3 魔王
(ジルの言葉は正しい。だがしかし……)
ヴィルヘルムはどうしても気になってしまうのだ。それほどまでにベアトリスの最期は壮絶で、忘れたくても忘れられないような印象を与えていた。
(…………。やはり、俺の気にしすぎなのか……?)
深刻な表情を崩せないでいるヴィルヘルムに、エドワードが口を開いた。
「魔法を与えている存在に確かめることが出来れば良いのですが……。彼らは私達人間とはあまり関わりを持とうとはしませんからね」
「……魔王、か……」
「はい。それぞれの系統や属性、種類を司る、人知を超えた存在。彼らに直接聞けるのであれば、ベアトリスの最期の言葉が呪文かどうか……万が一呪文だった場合、その契約先を知ることが出来るのですが」
魔法は、魔法を貸し与えている『存在』と契約することで行使可能となる。炎魔法であればその『存在』と、水魔法であればその『存在』と。
彼らのなかには、自身を魔王と自称する者がいた。その自称がいつしか契約者に伝わり、一般の人々にも広まっていった。
契約者に魔法を貸し与える圧倒的力と存在感……魔王という呼称は、絶対的な畏怖を人々に与えているのである。
「…………」
少しの間黙考したあと、ヴィルヘルムはエドワードに次の指示を出した。
「エドワード。どうにかして魔王の誰か、もしくはその関係者とコンタクト出来る方法を探し出してくれないか?」
「「っ⁉」」
エドワードとジルが目を見開いて驚愕する。ジルが動揺して尋ねた。
「本気ですか殿下⁉」
「珍しいな、お前が動揺するなんて」
「魔王やその関係者と接触したいと言われれば誰だって動揺します!」
「確かにそうかもな」
エドワードもヴィルヘルムに尋ねた。
「そこまでして確かめたいことなのですか? ベアトリスの死に際の言葉を?」
「……気にしすぎだと思うか? やはり」
「……無礼を承知で申し上げますと、殿下は心配性だと思われます。ベアトリスはあの時、魔力が使えませんでした。そのような状態では呪文の詠唱など不可能です」
「……そうだな」
ヴィルヘルムは首肯して押し黙る。その彼をジルとエドワードは少しの間見つめ……それからエドワードが恭しく答えた。
「しかし他ならぬ殿下の頼みです。どこまで出来るかは分かりませんが、可能な限り努力致します」
「やってくれるか」
「吉報をお届け出来るかは約束致しかねますが……魔王及びその関係者と接触するのは非常に困難ですので」
「ああ、分かっている。出来る限りでいい」
「かしこまりました。それでは私は失礼します」
エドワードが一礼して執務室を去っていく。ヴィルヘルムとジルはその背を見送っていた。
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