最強守護神の黒猫ふく、「整えただけ……」と言い残して帰る
ユキトが王都新聞に載った三日後。
ユキトは、王都の掲示板の前で固まっていた。
「……なんだこれ」
紙が貼られている。
題名。
『守護神ふく様に関する苦情・ご意見まとめ』
「誰だ作ったの」
恐る恐る読む。
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・城壁を修復してくださったのは感謝していますが、途中で昼寝しないでください。
・魔王軍を追い返した後、「整えただけ……」と言って帰るのは何なんですか。
・国宝級の結界を張った直後に、ちゅーるを要求しないでください。
・守護神様が会議中ずっと香箱座りしていて話が入ってきません。
・威厳があるのかないのかわかりません。
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「最後ひどくない?」
『事実だから仕方ない』
足元から声がした。
ふくである。
いつものようにやる気のない顔で座っていた。
「いや、お前、“整えただけ……”って何だよ」
『別に』
「絶対ちょっとカッコつけたろ」
『……』
「目ぇ逸らした!?」
ふくはふいっと顔を背ける。
『あの場の空気がそうだった』
「空気で喋るな」
その時だった。
ドガァァァァン!!
王都の外から爆音が響く。
兵士が叫びながら走ってくる。
「大変です!! 古代魔獣が!!」
「今度は何!?」
『騒がしい』
ふくは欠伸をした。
『行くか』
「軽っ」
◇
王都の外。
山のような巨大魔獣が暴れていた。
「終わりだ……」
「勝てるわけが……」
兵士たちが震える。
そこへ。
てちてちてち。
黒猫が歩いてきた。
「……猫?」
『下がっておれ』
次の瞬間。
空気が変わる。
黒い神威が夜空を覆い、
巨大魔獣が硬直した。
『……ふむ』
ふくが猫パンチした。
それだけ。
それだけで。
山ほどあった魔獣が、
音もなく消滅した。
静寂。
誰も動けない。
風だけが吹く。
そして、ふくは一言。
『整えただけ……』
「言ったぁぁぁ!!」
ユキトのツッコミが山に響いた。
『決まったと思ったのだが』
「なんで急に厨二病みたいになるんだよ!」
『……難しい』
ふくは少しだけしょんぼりした。
その姿を見て。
兵士の一人が、ぼそっと呟く。
「……かわいい」
『うむ』
「褒められ待ちだったの!?」
世界最強の守護神は、
ちょっとだけ得意そうに尻尾を揺らした。




