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【白い結婚 -王女ですが婚約者に他に愛する女性がいると言われました-】  作者: ナロー
第1章 白い結婚

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8 【第1章 白い結婚】 【完】


 トラルセン王国領内、郊外の丘陵地帯の屋敷にて。応接間にアンナとエリス、そして訪問してきたエドワードがいた。

 来客ソファに座るエドワードが、対面に腰を下ろしているアンナに話し始める。


「先日、エイバー王国でベアトリスの処刑が執行されました」

「……そうですか……」

「アンナ様は見に行かれなかったそうですが、それで正解でした。ベアトリスは最期まで往生際が悪く、自身を女王と自称し、自分を死なせたことを後悔しろなどと民衆に言っていました」

「…………」

「あれは、まさしく悪女と呼ぶに相応しい者でしょう。アンナ様の件では死の偽装で誤魔化せましたが、アンナ様以外にも何人もの人物を事故や病死に見せかけて暗殺していたようですから」

「…………」


 アンナは黙り込んだままエドワードの話を聞いていた。そんな彼女の心中を察するようにエドワードが言う。


「だから、アンナ様が気に病む必要は一切ありません。アンナ様が実は生きているから、アンナ様の暗殺は未遂だから処刑するのはやりすぎではと、心配する必要はないのです」

「……貴方は何でもお見通しなんですね」

「観察と情報収集によって、推測と予測をしているに過ぎません。私は全知全能の神ではありませんから」

「…………」


 話題を変えるようにアンナが言う。


「……それにしても、よくベアトリスさんを拘束出来ましたよね。彼女は魔法の心得があったと思いますが」

「魔力と魔法を制限する魔法具を使用しました。トラルセン王立警察でも採用されている手錠型の拘束魔法具です。無論、万が一の事態が起きないように監視も怠りませんでしたが」

「……エドワードさんも武術と魔法の心得があるから、ベアトリスさんが逃げようとしても、すぐに捕まえられた……ということですよね」

「無論です。またベアトリスに逮捕の旨を告げた時も、既にあの社交パーティー会場は私の仲間が取り囲んでいました。ベアトリスが逃げられる可能性はゼロでした」


 揺るぎない自信と確信を持ってエドワードは言う。元より逃がすつもりはなかったし、最悪あの場で命を奪うことも考慮した上で、ベアトリスに相対したのだから。

 エドワードが言う。


「とにもかくにも、これでアンナ様の、ベアトリスやエイバー王国との因縁は断ち切られたことになります。外出時の変装や偽名などは必要になりますが、アンナ様はエイバー王国の王太子妃ではなく、トラルセン王国の一女性として生きていくことになります」

「…………」

「無論、表向きには死亡したことになっていますので、全てが自由というわけにはいきませんが。申し訳ありませんが、それに関してはご不便をおかけしますが我慢をお願い致します」

「分かっています。こうしなければ、私はエイバー王宮に残ることになって、不埒を働いた前王太子の妃として、あることないこと言われていたでしょうから」


 イワンが王太子だったときからいろいろうわさされていたのだ。もしエイバー王宮に残り続ければ、果たしてどのような仕打ちや待遇を受けることになったか分からなかった。


「ありがとうございます。エドワードさん。それと、エリスや、私を助けてくれたみんなにも。本当に感謝しています」


 アンナはエドワードと、自分のそばに控えているエリスに振り返って言う。他の使用人達はそれぞれ別の場所で仕事をしていたが、機会があれば感謝を伝えておこうとアンナは思った。

 エリスが真面目な顔で答える。


「礼には及びません。私はアンナ様の味方ですから、助けるのは当然です。他の者達も、同じ気持ちです」


 エドワードも立ち上がりながら。


「彼女の言う通りです、礼には及びません。それでは、私はこれで失礼致します。アンナ様、貴女のこれからに希望の未来があらんことを」


 そう告げて、エドワードはドアから廊下へと出ていく。その後ろ姿を、アンナはじっと見つめていた。

 こうして、アンナの白い結婚生活と、それに関わる事柄は終わりを告げた。アンナは晴れて自由の身となり、そしてこれからは好きに生きていくことができるようになったのだった。



【第1章 白い結婚】

【完】



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