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【白い結婚 -王女ですが婚約者に他に愛する女性がいると言われました-】  作者: ナロー
第2章 アンナの自立

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7 異空間


 ごほんと咳払いをして、じいやが二人に言う。


「とにかく、それでは異空間に参りましょう。そこでなら、どなたにも迷惑を掛けずに服を選んで着替えられますので」

「覗かないでよね、じいや」

「心配はご無用です。とにかく、足元に魔法陣を出しますので、動かないでください」

「はーい」


 返事をするアンナと、彼女のそばに寄り添うエリス。そしてアンナを中心として三人の足元に魔法陣が出現し、三人の身体を淡い光が包み込んで異空間へと転移させていった。



「ちょっと! 全部貴族が着るような服ばっかりじゃない!」


 異空間のなか、収納魔法内から取り出された替えの衣服を見ていたアンナが文句の声を上げていた。それらの衣服は異空間内の空中に列をなして浮かんでおり、まるでそこだけ小規模のクローゼットや服飾店のような様相だった。


「アンナ様は王族ですので、私達が持ち歩くものも自然と王族に見合ったものになります故」

「…………です」


 じいやが慇懃に答え、エリスも申し訳なさそうに小さくうなずく。貴族のような服から着替えた方がいいと提案したのがエリスなので、アンナの文句をもっともだと思うと同時に申し訳なく思ってしまったのだ。

 その異空間は頭上が青空のような色合いになっていて、足元や壁は大理石のような見た目になっていた。無論、本物の青空と大理石ではなく、あくまでそれらに似た外観ということだったが。

 アンナが肩を落としながら言葉を続ける。


「あーあ、これじゃあ結局服屋さんで服を見て、買った方がいいわねぇ」

「申し訳ありませんアンナ様……確認の前に気付くべきでした」

「いやいやエリスのせいじゃないから。そんな落ち込まないでいいからね」


 そう言いつつ、アンナのほうも残念そうな雰囲気を隠しきれていなかった。エリスとじいやが衣服を再び収納魔法空間にしまうなか、溜め息を吐きながらアンナが誰にともなくつぶやく。


「それにしても、ほんとに便利な魔法ねぇ……ちょっとした部屋みたいな異空間を作って、そこに転移出来るなんて。ここで生活出来そう」


 食料を外から調達して、水回りも魔法でなんとかすれば本当に人一人くらいは生活できそうなスペースがあった。衣服をしまい終えたじいやが答える。


「アンナ様、確かに生活しようと思えば可能ですが、あまりお勧めは致しません」

「どうして? 何か欠点でもあるの?」

「ここはあくまで魔法で作られた異空間。使用者の魔力が尽きれば、それと同時に消滅してしまいます。一応、現実世界に戻れるように設定しておりますが、最悪の場合、空間の狭間に放り出される危険性もございます」

「あー、なるへそ。狭間の世界をさまよって死ぬのは嫌ねぇ」

「お分かりいただけたようで何よりです」


 アンナが、んー、と腕を上に伸ばす。


「それじゃあ、またあの町に戻りましょうか。で、改めて服屋さんに行きましょ」

「かしこまりました」「はい」


 じいやが恭しく頭を下げて、エリスもうなずく。アンナが思い出したようにじいやに聞いた。


「あ、ところで一応聞いておくけど、じいやも着替えるの?」

「私は執事ですので」

「だよねぇ、じいやならそう言うと思った。でもそれだとパン屋さんの雰囲気確認は、やっぱり私とエリスだけで、じいやは外で待機になるけどいい?」

「最初からそのおつもりだったのでしょう?」

「バレてたか」


 悪戯がバレた子供のように、ぺろっと舌先を出すアンナ。じいやが続けて言う。


「元より私も外で待機するつもりでしたので」

「あら、そうだったの?」

「はい。私が店外の見張りを行い、エリスが店内でアンナ様を護衛する。その予定でした」

「……やれやれ」


 相変わらずのじいやに、アンナは肩をすくめた。そして三人は再び元の場所に戻っていくのだった。




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