛の権化……」
幼さの中に見え隠れする、大人の女の片鱗。
下着を直す手つきや、髪を掻き上げた際の首の曲げ方といった、何気ない仕草から醸し出される曖昧な色気。不思議の国のアリスを思わせる空色のエプロンドレスと合わせるには、黒のニーハイソックスは大人っぽすぎるが、そのギャップが扇情的だ。
荒い吸排気を繰り返し、スサノヲは呻いた。先程不用意に主砲を発射したため、艦体の全体のエネルギーが下がっているので再び誤射することはなかったが、発射出来なければ出来ないで欲望は溜まる。
「まだだ、まだ俺は賢者タイムじゃないんだ!」
こころがなかなか家から出てこなかったのもスサノヲを焦らすために違いない、カーテンも閉めずに服を脱いだのも、スサノヲにさりげなく行為を示すためだ。などと、スサノヲは自分勝手極まりない結論を出した。
「そうだそうに違いないそれ以外に有り得るか有り得るわけがあるものかあああっ! おぅふっ」
意気込みすぎたせいか、今度はプラズマ魚雷を誤射してしまった。主砲よりも低い電圧で発射出来る、広範囲爆撃用の兵器だったからだ。
「ふへへへへへへ」
衛星軌道上に散らばった光り輝く砲弾を見上げ、スサノヲはだらしなく笑った。荷電粒子砲とプラズマ魚雷を誤射する場面をこころに見られていたら、と想像するだけで、スサノヲはまたも興奮した。その結果、人型ロボットはオーバーヒートで故障した。
翌日。
結局、誕生日がいつなのかが解らずじまいだったので、こころは新聞の星占いを読まないことにして、いつも通りの日常を過ごした。畑で野菜を収穫し、放牧地でニワトリが生んだ卵を拾い集め、ヤギの乳を搾って瓶に詰めてから、こころは帰路を辿った。
収穫物を入れたバスケットを抱えて歩いていると、背後の草むらが揺れた。
「んん?」
野ウサギかな、と振り返るが、それらしい影はなかった。
「クマじゃ、ないよね?」
異変を気にせずに前進しようとしたが、今度は進行方向の草むらが騒いだ。
「回り道しよう!」
長年住んでいる場所だから、森の構造は熟知している。こころは荷物を抱え直すと、道から外れて木々の間を駆け抜けた。しばらく走ると、例の気配は遠のいた。これで一安心、とこころはほっとして前に向くと、目の前の木が倒れた。
「わあ!?」
「待ちわびていたぞ、こころちゃん!」
軽々と木を薙ぎ倒して迫ってきたのは、あの人型ロボットだった。
「俺のことを覚えているだろ、知っているだろぉ!?」
「う、うん」
忘れられるわけがない。こころがぎこちなく頷くと、人型ロボットは狂喜する。
「ふへはははは、俺の存在がこころちゃんの脳に刻み込まれるだなんて!」
ぶるりと身震いしてから、人型ロボットはぐいっと顔を寄せてくる。
「出てくるまで待っていたのはいいけど、出てきたら出てきたで話しかけるタイミングを見失っちゃって、話しかけようとしたらオーバーヒートして動けなくなっちゃって、スペアの機体を転送するのにちょっと手間取っちゃったから、このタイミングになってしまったけど! でも!」
人型ロボットは異様にテンションが高く、電子合成音声も上擦っている。
「こころちゃんが俺を焦らした分、俺もこころちゃんを焦らしたんだからな! 俺はそれが嬉しかったんだから、こころちゃんも嬉しいよな、な、なっ!? 二度目まして! さあ、可愛い声を聴かせてくれ、その目で俺を見つめて、俺の名前を読んで、なんだったら触ってもいいんだぞ! どこにだって触ってもいいんだ、なんだったら股間のジョイントでも!」
はあはあはあはあ、と人型ロボットの高熱の排気がこころに掛かり、機械油と金属とゴムが熱する匂いが入り混じった臭気が鼻を掠める。
「ひぃっ」
短く悲鳴を上げたこころが後ずさると、人型ロボットはにじり寄ってくる。
「ここ、ここのね、下腹部の積層装甲の裏側にはね、こころちゃんの写真が貼ってあるんだよ! とびっきり可愛い寝顔! 無防備すぎて犯罪行為しない方が犯罪だよってレベルの! ほら見てよ!」
「いやあああああ!」
そんなもの見たくもない。それ以前に、いつ撮影したのだ。
こころは半泣きで逃げ出すが、人型ロボットは追いかけてくる。
「はああああん、その悲鳴は天使の吹き鳴らすラッパだよ! こころちゃんの可愛さで世界が崩壊した後に再構築されちゃうよ!」
「いみわかんないー!」
「要約すると、愛してるってことだぁああああ!」
「キモいいいいい!」
「どこでそんな言葉を覚えたんだよ、こころちゃん! だが、ゲスい言葉で罵られるのもまた最高! ゾクゾクする!」
「来ないでええええええ!」
「そうやって全力疾走すると、スカートがめくれて絶対領域がチラリズムするんだね! エロいよエロすぎてエロスの神様が嫉妬するよ!」
「ひいいいいん!」
「そうやって俺をまた焦らすんだね! いいさ、どこまでも付き合ってあげるよ、こころちゃん! あっ、もしかして、それって男女交際の始まり!? まだ手も繋いでいないのに気が早いなぁ、もちろん俺はOKだけど! 初めてのデートはどこに行こうか、こころちゃんが行きたいのであれば宇宙の果てにでも連れていってあげるよ!」
気持ち悪いことをまくしたててくる人型ロボットが怖くてどうしようもなく、こころは走り続けながら泣きそうになった。必死に我慢しようとするが、人型ロボットはこころとの甘ったるすぎて吐き気がする新婚生活の妄想を語り始めていた。
もう、我慢出来ない。
「助けてぇギル爺ちゃあーん!」
こころは涙を散らしながら、腹の底から叫んだ。
叫び終える頃に、背後で爆発音が生じた。熱く焦げ臭い爆風が押し寄せ、スカートと髪が乱れる。こころは歩調を緩め、振り返った。
「あ……」
爆発したのは人型ロボットだった。雑草が円形に薙ぎ払われていて、雑草は煤と機械油をを被って黒ずんでいて、衝撃でひしゃげた部品が木の幹や地面に突き刺さっている。
――――また、殺してしまった。
どういう理屈でそうなってしまうのかは見当もつかないが、こころが拒絶すると人型ロボットは壊れてしまう。気持ち悪くて怖くて仕方ないのだが、だからといって死んでほしいわけではない。ギル以外の相手と話したのは、この人型ロボットが初めてだからだ。
けれど、仲良くしようにも、人型ロボットの押しが強すぎて逃げてしまう。その上、最終的には爆発してしまう。こころは罪悪感を覚え、泣いた。
「また、お墓、作らなきゃ」