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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
石炭紀は、氷河期だ。ー巨大昆虫の謎に迫るー
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石炭紀の昆虫が大きいのって、なぜ?(1)

石炭紀に来て、2日目。

パラーからおおよそ、5時間のフライトである。

行先はおおよそ、先史時代のゴンドワナ大陸南部。

現代の地図で言えば、ボリビアの南端、タリハあたりにあたる場所だ。

かわりに――現地の人々は“凍った”を意味する、コンゲラードとよんでいるという。

「なぜわざわざ、“凍った街“って?」

「似た地名があったりして、紛らわしいからよ!」

「凍った街もまた、このゴンドワナ氷床沿いには山ほどありそうだけど」

「えぇ、そうね。でも――街っていうくらいの規模があるところは、ほかにないのよ。」

「なるほど、港があるから」

「それも大きいわ。あとね――地名と場所の対応関係が怪しいって意見があるの」

――ふむ。

「それって、アンデス山脈の隆起の関係?」

「さっすが。そう聞いたことがあるわ。結構ずれてるんじゃないかって」

「大地もまた、動いたり曲がったり、地質学スケールで見るとほんと、せわしないからね…」

すると、ばし、とひじ掛けを叩きながらアリアが乱入した。

「ほんともう!あの古地理研のやつら、現地で暮らしてる人間のことなんか、まるで想像もしてないのよ!」

「あいつら、シミュレーションで大陸の並び変えたら、そのまま現地の地名も変えさせようとするのよ。まるで、地図の正しさのためなら、人がどう暮らしてるかなんてどうでもいいって顔してさ!」

「あぁあああ、私の論文にも毎回毎回、「現在の産出地と対応付けてください」って…しかも、ファーストレビュアーとセカンドレビュアーで意見が違ったり。もうほんと、はぁ…あたしが偉くなったら、翌日からでもあいつらの住所と所属全部書き換えてやる!」

「また突っ込まれたの?それ。前来た時もおんなじこと言ってたじゃない」

「されたに決まってるじゃない!過去を相手にしてる限り、この呪いからは逃げられないのよ!

ゲート番号とグリッド座標だけで、通じるようにしてくれればいいのに!」


――あ、大変なんだろうな…と思いつつ、アリアの乱入を聞き流す。

実際、ゲート番号とグリッド座標だけのほうが再現性高いのでは…と思う。


着いた頃には、午後2時半か。

ただ――時差がだいたい1時間あるから、実質的に午後1時半。

ついてから、動く時間は十分ありそうだ。


外は、真っ白。

雲の中で、何も見えない。

飛行機の乗客もぺらぺらと喋っていて、機械でごちゃついた機内が、談笑に埋まっていた。

沈黙というものをそもそも嫌う国民性なのか、それとも祭りの余韻で浮足立っているのか。


ロングフライトだしちょっとは寝ようか、と思っていたが、全然寝付けそうにない。

そんなとき、リリィが足をぽん、とつついた。

「ケイ、石炭紀の昆虫ってでっかいじゃない?ここの前、それってなんで?って聞かれて、答えに詰まっちゃって……。」

「前にアリアが『酸素が多かったから!』って言い切ってたのは覚えてるんだけど、それってホント?」


――いい質問じゃないか。


「酸素って、みんな言うよね。でも…なぜ「困った」んだろう」


私はリリィの瞳を覗き込んだ。

そこに違和感を感じる、というのは…何かに気づいた、ということだろう。


「石炭紀の昆虫がみんな大きい、ってわけじゃないじゃない?それに、酸素濃度が高ければ高いほど――って、白亜紀も酸素濃度が高いのは、植民地人にとって常識なのよ」


「それって常識?」


「常識よ。だって高酸素対応製品の多くが白亜紀―ペルム紀―石炭紀仕様だもの。CCP規格、とか言ったりするわ!でも、巨大昆虫がいるのって石炭紀とペルム紀じゃない。白亜紀なんて聞いたことないわ。」


「白亜紀は…たしかに、大きい昆虫の印象は少ないよね。いても現代とそうかわらない」


「でしょ?だから『酸素のせい!』って言ったあとで、『じゃあ白亜紀は?』って返されると、もう詰まるのよ」


――という話をしていると、アリアが

「白亜紀の昆虫、ホント小さくて地味で!

その通り、酸素“だけ“じゃないわ。

気温、気圧、二酸化炭素の濃度、植生、地形、空気の粘性……

全部重要なのよ!

だから“酸素が多いから”って言い切るのは、ある意味、ちょっと不正確。

――“いろんな条件がそろった結果”って言い方のほうが、Better」


しかしリリィはいかんにも、納得した様子がない。


耐えかねて、私は口を開いた。


「それだと、白亜紀は石炭紀じゃないから、っていう循環論法になっちゃうんじゃないか、って思ったんだよね?」


「……うん。そうなの。“酸素のせい”って言われると、逆に“何も考えてない”ように聞こえちゃって……」


「じゃ、色々な説について、触れてみようか」


Okajima, R. (2008). The controlling factors limiting maximum body size of insects. Lethaia, 41(4), 423–430.

*ジュラ紀以降の昆虫の最大サイズは予測より低く、酸素濃度上昇にもかかわらずサイズは増加しない

珍しく造語(本作ではオリジナルの造語を極力作らないようにしている)。CCP規格なんてものはもちろん実在しない。そりゃタイムマシンも超時空ゲートも実用化されてないからね。

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