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【白い結婚 -王女ですが婚約者に他に愛する女性がいると言われました-】  作者: ナロー
第2章 アンナの自立

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15 見直し


 店長が壁に掛かっていた時計を見上げて言う。


「そろそろ開店時間だ。全員持ち場について。お客さんがやってくるよ」


 店長が拍手を二回して、店員達がそれぞれの担当場所に向かっていく。そのなかでデニーはアンナとエリスに向いて言った。


「とりあえず二人はしばらく私と一緒ね。まず厨房に行って、さっきまで使ってた調理器具を洗っていこうか」

「「はい」」


 デニーが歩き出し、二人がついていく。アンナの仕事が本格的に始まった。



 午後五時過ぎ、トラルセン王国領内の郊外の屋敷にて。仕事が終わって帰宅したアンナは自室のベッドに身体を投げ出すようにダイブしていた。


「つかれたぁー」

「お疲れ様です、アンナ様」


 ベッドのそばに立つエリスが労いの言葉をかける。彼女は衣装魔法を使ってすでに屋敷メイドの制服に着替えていた。

 アンナが顔を動かして、エリスを見て言う。


「エリスもお疲れ様ぁー、メイド服に着替えてないで休んでもいいわよぉー」

「私はアンナ様の専属メイドですので」

「……マジですか?」


 パン屋の仕事が終わったばかりだというのに、これからさらにメイドとしても働くつもりらしい。さすがのアンナも身体を起こして、心配の声をかける。


「え、大丈夫? 何時間働くつもり? ブラック労働じゃない?」

「何をいまさら。この屋敷の使用人達は常にアンナ様とトラルセン王家の為に働いていますよ」

「あ……」


 そういえばとアンナは思い至る。夜中に黒光りする虫が出て大騒ぎしてしまったときなども、じいややエリスや他の使用人達はすぐさま駆けつけてくれていた。

 いままではそれが当たり前のことだと思ってしまっていたが……いまにして思えば、それらはとても大変なことのはずだった。実際に働くことで、その大変さが身をもって分かったのである。

 アンナが自分の顔に手を当てる。あちゃーとでも言いたげな様子だった。


「ブラックはこの屋敷と私も含めた王族だったわね……」

「そこまで自虐しなくてもよろしいと思いますが」

「いいえ、これは由々しき問題よ。いままで私は貴方達に甘えてしまっていたわ、気付いたからには改善しないと」

「ご心配は無用です。以前も申し上げたかと思いますが、きちんと休息は取っていますし休暇ももらっています。アンナ様が動く程のことでは……」

「そう言って私を安心させたい気持ちは分かるけど、見直し自体は必要だと思うわ。早速みんなの様子を確認しに行かないと」

「そう仰られますが、この後はディナーですし、明日もパン屋の仕事があります」

「だから出来る限り、時間の許す限りやっていくのよ。少しずつでも、着実に」

「…………」


 ベッドから下りるアンナに、エリスは内心小さな息をつく。こう言い出した彼女にはもうなにを言っても聞かないことを知っているからだ。


「エリスはここで休んでなさい」

「いえ、私も同行致します」

「いいから休みなさい。これは命令よ」


 そう言って、エリスの返事も聞かずにアンナは廊下へと飛び出すように出ていった。アンナに休めと命令されたとはいえ、彼女を放って素直に休めるエリスではなく……アンナに気付かれないように彼女のあとをこっそりとついていって、陰から様子を伺うのだった。




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