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【白い結婚 -王女ですが婚約者に他に愛する女性がいると言われました-】  作者: ナロー
第2章 アンナの自立

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6 求人広告


 クルージングを終えたアンナは、船上で言っていたようにすぐに募集している仕事を探し始めた。といっても彼女の探し方は、道先の店舗などで張り出している求人広告を探すというものであったが。


「あ、ここ募集してるみたい。パン屋さんね。いざ、とつげ」

「お待ちくださいアンジェ様」


 見つけるが早いか早速店内に入ろうとするアンナをエリスが引き止める。振り返るアンナに言った。


「まず応募を申し出る前に、求人広告の内容をきちんと把握しましょう。もしかしたらアンジェ様の希望とは異なる内容かもしれませんから」

「確かにそうね、ふむふむ」


 仕事をしているという点でいえば、エリスはすでにアンナの専属メイドとして先輩にあたる。アンナは素直に彼女の言う通り、店舗の求人広告にしっかりと目を通し始めた。

 そのアンナにエリスが続けて助言していく。


「また目に付いたお店に即座に応募するのも否定はしませんが、なるべくなら複数の職場の求人を比較することをおすすめ致します。ご自身の希望により合致したものや、より良い条件のものが他にもあるかもしれませんので」

「ほうほう、さっすが先輩、経験豊富ねぇー」

「先輩はやめてください」


 そばにいたじいやも口を挟んだ。


「アンジェ様、実際に応募する前に職場の雰囲気を確認しておくことも大切でございます。万が一、険悪な職場であればアンジェ様の心身が……」

「そのときは普通にやめるわ。……ベアトリスみたいなことはもうこりごりだから」

「…………。申し訳ございませんでした。嫌な記憶を思い出させてしま」

「謝る必要はないわ。じいやは私のことを心配して言ってくれただけだから。むしろ注意すべきことがあれば、どんどん言ってちょうだい。またあんな事態を回避する為にもね」

「……かしこまりました」


 じいやが恭しく頭を下げる。エリスもうなずいていた。

 そのパン屋の求人に目を通し終えたアンナが言う。


「それじゃあ店内の様子も確認しましょうか。エリスも一緒にね」

「はい。しかし、その前にアンジェ様も私もどこかで着替えた方が良いかもしれません」

「なんで?」

「店員は案外、来店したお客様のことを覚えているものです。いまのアンジェ様と私達は、見るからに貴族のご令嬢とその使用人という出で立ちですから」

「……なるへそ、じゃあ、あっちの服屋さんで服を買って着替えましょうか」


 じいやがまたも口を挟む。


「替えの服であれば、アンジェ様の分も私達の分も収納魔法内に用意しておりますので、新しく購入せずとも大丈夫でございます」

「いや何で用意してんのよ⁉」

「万が一の事態に備えてでございます」


 様々なトラブルに対処するにあたって、着ている衣服が汚れたり破れたりしてしまった場合に備えて、常に替えの服を何着も用意しているのだった。

 しかしそんなじいやの言葉にアンナは半ば呆れてしまった。


「準備がよすぎない?」

「備えあれば憂いなしでございます故」

「備えがよすぎない?って言ってんの」


 アンナは溜め息をつく。しかし好都合なことは確かだったので、ありがたく使わせてもらうことにした。


「ま、いいわ。それじゃあ、どこか場所を探して、まずはどんな服か確認して……」


 じいやが進言する。


「それでしたら私めにお任せください。小規模ながら魔法による異空間を作ることができますので」

「…………」

「何か私の顔についておりますか?」


 アンナはまじまじとじいやの顔を見たあと、じいやを指差しながらエリスに言った。


「エリス、この人便利すぎない? 器用にも程があるでしょ」

「……一応、執事長ですので……」


 苦笑しながらエリスは答えたが、じいやが鋭い目で見ているのに気付いて慌てて口元を引き締めた。

 ……後で文句言われるかも……。そう思うエリスだった。



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