4 エドワード
エドワードと名乗った男は礼儀正しく続ける。
「実は大事なお話があって参りました。邪魔が入らないように向こうのお部屋ででも」
「話……?」
イワンが訝しげに眉をひそめたが、ベアトリスは余裕のある顔で答えた。
「構いません、ここで話してください。皆さんに失礼をして離席する手間を取るくらいなら、いまここでお話とやらを聞きましょう」
……どうせ大したことはないのでしょう……。とベアトリスは思った。王子であるイワンやこの国の公爵家である自分には、かねてより多くの者が言い寄ってきていたのだ。どうせこのエドワードという男もその一人なのだと内心で嘲笑していた。
そしてこのエドワードが自分達に取り入ろうと様々な甘言を弄してきたところを、ばっさりと断って笑い物にしてやろうという魂胆だった。他の者への見せしめという意味も含んでおり、これでもう鬱陶しく言い寄ってくる者も減るだろうと考えていた。
そんな思惑をベアトリスがするなか、エドワードが口を開いて言った。
「ならばお話致しましょう。ベアトリス妃殿下、貴女をアンナ妃殿下殺害の容疑で逮捕及び連行しに来ました」
「「ッ⁉」」
ベアトリスとイワン、のみならず周囲で話を聞いていた取り巻き達が驚愕に満ちた表情を浮かべた。彼らには構わずにエドワードが続けていく。
「私、エドワード=アルファロはトラルセン王家直属の探偵であり、王立警察と同様の権限を持たされています。ベアトリス=エイバー、貴女がアンナ妃殿下を殺害したという証拠は既に揃えています。ご同行願えますね?」
「な、何を馬鹿なことを⁉ 貴方、ワタクシにそんなこと言って、後でどうなるか分かっているのでしょうね⁉」
「逮捕した貴女から自白を聞く。分かりきったことです」
「ッ!」
ベアトリスの顔が怒りで紅潮していく。隣でうろたえているイワンがおろおろとしたように口を開いた。
「べ、べティ、どういうことだい? こいつが言っていることは嘘だよね?」
「おろおろしてみっともない姿を晒さないでください! ただでさえ貴方は権力しか取り柄がない能天気な馬鹿王子なんですから!」
「ッ⁉」
「そもそもこんな得体の知れない奴の言うことに惑わされるんじゃありません! あの邪魔なクソ女を巧妙に毒殺したなどと、はなから嘘に決まっているでしょう!」
「……………………え?」
イワンを含めて、その場にいたベアトリスの取り巻き達が呆気に取られた。時間が凍りついたように、沈黙と静寂が場を支配する。
ベアトリス自身も気が付いて、
「…………あ」
声を漏らしたときには、全てが遅すぎた。
エドワードが自分の胸元に右手を置いて、言う。
「もはや言うまでもないことかもしれませんが、とりあえず言っておきましょうか。ベアトリス=エイバー、何故、貴女はアンナ妃殿下が毒殺されたと知っているのですか? 私は毒で殺されたとは一言も言ってはいませんよ?」
「…………ッ」
言い逃れできないことを悟ったベアトリスが、顔色を真っ青に染めて膝から床に崩れ落ちていった。
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