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【白い結婚 -王女ですが婚約者に他に愛する女性がいると言われました-】  作者: ナロー
第3章 

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1 ヴィルヘルム=トラルセン


 トラルセン王国領内、その中心部、トラルセン王都の王宮にて。

 アンナの実兄にあたりトラルセン王家長男の第一王子、ヴィルヘルム=トラルセンは執務机の前に座って山積している書類仕事を片付けていた。


 室内には彼だけではなく側近のジルがおり、ヴィルヘルムのサインした書類をまとめて別の部屋に運んだり、書類仕事に必要な各種の道具や事項および資料の用意などをしていた。

 無論、ジルの仕事のなかにはヴィルヘルムがサボったり逃げ出したりしないようにという監視の意味も少なからず含まれてはいたが。


 そんな二人が忙しなく仕事をしているとき、執務室のドアをノックする音が響いた。机に落とすようにしていた顔を上げて、ヴィルヘルムが応じる。


「誰だ?」

「エドワードです。頼まれていた仕事の報告に参りました」

「入れ」


 ドアが開いて、一人の男が室内に足を踏み入れる。

 エドワード=アルファロ。由緒あるアルファロ公爵家の令息にして、トラルセン王家の探偵業務を引き受けている男。

 ヴィルヘルムの実妹であるアンナ=トラルセンの元夫とその側室を密かに調査し、側室……ベアトリス=バルトリスの陰謀を暴いた人物だった。


「調査内容はどうだった?」


 世間話は一切せずに、単刀直入にヴィルヘルムは切り出した。世間話をしては時間が無駄に長くなるだけであり、それはすなわち仕事時間が長くなることにつながるからである。

 背筋をまっすぐ伸ばして、エドワードが答える。


「まず第一の調査報告ですが、アンナ様……アンナ=トラルセンの職場、及びその周囲に不審な人物は見受けられませんでした。油断は禁物ですが、とりあえずのところアンナ様に直接的な危害が及ぶ危険性は低いでしょう」

「そうか」


 ヴィルヘルムは内心でほっと安堵する。可愛い妹が働きたいと言っているのを聞いたときは天地がひっくり返るほどびっくりしたが、とりあえずは大丈夫そうで安心した。

 しかしそばに控えて聞いていたジルは、真面目な顔を崩さずに口を開いた。


「エドワード=アルファロ。しかし別の急報によると、アンナ様の店舗が万引き被害に遭い、その犯人を突き止めようとしたアンナ様も危うい目に遭ったと聞きましたが? その万引き犯は近辺の店舗でも同様の犯行を繰り返していたそうじゃないですか?」

「……それに関しては申し訳ありません。私の調査不足でした」


 エドワードが頭を下げる。頭を下げながら続けて言葉を述べる。


「言い訳をお許しになっていただけるならば。私が調べていたのはアンナ様の職場と人間関係であり、あの万引き犯はそれまでアンナ様の周囲には近付いていなかったものですから」

「だから見落としてしまったと?」

「誠に申し訳ありません」


 頭を下げ続けるエドワードにジルがなおもなにかを言おうとしたとき、机の前に座っていたヴィルヘルムが口を挟んだ。


「そこまでにしておけ、ジル。エドワードはよくやってくれている。もし罰を与えるというのなら、アンナが働くことを容認した私にも責任はあるだろう」

「殿下……」


 ヴィルヘルムの言葉にジルは引き下がる。次期国王にそう言われてしまっては、反論するわけにはいかないのだろう。

 ジルはもう一度エドワードのほうを見やると、下げたままの頭に最後に言った。


「頭を上げろ、エドワード=アルファロ。同じようなことが起きぬよう、以後は気を付けるように」

「はっ。寛大な処遇、誠にありがとうございます」


 エドワードが頭を上げる。真面目なままの顔の彼に、ヴィルヘルムは軽く笑いかけた。


「すまないな。ジルは堅物が過ぎるから」

「いえ。アンナ様の心身が脅かされてしまったのは確かです。私がもっと範囲を広げて調査をしていれば、未然に防げた事態でした」

「……お前も相変わらず真面目過ぎる人間だな」


 ヴィルヘルムは内心で溜め息を吐く。責任感が強すぎるだろう、と。



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