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漆黒の女神

作者: liza
掲載日:2011/04/07

私が以前投稿した短編小説『レラシムの再誕』、『イシュールの変貌』、『灰色の世界の中で』、『堕落した英雄』 に続く物語です。上記の小説をご覧になりたい方は、お手数ですが私のマイページからお願いします。

『我々はあなたの再誕を心待ちにしていました。あなたの再誕こそがアポピスの目的であり終着点でした。しかし、今となっては始まりに過ぎないのかも知れません。――アポピスの盟主、アダン』




―漆黒の女神―




 レラシムは再びオーランドの目の前に立っていた。彼の瞳に映る彼女は、言葉では形容できないほど美しく、彼を大きく包みこんでくれるようだった。オーランドはかつて、レラシムから底知れぬ邪悪さ、恐ろしさを感じていたが、いまでは、それらが安らぎへと変わっていた。

 そして、オーランドの考えは漆黒の女神を目の前にして確信へと変わった。彼女は自身の主となる存在であると。


「再びお目にかかれて光栄にございます、レラシム様。オーランド=ヴォルトと申します。先ほど、あなたの衛兵を切り殺してしまったことを深く謝罪致します。処罰はなんなりと……」


 彼は深く頭を下げた。

 すると、レラシムは美しく、透き通った声で言葉を発した。その声はオーランドの心に深く沁み入るようだった。


「あなたが来ることは分かっていました。顔を上げなさい、オーランド。この濃霧の中にいる限り、彼らは再び蘇るでしょう」


 オーラントは再びレラシムを見つめた。彼女もまた灰色の瞳をしていた。


「お許し頂き厚く御礼申し上げます。そして、あなたに再び会い見えて確信いたしました。私はあなたに忠誠を誓います、輝かしき女神、レラシム様。私はあなたの手となり足となりましょう」

「私もあなたを待っていました、オーランド。付いて来なさい」


 そう言うと、レラシムは城のほうに向かって歩きだした。


 オーランドがレラシムに導かれた場所は、イシュール王城、王の間であった。レラシムは中央の玉座に腰を下ろした。

 そして、そこにはかつてこの城の主だった、ラフィスの王カルロスの姿があった。


「おかえりなさいませ、レラシム様。そして、英雄、オーランド」

 

 彼もまた、灰色の瞳でそう言った。


「英雄? 英雄……だと?私はお前たちラフィス人を殺した、憎むべき敵ではないのか!」


 オーランドはカルロスに反問した。


「我々ラフィス人はレラシム様のお力で蘇っている。そして、お前もわしもレラシム様の意志のもとここにいる同志ではないか。レラシム様はお前の力をお望みでいらした。お前は今から我々の英雄となるべき男だ」


 カルロスは静かに答えた。


(そうだ、こいつもお前と同じ、レラシム様を崇拝する同志なんだ。お前がやったことは、些細なことに過ぎないのさ)


 オーランドの心の半分が彼にそう囁く。


「同志か……。礼を言わせてもらう、カルロス」


 オーランドはカルロスに対して頭を下げた。そして、玉座のほうに向きなおった。


「レラシム様、輝かしき女神よ。私に使命を、命令を」

「よろしい、オーランド。カルロスには言いましたが、イスタリアの地には私たちの存在を良く思ってない人たちがいるようです。彼らに私たちの素晴らしさを教えなければなりません。よく聞きなさい、これは聖戦です。あなたたちには軍を率いて貰います。」

「感謝至極に存じます」


 二人はレラシムに敬礼した。


「お言葉ですが、レラシム様。国の名前をラフィスから変えることを提案させて頂きます。この国はあなたのものです」


 カルロスが申し出た。


「名前……。私は長い間、このイシュールの地に封じられていました。ラフィスが建国される以前から……。そして、再びこの地に蘇ることができました。ならば、この国をイシュールとしましょう。これからあなたたちはイシュール人です」

「承りました、輝かしき主よ」

「そして、あの子たちも共に闘ってくれます」


 レラシムは玉座の間から見える広い庭園を指差した。そこには、たくさんの魔獣が鎖に繋がれていた。ヘルバウンド(地獄犬)、ケルベロス、ハウレス、ザガンなど多数の伝説の魔獣が牙を剥き出しにして、血に飢えていた。


「あの子たちは私が呼び出しました。あなたたちの命令を聞いてくれます。そして、オーランドは元ノーゼリア人で、カルロスは元ラフィス人で軍を編成しなさい。ですが、その前に……」


 レラシムは少し表情を変えた。


「……外部の人間たちがこの濃霧の中に侵入しているようです」

「そいつらは何者なのですか?我々の存在を脅かす者たちならば、私が葬り去りましょう!」


 オーランドは殺気立った。


「何物かは分かりません……。ですが、我々と似た者たちのようです」

「似た者……。ならば、私がそいつらをここへ連れてきます」

「任せましたよ、オーランド。ただ、気を付けてください、相当な手練れのようです。……それと、もう一人……。その人はここから逃れようとしているようです。どうやら、私の濃霧の影響を受けなかったようですね……」


 レラシムは表情を曇らせた。


「それは、私に行かせて下さい」


 カルロスが申し立った。


「分かりました、カルロス。では、あの子たちも連れていきなさい」


 レラシムは庭園の魔獣たちを指差した。


「承知いたしました、美しき女神よ。イシュールに栄光を!」


 二人は王の間から出て行った。


 二人が出ていった後、レラシムは深く考えこむように、鏡を見ていた。そこには、自身の美しき顔がうつっていた。そして、額の六芒星の紋様……。


「私の力は以前とは比べものにならないくらい落ちている……。この額の紋様。あなたが印したのでしょう?ミシュカ……」


 レラシムの表情はどこか悲しげだった……。


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