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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
対火災決戦都市―大気と戦え―
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フライトデッキの旅人たち

一歩空港に踏み入れると、やはりこれは軍艦だという印象を、より一層強くした。

内装は真っ白に統一されていて、桟橋から滑走路に向けて、ひたすら階段を上る、上る。一歩ゆくたび、低くきしむ、金属音。

スーツケースを持った観光客など、最初から全く考慮されていない造りだった。

そして、上がってからもう一度手荷物検査があった。

今度は手作業ではなく、スキャン方式だ。

もう流石に、何も指摘されなかった。

――そもそもあの桟橋での手荷物検査が、正式なものだったのか、海警隊が勝手にやっているものだったのかは、いまいちよくわからない。


目の前に、滑走路がぱっと開けた。

――もちろん、ガラス越しに、である。

滑走路を一望するフライトデッキに足を踏み入れると、すでに百人ほどの先客が、方々に向かう便の到来を待っていた。

ときおり、くぐもった声の出発案内が響き渡る。

滑走路には――双発のプロペラ旅客機が2機ほど、駐機していた。

滑走路の隅では、衝突防止灯がチカチカと光っている。

「思ったより多い。だってこの星、総人口でも5万人でしょ?」

と聞くと、

リリィは「そりゃ、軌道祭の帰りよ!」と、胸を張る。


確かに人々はどこか浮かれていて、この肌寒いのにタンクトップで、真っ赤に焼けた肌を誇示しているように見えるものもまた、多かった。

まだレースの熱気が冷めやらない人々も、また多い。

「イリノイのやつ、あの勝ち方はなかったよな」

「俺はパラー海警に賭けてたんだけどなぁ」

「おめー、一番勝ちそうな安全杯にかけても面白くもなんともないだろ、賭けってのはなぁ…。祭りなんだぜ?」

「俺にとっちゃあ勝負より賭けよ、負けたらどうにもなんねえもん」

あの熱狂からあけて、壁に寄りかかったり、靴を脱いで床に座り込むものも。子供は眠りこけて、隣に座って、やはりうとうとしている母親に、頭を預けていた。


彼らにとっては、祭りと旅の終わりである。


しかし、私たちにとっては――これが、始まりの一歩なのだ。


「次に行くのって、どんなところ?」

「私の故郷よ。一言でいえば、氷と温泉と緑の街ね!」

「あれ、行先案内だとコンゲラードってあったけど」

「あぁあれね!みんなそう呼ぶのよ。凍ってるから」

「凍った街…」


「温泉に入ってれば、あったかいわ!着いたらみんなで入りましょ?いい湯なのは、保証する!」

リリィは胸を張った。ちょっとグラマラスな胸元が、少し揺れる。


私は少し恥ずかしくなった――人に裸を見られるのは、あまり好きではないのだ。

――ちんちくりんだから。子供と間違われるならまだいいが、性別まで間違われる。


「ま、まぁ、温泉はいいよね。変な微生物もサンプリングできるし。方角としては、アンデスあたり?」

アリアが、がしっと私の肩をひっとらえて、話に乗り込んだ。


「そう、だいたいアンデスのほう!あと、人の目は心配ないわ?鉢合わせしたことなんかないもんね、リリィ?」

「えぇ、いつも独り占めよ…残念なことに。お客がいないのよね。」


「ならよかった、安心」とこぼしてしまい、何か悪いことを言ってしまったな、と反省。


「温泉だけじゃないのよ、地熱発電もあるし燃料資源も鉱産資源もある!海も豊かなのよ。工業に関してはこの星でも有数ね。分散されてるし自動化されてて、人はぜんっぜんいないけど!」


「どんな資源?」


「鉄鉱石、マンガン、鉛、亜鉛、金。あとは天然ガスってとこね!ほかにもあるはずよ」


「ボリビアっていうと、ポトシ銀山の銀は・・・?」

するとリリィはきょとんとして、


「…銀は、聞いたことないわね」

といった。


温泉、ってことはファラロンプレートの沈み込みが関係しているはず、現代でもその破片のナスカプレートが沈みこんでいるから――と話をもっていきそうになって、やめた。

*ポトシ銀山は新生代です(でも熱水活動あるしもしかしたらいけるかも????)

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